2023年10月17日 20:30
翻訳家の松岡和子が語る『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』の魅力
『終わりよければすべてよし』は異例ずくめのお芝居──松岡
シェイクスピア ダークコメディ交互上演『尺には尺を/終わりよければすべてよし』ビジュアル
──続いて、『終わりよければすべてよし』の見どころを語っていただけますか?
松岡実際に訳してみると、この作品は異例ずくめのお芝居でした。1つ目の異例は、女性の登場人物が劇の第一声となるセリフを話すということです。これは約40本あるシェイクスピア作品の中でも、この作品だけなのです。『マクベス』の魔女は別として。
異例その2は、ヘレナがいわゆるキャリアウーマンであるということ。医術の心得のある、手に職を持った女性もまた、シェイクスピア作品ではただ一人です。
異例その3は、ヒロインの方が恋人よりも身分が下だということ。他の作品にも身分違いの恋は登場しますが、その全てが女性の社会的な地位や身分が高く、男性が低いというもの。
この作品は逆なんです。
それから、異例その4は、女性の登場人物にたくさんの独白があることで、これも例外的です。この作品では、ヘレナだけでなく、ルシヨン伯爵夫人もダイアナも独白を与えられています。シェイクスピアが独白を与えるキャラクターは、とても特別な存在です。