注目の劇場・シアター風姿花伝が北欧発の異色作『終夜』を日本初演
でも、これはひょっとしたら面白いんじゃない?と私が言ったら、上村さんが“まさか選ぶとは”とびっくりして(笑)。ヘビーな話でしたから。でも結果的には良かったなと思います」
父、母、娘、息子の家族4人、それぞれが内なる思いを激しく噴出させる壮絶な会話劇『ボビー・フィッシャー~』は、プロデュース公演の始まりを強烈なインパクトで彩った。今回の『終夜』は兄と弟、それぞれのパートナーによる同じく4人芝居。執拗に繰り返される兄弟、夫婦の衝突によって、人間の愛の渇望、究極の孤独が浮き彫りになっていく。
「作家というものは、“これを届けたい”という思いを持っているものだと思うんですが、ノレーンの場合はそれが本当にわかりにくい。劇構造を安易に提示することを嫌悪している、そんなふうに書いてもいる作家なんですよね。わかりやすいものを客に持ち帰ってもらう、なんてことに嫌悪感がある。
劇構造を裏切っていきたい思いがあるのでしょう。今回の作品は夫婦喧嘩が延々と続くんですが(笑)、ノレーンは詩人でもあったので、言葉が面白いんですね。どんどん喧嘩が煮詰まっていくけれど、そこにちょっと抜け感があるというか。どこかで“え?”と肩透かしされるような、ユーモアと言っていいのかわからないけれど、不思議な風通しの良さがあるんです」