池波正太郎作品や『髪結新三』を揃えて『吉例顔見世大歌舞伎』が開幕
』。『菊畑』は、一般家庭出身の中村梅丸が中村梅玉の芸養子となり初代中村莟玉(かんぎょく)を襲名する披露狂言となっている。源氏再興を目論む吉岡鬼三太(梅玉)が智恵内と名乗って奴に身をやつし、鬼一法眼(芝翫)の屋敷に潜入。同じく奴虎蔵となった牛若丸(梅丸改め莟玉)と共に、鬼一が秘蔵する兵法書「六韜三略」を手に入れようと画策する。主要な人物がそれぞれ「実は」「実は」の二重構造を持ち合わせる設定の中、美しく菊が咲き揃う中で互いの本心を探り合う緊迫の一幕。敵の虎蔵を愛してしまった鬼一法眼の娘・皆鶴姫(中村魁春)の嘆きが痛々しい。
『連獅子』は勇壮な毛振りで有名。親獅子を松本幸四郎、仔獅子を市川染五郎と、実際の父子で演じる。
中村時蔵、中村鴈治郎らによる『市松小僧の女』は時代小説の大家・池波正太郎の作で、42年ぶりの上演となる。
文:仲野マリ