市原湖畔美術館『末盛千枝子と舟越家の人々―絵本が生まれるとき―』をレポート 数々の美しい絵本を生み出した編集者の足跡をたどる
M.B.ゴフスタインやエリック・カールなど世界の絵本作家や編集者との交友を示す手紙や写真の展示も
地下の展示室では、そんな末盛を育んだ「舟越家の人々」の作品が一堂に会している。
7人弟妹の長女だった末盛は「両親が子供たちを育てるために彫刻だけでやっていくということが、どれだけ大変かということが身に染みていたので、芸術家とだけは結婚したくないと思っていた」と語るが、そんな厳しい生活のなかでも父・保武は常に「何を美しいと思うか」ということを問いかけ、子どもたちの価値観や美意識を育んだという。また、弟・一馬の死をきっかけに家族全員で洗礼を受けたカトリック信仰も、末盛の支えとなった。保武の代表作である「長崎26殉教者記念像」のうちの1体《聖フェリッペ・デ・ヘスス》をはじめ、桂や直木の彫像や絵画、母・道子や妹の苗子、茉莉、カンナの絵画など家族の作品が静かに響きあう展示空間からは、末盛の絵本作りの根幹にあるものを感じとることができるだろう。
展示風景舟越保武《ダミアン神父》1975年世田谷美術館蔵撮影:田村融市郎(市原湖畔美術館提供)
左:舟越保武《聖フェリッペ・デ・ヘスス(長崎26殉教者記念像のうち)