2021年9月4日 04:00
田中哲司×笹本玲奈、松田龍平×石橋静河 “格差”がもたらす恋の悲劇『近松心中物語』
愛を成就させるために途方もない金が必要となり、破滅へと追い込まれていく忠兵衛と梅川。婿として身の置きどころのなさを感じ、そんな自らの代わりに“自由”を与えるがごとく、ポンっと忠兵衛に大金を差し出す与兵衛。裕福な暮らしなどあっさりと捨てて、与兵衛について行くことに何よりの幸福を見出すお亀。
“格差社会”が叫ばれる現代の人々の心に、2組の恋はどのように響くのか? 長塚の演出、繊細で美しい美術、そしてスチャダラパーによる和楽器を巧みに取り入れた音楽にも注目してほしい。
公演は9月20(月・祝) までKAAT神奈川芸術劇場 ホールにて。ほか、福岡、愛知、兵庫、大阪、長野公演あり。
取材・撮影・文:黒豆直樹
【スタッフ・キャストコメント全文】
●長塚圭史(演出)
肉体が純粋渇望するもの。
『近松心中物語』は大阪新町の見世女郎梅川と飛脚宿の養子忠兵衛の叶わぬ恋を発端に描くドラマです。
ふたりは出会い、恋の炎が燃え上がりますが、金に行き詰まり、とうとう身分を捨て、社会の枠組みから飛び出します。
秋元さんは身分制度のあった江戸時代の社会を、味わい深い台詞で紡ぎます。見世女郎よりも更に身分の低い、河原で客を取る辻君にも今夜帰る家があること。