本作の主人公ベンヤミンも、様々な事件を起こして世の中を賑わすが、そもそもは学校でも孤立し、誰からも理解されずに孤独に暮す青年だった。ピエロの表情とその奥にある心情は、ベンヤミンと重なる部分がある。
また、多くの文学作品や戯曲で“ピエロ=道化”は、あらゆる制度や常識を無視して本当のことを言う、本当のことを知っているキャラクターとして登場する。例えば、ウィリアム・シェイクスピアの『リア王』に登場するリア王のそばにはいつも道化がいて、王に向かって皮肉をいい、時には鋭いフレーズで王の心をかき乱す。あらゆる常識や、思い込みや、制度や、恐れから無縁で、おどけた顔で相手を翻弄する存在、それがピエロだ。
孤独な存在、相手を翻弄する存在、フザけているが真実を知っている存在……ピエロが持つ様々なイメージが劇中にはいくつも登場しており、物語を深く楽しむ大きなカギになっている。『ピエロがお前を嘲笑う』
9月12日(土) 新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
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