山本耕史「僕が出ることはもうないと思っていた」再びマークを演じる『RENT』の魅力
でも、観に来てくださった方たちが引っかかりを覚えるような違和感を与えないところまでは、いけると思います。稽古中に、できるだけ自分が納得できるレベルまで近づけていきたいですね」
山本が演じるマークは、映像作家を志してルームメイトのロジャーをはじめとする友人たちと過ごす日々を記録し続けており、同時に本作の語り手でもある。山本は彼をどのようにとらえているのだろうか。それには、本作の作詞・作曲・脚本を手がけ、しかもオフ・ブロードウェイプレビュー公演初⽇の前夜に⼤動脈解離によって35歳でこの世を去ったジョナサン・ラーソンの姿が大きく関わっている。
「僕は(主演・演出を務めた)ミュージカル『tick, tick...BOOM!』(2012)でジョナサン・ラーソンを演じたこともあります。それを通して見ると、アーティストとして没頭しているロジャーと、それを傍観して『このままでいいのか』って言うマーク、ジョナサンのもつふたつの側面がふたりに投影されているような気がします。マークは『偽善者で結構』っていうセリフもあって、ほかの登場人物が俺はこうだ、俺は愛してる、私はもう嫌だって言っているなかで、ある意味自分を殺して、大人で、傍観者として舞台の上にいる。