少女期から晩年までのナワルを演じる麻実、ナワルの若き恋人役に始まり複数の役を演じ分ける岡本をはじめ、それぞれの俳優が抱えるセリフは膨大だが、複雑ながらも詩的で深遠な言葉の数々は見る者の胸に沁み、怒りや哀しみ、激しい憎悪、そして愛、慈しみといった感情をしっかりと伝えてくる。中でもやはり圧巻は、実に自身と50歳差となる14歳から60代までのナワルをひとりで演じ切る麻実の存在。特徴的で不思議な響きを持つ“声”を最大限に生かし、純粋に世界を信じる少女、強い意思を持って生きる女性、慈愛にあふれる母親を見事に体現している。
やがて、登場人物たちはそれぞれにある“真実”に行き当たる。ある者は法廷で、ある者は旅路の中で、ある者はナワルが託した手紙で…。想像を絶する真実を前にした瞬間、人はどのようにそれに向き合い、受け止めるのか?物語の最後で、ナワルと家族たちがまるで集合写真のように舞台中央に並び立つ。その時、彼らがどのような表情を見せているのか――過酷な現実の中から彼らが導き出す“答え”を見届けてほしい。10月15日(水)までシアタートラムにて上演。
10月18日(土)には兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールでも上演。
取材・文:黒豆直樹
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