原作者シーラッハが解説。映画『コリーニ事件』が描く葛藤とは?
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『犯罪』や『罪悪』などで知られるドイツ人作家フェルディナント・フォン・シーラッハの初長編小説『コリーニ事件』が映画化され、日本でも公開されている。本作は、彼が自身の生い立ちや弁護士として活動をする中で抱いた想いを込めた物語で、完成した映画に「自分より脚本家の方が物語作りがうまい」と賛辞をおくっている。
本作の主人公ライネンは新米弁護士。国選弁護人に選ばれ、ある殺人事件の容疑者コリーニの弁護にあたるが、この事件で殺されたのは、ライネンの少年時代の恩人だった。彼は裁判に私情が入ることを理由に一度は弁護を断るが、周囲の声に背中をおされて弁護にあたる。幼かったライネンに優しく接してくれ、経済界でも大きな成功をおさめた優しい男はなぜ、コリーニに殺されたのか? ライネンは弁護にあたる中で事件に隠された真相、彼らの過去、そしてドイツ司法の落とし穴を見つけ出す。
ナチ党全国青少年指導者を祖父にもつシーラッハは、生まれた時からドイツの歴史の影に向き合う人生をおくってきた。刑事事件弁護士として活動をはじめた後も政治局員や工作員が関係する事件に関わり、作家として活動をはじめた後も単なる謎解きミステリーではなく、人間の複雑な心理や、歴史との向き合い方、重厚なドラマを巧みな構成で描いている。