名優ホアキン・フェニックスが語る衝撃作『ジョーカー』
彼はずっと暴力にさらされてきた。僕らは暴力というものは学習できるものだし、やがて忘れたり制御できるものだと知っている。でも、彼はそれを学ぶ機会がなかったんだよ」
身体的、精神的な暴力にさらされてきたアーサーは、小さな銃を手にしたことをきっかけに自分の中にある願いや想いを“暴力”にして表現することを覚えていく。そこでポイントになるのは、多くの映画で描かれるような“主人公が変化する決定的な瞬間”が本作では描かれないことだ。「アーサーがいつジョーカーになるのか? どうしてこんなユニークな状況が結果的に生まれてしまったのかを指摘するのは難しい。“ひとつの明確なきっかけ”があるとは思わないからね」
だからこそフェニックスは、映画の冒頭から繊細な動き、表情の変化、視線の移動を積み重ねて、心優しいアーサーが少しずつ変化し、最終的に自らを“ジョーカー”と名乗るまでを演じていく。誰よりも哀しく、誰よりも優しく、想像を絶するほどに残酷。近づきがたいほどの恐怖を感じるのに、心のどこかで共感している……観客は映画を観ながら主人公から目が離せなくなり、様々な感情が渦巻くことになるだろう。
「人生は複雑だと思うんだ。