初夏の夜、暗闇のなかで躍動する金色の肉体 大駱駝艦『Crazy Camel Garden』公演レポート
がやってくる。容姿は対照的だが仲良く戯れる二人。しかしそこに男子学生(村松卓矢)が登場すると、彼女たちの様子は一変。競い合うように、男子学生を誘惑し始める。激しい恋の鞘当てにもかかわらず、モネの画集を持ち歩く、どこか気取った男子学生は、どちらにもなびかない。ヴィヴァルディ「四季」に乗せて彼らの人生の四季も移ろい、二人に服を脱がされた男子学生は老人の姿に。人生が永続するかのような錯覚は、この一瞬によって裏切られ、儚さを露呈する。本作はパリでの初演後、形を変えながら日本各地で上演されているが、今回はシンプルな構成となった分、群舞のダイナミズムが際立った半面、女学生と男子学生のドラマには枯淡の趣が増したようにも感じた。
金色の肉体の中で描かれる性の目覚め、成長、そして老い。聖俗も時も超え、大駱駝艦のパフォーマンスはひととき庭園に降り立ち、そして美しく消えたのだった。
取材・文:高橋彩子
【開催概要】
東京芸術祭特別公演 ファンタスティック・サイト 大駱駝艦・天賦典式『Crazy Camel Garden』
日程:5月21日(金)・22日(土)・23日(日) ※公演終了
会場:東京都庭園美術館・芝庭
振付・美術・演出:麿 赤兒
出演:麿 赤兒、村松卓矢、田村一行、高桑晶子、鉾久奈緒美ほか