昨年のヴェネチア映画祭で栄誉金獅子賞を受賞したドキュメンタリー映画の巨匠、フレデリック・ワイズマン監督。これまで精神疾患の犯罪者たちの矯正施設からパリの老舗ナイトクラブまで撮影してきた重鎮は、新作『ナショナル・ギャラリー~英国の至宝~』でターナーやレンブラントなどの絵画を所蔵する世界有数の美術館の世界へと足を踏み入れた。
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毎回、通常は扉の閉ざされた場所へカメラを入れるワイズマン監督。聞くと美術館は1度トライしたかった場所だった。「あまりに昔のことでもう忘れてしまったけど(笑)、初めて美術館を訪れたのは中学生のころ。誰かの絵画が好きになったとかではなく、あの空間が好きでよく行くようになった。今も地元のボストン美術館にはよく行くし、海外を訪れた際も近くにいいミュージアムがあれば必ず足を運ぶ。それで実は1度、ある美術館に撮影を申し込んだことがあるんだ。
でも、撮影料を要求されてね。私はそういう形で撮影や取材を一切したことがないから断ったんだ。それ以来、話はなく、もう縁がないと思いかけていた」
その遠ざかっていたチャンスはふいに訪れる。「何年か前、旅先で偶然ナショナル・ギャラリーの職員に出会ってね。