ドキュメンタリー映画界の巨匠、ニコラ・フィリベール監督が語る。「自分もまだ修行中」
事前にロケをきっちりして、ある程度、撮るところを決めて、自分で常に現場をコントロールして撮れと。僕も学生に教えることがあるんだけど、まったく逆のことを言います。なぜなら、自分はまったく逆だから(笑)。
まず、わたしは最初から先入観をもって現場に入ることはない。たとえば今回なら看護師を目指す生徒といって、もちろんそこで自分なりにイメージをすることはあるんだけど、『こういう人物や職業だ』といった決めつけや固定観念はもたない。まっさらな状態で、どんな発見があるんだろうという気持ちでその現場に入っていきます。いまはドキュメンタリー作家でも、あらかじめおおまかなシナリオを書いて、それを映像として再現しようとする人が多い。僕は自分の食指が動くというかな。
現場に身を置いて、『これを撮りたい』と自分の気持ちが動かないと嫌なんだ。撮りながら、なにを発見して、学ぶことができるのかがとても大切だと思っている。若い人たちがドキュメンタリーを撮ろうとすると、だいたいはテレビのプロデューサーが横から入ってきてね(苦笑)。まず、どういった内容になるのか企画書を求められる。事前に内容を把握しておきたいのがテレビ局だからね。