映画『グリード』が描くファストファッションの真実より重要な問題とは? M・ウィンターボトム監督が語る
でも、友人から彼の話を聞いているうちに、部下やアシスタントがたくさんいるであろうグリーンが自分で、直に記者に電話するところや、あれだけの富を手にしていても、97セントと98セントの差に執拗にこだわる部分に興味を持ったんだ。
あれだけの会社を持っていて、大きな存在感があるはずなのに、1セントの損も許さない姿勢を隠さない。彼が一体、何に突き動かされているのかが、よく見える想いがした。そこで“彼のような人物を主人公にすれば、ファストファッションの世界をエンタメ的に描くことができるのでは?”と思うようになったんだ」
映画の舞台はギリシアのミコノス島。ファストファッション・ブランドで成功をおさめたリチャード・マクリディは、自身の誕生日を祝うために、この地で大規模なパーティを予定している。離婚した元妻や息子、母と島に乗り込んだ彼は、自分の伝記本を書く作家まで引き連れて、ド派手で、自分の力を誇示するような一夜にするべく準備を進める。
一方で彼はイギリス当局から脱税疑惑をもたれ、海外の生産拠点の劣悪な労働環境を問題視されている男でもある。即席のコロシアムが建設され、本物のライオンが運ばれ、有名セレブをゲストに呼ぶべく奔走するマクリディ。