映画『グリード』が描くファストファッションの真実より重要な問題とは? M・ウィンターボトム監督が語る
しかし、傲慢なこの男が築き上げてきた帝国は少しずつほころび始める。
ウィンターボトム監督は、主人公マクリディのミコノス島での6日間を主軸にしながら、マクリディの半生、彼の家族のドラマ、あまりにも過酷で劣悪な環境で働かざるをえない人々の状況、島にいる難民のエピソードを巧みに構成した。
ポイントは、劇中にマクリディの伝記本を書くために取材にきた作家を置いたことだ。この作家は華やかな世界を眺めながら、内心ではマクリディのような人間を許せない。しかし、彼は仕事で取材しているので、傲慢で湯水のように金を使うマグリディに追従している。格差は許せない、ひどい環境で働く人がいることも許せない、でも安いファッションはありがたいし、金のためなら働かざるを得ない……現代の顧客と伝記作家はある意味で同じではないだろうか。
「ファストファッションで稼いだ金で豪勢な暮らしをしている世界と、貧しい地域で過酷な労働をせざるを得ない人がいる世界が存在する。このふたつはまったく離れた別の世界のように見えるけど、実はしっかりとつながっているんだ。
伝記作家はこのふたつの世界の間にいて、ふたつをつなぐ役目を担っている。
この映画をつくる上で調べていて興味深いと思ったのは、ファッションの世界は、他の業界とくらべて現実の世界で起こった出来事を隠そうとする傾向がある、ということだ。