でもひょっとしたら辻井くんにだけ見えたのかもしれないと思うんだよね。彼がはやぶさに魂を吹き込んでくれたんだなあ」と感慨深そうに語る。
「リスクを取らなければ後悔する」というのは劇中、渡辺演じる山口が決断を迫られた際に口にするセリフである。そんな山口を渡辺は「温度は1300度くらいあるけど、赤くもないし音もしない炎を内に持つ男」と評するが、渡辺自身もまたリスクを恐れず、自らの内なる炎を燃やして歩み続けてきた人間である。「結局は、好奇心や冒険心が恐怖に勝つかなんだよね。これくらいのスピードで走ったらどんな景色が見えるのか?そういう冒険心があるからこそリスクが生まれる。それを乗り越えようという思いがあるならトライすればいいと思うんです」。
同時に年齢を重ねる中で、社会との繋がりについても考えることが多くなったという。
「40代の頃から考えてはいたんですが、さらに3月11日のことがあって『お前は何を見せるんだ?』ということが強く求められている気がするんです。仕事というのはやはり社会とかかわる一番太いパイプだと思いますが、大きく価値観が変わろうとしているいま、どう社会と繋がっていくのか?という問いが強く提示されていると思います」。『はやぶさ遥かなる帰還』
2月11日(土) 公開
取材・文・写真:黒豆直樹
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