3つのギリシア悲劇を再構築した『テーバイ』 長い創作期間を振り返る船岩祐太・植本純米インタビュー
そうやって、ゴールを決めないというのは、すごく贅沢な時間だったなと思いますね。
船岩「これで成立」と決めつけないというのは、なかなかできることじゃないよね。
植本しかも、その時間を無駄に思わなくて済む、そういう時間だったよね。
船岩「こつこつしていく」ということを、俳優の演技の熟成みたいなところに重きを置くのではなくて、そもそもの企画そのものを熟成させてみようかという方向に今回、僕は舵を切ったんですね。長時間あれば当然、俳優の演技にかけられる時間も増えるんだけど、それよりも、企画として面白いものが出来上がるかどうかのために時間を割こうと。
僕の受け取り方として、このプロジェクトは「企画のプレゼンテーション」みたいなもので、コンペではないし、オーディションでもなく、勝敗があるわけでもなくて、面白いものがあればやってみよう――なんか面白い種を作れたらということで時間を与えるから、ちょっとやってみないか? という懐の深い企画なんだと。上演のラインアップを決める時に、こういう生まれ方をした作品があること、選択肢が増えていくこと――より良いものをピックアップしていこうという試みはすごく価値があるんじゃないかと思っています。