“人間の本質”を描きたい。監督が語る映画『巡礼の約束』
そこは面白い部分です。しかし、私は“チベット的なもの”を並べたり、伝統的な文化と現代文化の衝突を描くことにまったく興味がありません。チベットで羊の放牧をしている人も現在は普通にスマートフォンを使っていますから(笑)」
本作の中心はあくまでも3人の心情の変化、家族の変化だ。「家族とはリレーにように引き継がれていくものだと思うのです。親の想いを子が引継ぎ、またその子が引き継ぐ。そこには絶え間のないリレーがあります。家族は基本的に愛で結ばれているものですが、時に愛があるからこそ、憎しみが生まれたり、嫉妬が生まれたり、複雑な想いが家族の中に凝縮されます。それは時に“どうしようもない姿”に見えるかもしれません。
しかし、私はこの映画でそんな人間の姿を描きたい、信仰や宗教ではなく“人間の本質”を描きたいと思いました」
家族が巡礼の旅の中で浮かぶ感情や葛藤をあますところなく描くため、監督はあえて高難易度の撮影スタイルを選択した。「いつも作品ごとに合ったスタイルに挑戦したいと思っているのですが、本作では“ワンシーンワンカット”で描くことが好ましいと考えました。それはキャストやスタッフにとっては難易度の高い手法です。