2022年10月4日 07:00
【コラム】『ジャージー・ボーイズ』中川晃教と花村想太のWフランキー体制への点と線
だが今の時点で、「中川のWキャストは花村にしか務められない」ことは断言できる。そのワケを、ボーイズ取材を重ねてきたライターとして点と点を繋ぎながら、何よりイチJBファンとしてひも解いていこうと思う。
世紀の当たり役、神々しき中川フランキー
中川晃教のフランキーで日本版JBを……!筆者のなかでそんな妄想が芽生えたのは、今からもう16年も前のこと。トニー賞を獲ったばかりの舞台をブロードウェイで観て、小柄な体とつながりそうな眉毛で「♪はじめてのチュウ」みたいな声を出す、フランキー役のジョン・ロイド・ヤングに堪らない魅力を感じた。彼の歌声が、ザ・フォーシーズンズをほぼ知らなかった筆者にもごくごく容易に、「もっと歌ってフランキー!」と願った当時のメンバーとファン、そしてそこで舞台を観ている観客の気持ちを分からせ同化させてくれた。
2019年オフブロードウェイ版パンフレット(筆者所有)
こういう魔法の歌声を持った人、日本のミュージカル界にもいるぞ……? 妄想が芽生えたと言っても、この時点で思ったのはその一点。歌に魅了されるだけでなく物語にも没入できたのは、ザ・フォーシーズンズと共に青春を過ごしてきた“アメリカの観客”と同化できたからであって、そもそもそうした観客のいない日本で同じ現象が起こるとは思えず、日本版が同じくらい熱い舞台になる気はしていなかった。