新国立劇場『テーバイ』開幕レポート到着 ひとつの王国が衰退していく、壮大な物語に
撮影:引地信彦
船岩祐太が構成、上演台本、演出を務め、3本のギリシャ悲劇をひとつの作品に再構成した『テーバイ』が新国立劇場にて11月7日(木)に幕を開けた。
新国立劇場が小川絵梨子芸術監督の就任以降、積極的に進めてきた新たな試みであり、1年間という期間の中で、参加者が話し合いや試演を重ねて作品理解を深めながら、より豊かな作品づくりをおこなっていく「こつこつプロジェクト」によって生まれた本作。
知らぬ内に父親殺しと近親相姦に手を染めたテーバイ王・オイディプスの物語『オイディプス王』、オイディプスがテーバイ追放後に放浪の末に辿り着いた地で神々と和解し、その人生に幕を下ろす『コロノスのオイディプス』、そしてオイディプスの娘であるアンティゴネが、テーバイ王である叔父のクレオンが定めた法に背き、兄の亡骸を埋葬しようとする『アンティゴネ』。ソポクレスによる3本のギリシャ悲劇を船岩が1本の戯曲として再構成し、隆盛を誇った王国・テーバイが没落していくさまを描き出す。
舞台上の床はまるで水が張っているかのような鏡面となっており、人々や美術が映り込むつくりになっており、荘厳な空気が漂う。後方には木でできた巨大な扉があり、舞台下手にはオイディプスのための玉座とテーブル、上手にはタイプライターや書類の山が置かれた机やイスが配置されており、古代ギリシャの王の居城というよりも、近代国家の政府の執務室を思わせるようなつくりとなっている。