くらし情報『“痛みの記憶”を共有する、緊迫の75分 ―NODA・MAP番外公演『THE BEE』』

2021年11月12日 20:00

“痛みの記憶”を共有する、緊迫の75分 ―NODA・MAP番外公演『THE BEE』

逆上した井戸は自らも小古呂の妻と子供を人質にして立てこもる。理不尽な報復の物語が展開するなかで、紙や鉛筆などの見立て小道具が観客の想像力を激しく刺激し、息詰まる恐怖へと導いていく。初日の舞台では、見立て小道具のゴムが切れるハプニングがあったらしい。これまでの日本版を観て来た筆者もそうだが、おそらく観客のほとんどがそのことに気づかなかっただろう。たとえストーリーを知っていたとしても、幕開きから一気に熱量の高い演技に引き込まれ、“何が起こるかわからない”緊迫の空気に支配されるからである。

“痛みの記憶”を共有する、緊迫の75分 ―NODA・MAP番外公演『THE BEE』


困惑、恐怖、混乱、衝動、狂気の目覚め、暴力の快感と、感情変化のスライディングを鮮やかに見せる阿部は、圧倒的な存在感で井戸=野田と刷り込まれていた筆者のイメージを軽々と塗り替えていった。バネの利いた動きと微細に変わる表情から目が離せない。長澤は明瞭な声の響き、惚れ惚れするほど均整のとれた体躯に、あらためて優れた資質を持った俳優だと感じ入る。
さらに思い切りのいい表現が艶かしくも強く、美しい。

“痛みの記憶”を共有する、緊迫の75分 ―NODA・MAP番外公演『THE BEE』


河内のポジションは、前回の日本版上演時に野田が「一番テクニックを必要とし、難しい」と語っていたが、舞台を観ればその言葉に納得。

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