2010年に映画化もされたカズオ・イシグロの傑作『わたしを離さないで』が、蜷川幸雄演出により舞台化される。そこで日本語版の脚本を手がけることになった、ペンギンプルペイルパイルズの倉持裕に話を訊いた。
舞台『わたしを離さないで』チケット情報
「カズオ・イシグロさんに最初に触れたのは、映画『日の名残り』(=原作がカズオ・イシグロ)です。その主人公スティーブンスの生真面目さを強調したコメディを作りたいと思い、鎌塚シリーズ(=倉持が作・演出を務める舞台)が生まれました。カズオ・イシグロ作品の魅力のひとつは、その冷静で客観的な筆致。作家の主観が抑えられている、あるいは巧妙に隠されているために、読者は何にも縛られずに想像を膨らませることができる。作品全体に紳士的な態度や品を感じ、とても惹かれます」
そんな縁もあり、『鎌塚氏、放り投げる』(2011年)の公演中に今回のオファーがあった際は「運命を感じた」と言う。そして本作『わたしを離さないで』は、日本語訳小説の発売後すぐに購入。
そのまま一気に読み終えてしまったらしい。
「話が進むにつれ、怒りを覚える対象がまるで別方向へとシフトしていくところに魅力を感じました。