【4/19公開】イタリアの新鋭が描く現代の寓話『幸福なラザロ』。無垢な青年の姿が問いかけるものとは?
果たしてどちらが幸せなのか?映画の後半に差し掛かると、観客はそんな思いを抱くのではないでしょうか。賃金をもらえても、社会に搾取される構造は小作人のときと変わらないのでは?と……。村人たちの生活を前半と後半で対比させ、リアルな描写で浮き彫りにする展開は、ロルヴァケル監督の力量を感じさせます。日常のドラマの中に、少しだけ現実離れした設定を取り込んでしまう手腕は、前作『夏をゆく人々』にも通じるものがあります。
■物語を彩る、美しい映像も見どころ
ほかにも見逃せないのは、デジタルではなくスーパー16mmフィルムで撮影された映像の美しさ。農園で村人たちが収穫する色鮮やかなタバコの葉。陽射しを浴びて汗を流しながら働く人々の姿。労働の合間に飲む、グラスに入ったコーヒー。
小高い所から見下ろす村の風景など、ひとつひとつのショットが物語の世界観を支えています。また、劇中にときどき登場する“狼(オオカミ)”も、観客にさまざまな問いを投げかけるモチーフになっているので、鑑賞後それぞれが自分なりに解釈してみるとおもしろいかもしれません。
人間を超越したような青年・ラザロの姿を描いたこの物語は、まさに現代社会にも通じる普遍的な寓話といえます。