くらし情報『生と死の境で、言葉の真実を見極める奇跡について思う 『フェイクスピア』観劇レポート』

2021年6月9日 17:00

生と死の境で、言葉の真実を見極める奇跡について思う 『フェイクスピア』観劇レポート

そのことに気づき、ゆっくりと記憶の焦点が定まっていって“ある出来事”にたどり着いた時、あっ、と合点した。いくつかの引っかかっていた言葉も、冒頭でアンサンブルが魅せた、樹々が倒れる美しいムーブメントのその意味も。

生と死の境で、言葉の真実を見極める奇跡について思う 『フェイクスピア』観劇レポート


この言葉は野田が生み出したフィクションではなく、野田が公式サイトの挨拶文で「コトバの一群」と綴った、“ある出来事”に関するノンフィクションだ。この一群を舞台に乗せることを「不謹慎にも思った」とも書いていた。観客各々、とくに年齢によって反応の温度差はあるだろうが、筆者はこのコトバの一群を前に、恐怖の記憶が蘇り、戸惑い、体を硬直させながら息を止めて圧巻のクライマックスを凝視した。終演後、落ち着きを取り戻した後に実感したのは、自らが創作した言葉ではない、フェイクではないコトバの一群を演劇作品とした野田の覚悟と、そのコトバに対する畏怖。そして、言葉の真実を見極める奇跡について思う。イタコの言葉は、死者の言葉は、神の言葉は本物なのか。
何が本物で、何が偽物か。見える言葉(文字)も見えない言葉(声)も、その真偽を知ることは容易ではなく、私たちは言葉にどれだけ惑わされ、揺さぶられているのか。

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