くらし情報『雨の季節にふさわしい、しっとりと優しい人間ドラマ 「六月大歌舞伎」第三部『ふるあめりかに袖はぬらさじ』観劇レポート』

2022年6月14日 21:00

雨の季節にふさわしい、しっとりと優しい人間ドラマ 「六月大歌舞伎」第三部『ふるあめりかに袖はぬらさじ』観劇レポート

とにかく目が離せない玉三郎のお園

五年後の慶応三年。江戸の攘夷論者・大橋訥庵の思誠塾の門下の者たちが、大橋の法要のため登楼している。いつものようにお園は亀遊の最期を熱く語る。お園があることないこと大げさに語れば語るほど可笑しくてしかたない。かと思うと、想像上の亀遊がのり移ったかのように、お園は凛として美しい。ついには遣り手婆からうやうやしく差し出された懐剣を帯に差し、緋の打掛を肩にはおり、立派な花魁を演じ始める。喉を突くしぐさをしたかと思うと、その緋の打掛をさっと翻し血しぶきが広がる様を鮮やかに象徴してみせる。舞台の客も客席も大拍手だ。
お流れ頂戴で盃を手にしながらスッとしなるその指の形の綺麗なこと。盃をグッとあおる姿に色香が立ち上り、本当にこんな花魁がこの座敷に存在したのではないかと錯覚しそうだ。

お園のテンションも最高潮。もののはずみなのか意図してのことか、かつて吉原で大橋に教わった歌を披露すると言い出す。「二上がりで、ちょっと詩吟みたいなんですけれどね」と指かけの代わりに襦袢の袖で棹を持ち、三味線を弾きながら歌い始めたその歌こそ、「露をだに いとふ大和の女郎花ふるあめりかに袖はぬらさじ」

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