BUCK-TICK、日本武道館から再び歩みはじめた希望のパレード「行こう!未来へと」
優しい和声を響かせた今井の独奏から「MOONLIGHT ESCAPE」へ。櫻井の伸びやかなヴォーカルは祈りのようにも聴こえた。そして8ビートのアッパーチューン「ユリイカ」へ。今井と星野が掲げるピースサインと同じタイミングで観客もピースを掲げる。それは『ABRACADABRA』ツアーで一番見たかった光景だった。櫻井は下手から上手へとステージを歩き、その光景を眺めていた。そしてラストを飾ったのは「忘却」。切なさと温かさが同居するアンサンブルと、情感込めた歌が胸にひしひしと沁み渡る。
深い余韻を残し本編を締め括った。
「ABRACADABRA ON SCREEN」とほぼ変わらないセットリストを、リアルで再現するような今回の公演で、何より印象的だったのは、曲が終わるたびに鳴り止まない大きな大きな拍手の音。声に出せない思いを拍手に託してメンバーに届けていたのだ。いつになく曲間をたっぷりと取っていたのは、きっとその思いをメンバーが全身で受け止めるためだろう。無観客ライブを経験したからこそより実感する、演者と観客との相互作用。ライブとは双方の熱量をもって作り上げられる。観客の熱はしっかりと彼らに届いたことだろう。