ここまでは、武士の物語が続いたが、次の古今亭文菊は落語『江戸噺』と称して、江戸の庶民の様子を生き生きと現出させる。演目は毎回違ったようだが、この回は『時そば』。文菊のとぼけた表情やそばのすすり方に笑いが起きた。さらに、市川男寅と市川福太郎が舞踊『藤娘』を披露。町娘に扮した藤の精を、若いふたりがフレッシュに踊った。
そして、最後は河竹黙阿弥の『曽我綉侠御所染』をもとにした新作舞踊『男伊達花廓』。桜咲く仲ノ町の美しい情景の前で、海老蔵扮する主人公・御所五郎蔵が、恋人であり今は傾城となっている皐月からの手紙を受け取り、刀や傘を振り回して邪魔だてする者達に、尺八で応戦しながら、廓へ会いに行くまでを踊りで表現する。コンパクトなホールの中での、床机や傘を用いた立ち廻りは、迫力満点。
広げた傘4本を組み合わせて成田屋の定紋である“三升”も形作られ、場を盛り上げた。
この「JAPAN THEATER」で改めて感じるのは、日本文化の多様さ。ひと口に伝統芸能と言っても、影響関係はある一方、様式や雰囲気がまるで違う。観客は多彩な“和”に目を向け、その豊かな魅力を味わうことができる。公演は10月26日(日)まで。チケット発売中。
取材・文:高橋彩子
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