くらし情報『隙のない演技でみせる成河(私)×福士誠治(彼) ミュージカル『スリル・ミー』観劇レポート』

2021年4月17日 12:00

隙のない演技でみせる成河(私)×福士誠治(彼) ミュージカル『スリル・ミー』観劇レポート

そんな重層的なストーリーを、観終わってからもしばらく身にまとわりつくような、不穏だがメロディアスな音楽が的確にあぶり出していくのだ。

そしてもちろん、再演の度にキャストの入れ替えが行われることも大きな理由のひとつ。全く同じ動きをしているはずなのに、演者によって作品の印象が大きく異なるが故に、何度も足を運びたくなるというのが本作の定説だ。しかも、19歳の少年と初老の囚人とを衣装やメイクの変化なしに演技力ひとつで演じ分ける“私”と、サイコパス然とした冷酷な麗しさと取り乱す様の両面を見せる“彼”、どちらも難役なだけに芝居としての観応えも抜群。この日の成河と福士も、各々の歌、セリフ、仕草、表情、そしてふたりの視線や接触の応酬、どれをとっても一分の隙もない演技で、観客を作品世界へと引きずり込んでみせた。

だがやはり、どんなに面白くてキャストが魅力的でも、「あの空間にまた身を置きたい」と思わせるものがなければ、ここまでの人気舞台にはなっていないのではないだろうか。隅々まで意志がみなぎっているような重厚なセット、ピアニストを出演者のひとりとして扱いキャストと息を合わせる様子ごと見せる趣向、セットの代わりに状況説明の一助を担う一方でキャストの表情に絶妙な陰影をつける綿密な照明……。

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