一方で、犯罪者でない者が同姓同名の犯罪者がいるという理由で「名」を変更する場合には「正当な事由」があると認められるでしょう((2)の同姓同名の者がいて社会生活上著しい支障がある場合です)。
■偽名で履歴書を作成し採用面接に臨んでいた場合は…?
一方で、「名」を変更するのではなく、履歴書に記載する名前が偽名だった場合はどうでしょうか。
この場合、有印私文書偽造・同行使の罪になると考えます。
有印私文書偽造は、「行使の目的で、他人の印章または署名を使用して…事実証明に関する文書…を偽造」(刑法159条1項)した場合に成立します。
有印私文書偽造の保護法益は、私文書に対する社会の信用です。履歴書は、求職者が自身の氏名・経歴等の事実を証明するために用いられるわけですから事実証明に関する文書といえます。
偽造とは、名義人でない者が名義を冒用して文書を作成する行為ですが、他人の名義を勝手に使った場合はもちろん、架空人の名義を使った場合も偽造です。
有印私文書偽造の罪を犯した場合、「3月以上5年以下の懲役」で処罰される可能性があります。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。