くらし情報『雨の季節にふさわしい、しっとりと優しい人間ドラマ 「六月大歌舞伎」第三部『ふるあめりかに袖はぬらさじ』観劇レポート』

2022年6月14日 21:00

雨の季節にふさわしい、しっとりと優しい人間ドラマ 「六月大歌舞伎」第三部『ふるあめりかに袖はぬらさじ』観劇レポート

その直後、亀遊は自ら命を絶ってしまう。発見したのはお園だった。

雨の季節にふさわしい、しっとりと優しい人間ドラマ 「六月大歌舞伎」第三部『ふるあめりかに袖はぬらさじ』観劇レポート

亀遊の死から七十五日目、ある瓦版が横浜の街に広まる。異国人に身請けされるのが嫌で、家代々に伝わる懐剣で自害した攘夷女郎だとか、元は武家の娘だとか、事実とまるで違う書きぶりにお園も藤吉も驚く。また「露をだに いとふ大和の女郎花ふるあめりかに袖はぬらさじ」という辞世の一首を詠んだとまで書かれている。その一首の本当の作者や亀遊の藤吉への思い、亀遊が無筆であることを知っており、そしてその最期を見ているお園は、これが捏造されたものじゃないかと思い当たる。病が癒えたために客を取らなければならなくなった亀遊。かといって藤吉に亀遊を身請けする金はない。
どうやってもかなうことのない亀遊と藤吉の恋。無念の思いを抱きながらも志のために米国へと渡ろうとする藤吉を、お園がどうにも無理筋な言い草でなじる。哀しいはずなのに客席のあちこちで笑いが起きる場面だ。

一方岩亀楼は”攘夷女郎の自決した妓楼”として有名となり大繁盛。引付座敷も亀遊の存在もすっかり”上書き”され、派手に商売に利用され始める。亀遊の最期の真実を知っているお園ですらその流れに巻き込まれ、いつのまにか女講釈師のごとく亀遊の偽伝説を熱く語り評判となる。

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