『翻訳できない わたしの言葉』東京都現代美術館で開催中 ひとりひとり違う「わたしの言葉」について考える
歩き回り、さまざまな角度から出会えるように配置されている。子どもたちの眼差しが優しいのは、時間をかけて関係性をつくったうえで撮影しているからだ。
金仁淑《Eye to Eye, 東京都現代美術館 Ver.》2024年「翻訳できない わたしの言葉」展示風景、東京都現代美術館
また、日本語をほとんど喋れない子どもたちに日本との接点をつくるためのアートプロジェクトを実施。滋賀県のアートスポットなどに出かけ、通訳の助けを借りながら子どもたちがインタビューし、手に取れるアートブックを作成した。ブラジルに帰国した少女にアートブックを届けに行く映像もある。「ひとり一人が違う人生を送っているので一括りにはできない。わたし自身、まず個人があってその背景に在日コリアンという属性があります。人と人とが出会うには、個人と個人として向き合うことが大切です」。
展覧会の最後には、このアートブックほか、参考文献などが置かれたスペースもある。休息しながら思い返してみたい。同展のキュレーター八巻香澄は「言葉の違いというのはステレオタイプや分断を生むことがあります。それは“正しい”言葉があってそれを使わなければならないというイデオロギーが強いから。