一方で、慰謝料や弁護士費用は原則として認められません。
■損害賠償請求が認められないケースも
先ほど、損害賠償額の範囲について触れましたが、どんなケースで損害賠償請求が認められるのでしょうか?
これについては、会社法339条2項には記載があり「正当な理由」のある解任を除き損害賠償請求が認められる、とされています。つまり、「正当な理由」がある場合には、取締役解任に対する損害賠償請求は認められないことになります。
取締役解任の「正当な理由」の有無で争われる主要なケースは以下のような4つに大別されます。
(1)法令・定款違反行為、心身の故障
(2)職務への著しい不適任など
(3)経営上の判断の失敗
(4)主観的な信頼関係喪失(大株主の好みや、より適任な者がいるというような単なる主観的な信頼関係喪失)
それぞれのケースが正当な理由に該当するかどうかですが、(1)(2)に関しては、正当な理由に該当するとされています。(3)については正当な理由の有無について争いがあるとされており、(4)は正当な理由とは原則として認められません。
本件では、他の取締役と意見が合わないという理由だけでは、④の主観的な信頼関係喪失といえ、正当な理由は認められないでしょう。