大島渚賞に輝いた小田香監督、新作『セノーテ』では神秘の泉の世界へ
ですから、そういう自分の内面に迫るような作品を今後も作る可能性はないとは言えないでしょうね。
ただ、自分の中では、自分の内面を探究することも、知らない世界へ行って、その未知の領域を知ることも、作品作りにおいてはあまり違いないといいますか。両極にはあるんですけど、断絶しているものではない。わたし自身が見たものを体感したことを作品にするという点においてはつながっていると考えています」
前作の『鉱ARAGANE』も、今回の『セノーテ』も自らカメラを廻している。撮影に関してはこんなことを常に考えているという。
「私は風景を撮っていても、人の気配を撮っていると思っています。なので、今回だったら、自然の風景でも昔は人が住んでいたとか、そう感じたところを撮っている。逆を言えば、自然の中に、人間の気配のようなものを感じないときは撮りません。
あと、なにかを説明するために(カメラを)廻すことはないです。たとえば、こういうショットが必要だから撮っておくということはない。あくまで自分の心が動いたときだけしかカメラは廻さないです」
撮影も自らこなすが、編集も自分で手掛ける。この選択もまたこういう考えからきている。