あらゆる困難を鎮めるために演劇はある 『子午線の祀り』成河インタビュー【前編】
ただ、この作品には「どちらかの専門に分かれているようじゃだめ。モノローグとダイアローグを両立できるベーシックをつくりましょう」という、日本の演劇の俳優たちへの木下先生の問題提起があると思うんです。俳優には時代による流行の身体というものがついて回りますし、ほんとうに両立するには100年くらいかかるでしょうけど、なんとか格闘しているうちに、ベーシックがうっすらと提示できるのが理想かな、と思ってやっています。
――義経=モノローグ=古典のせりふ術をどのように獲得されたのでしょう。
とにかく万作先生のコピーから始めようと決めていました。楽しかったですよ。まずは過去の上演作のせりふを音源化して、ずっと聴き続けました。万作先生は言葉の音の運びが見事で、聴いているだけで、ほんとに多くのことを教えてくださいました。
ほんのひとこと発する際にも、言葉の運び、強弱、緩急、長短等がめちゃくちゃ厳密なんです。「ここは1.5秒くらい延ばし、次に紙一枚差し挟んでからちょっと下げ、すぐに上げようか」という感じで、万作先生に細かく言われてる感じ。先生の完コピなんてできるわけないんですけど、そう思えば思うほど、やっていて楽しくてしょうがない(笑)。