大島渚賞に輝いた小田香監督、新作『セノーテ』では神秘の泉の世界へ
そういうところはもう泉というよりは、プールみたいでしたね」
また、小田監督の目からみて、現地の人にとってどういう場所に映ったのだろう。
「ひじょうに生活に近い場所ですね。井戸として使っているところもあるし、暑い地域ですから、現地の人たちの水浴び場のようにもなっている。ですから、現地の人にとってはひとつの公共の場。実際、管理は現地の彼らがしている。洞窟ですから、場所によってはけっこう下らないと泉まで着かないのですが、その間のはしごとかは彼らが管理している。
ただ、その一方で少数ですけど何割かの人にとってはいまもまだ神聖な場所で。近寄ってはいけないと考えている人もけっこういらっしゃる。
生活に密着した場でもあるけれども、自分たちにとってルーツや文化を感じさせる場所でもあるように私の目には映りました」
このようにまだ見ぬ世界を飛び回って、そこでの発見や体験を作品にしているように映る小田監督。ただ、『セノーテ』の公開に先駆けて開催された『小田香特集』で上映された初監督作品の『ノイズが言うには』や、『あの優しさへ』では、自分自身という人間を深く見つめ、探究してもいる。
「『ノイズが言うには』に関していうと、自分という人間に対して向き合わなければいけない時期であった。