演劇ユニット「新派の子」錦秋公演 河竹黙阿弥没後百三十年『新編 糸桜』が、10月12日(木)・13日(金) に日本橋公会堂で上演されることが決定した。『糸桜』は、歌舞伎の名作者・河竹黙阿弥の曾孫で、歌舞伎研究家・河竹登志夫による『作者の家』を原作として、新派文芸部の齋藤雅文が女優・波乃久里子に当て書きした作品。“作者の家”を守る糸、“作者の家”の養子となる繁俊、“作者の家”に嫁ぐみつという血の繋がりのない3人が、それぞれの想いを胸に秘めて、ぎこちないながらも親子として心を通わせていく、笑いあり涙ありの感動作だ。2016年1月に河竹黙阿弥生誕二百年記念として初演、2021年11月には、齋藤がコロナ禍に立ち上げた演劇ユニット「新派の子」の第2弾公演として再演された。今回は演劇ユニット「新派の子」錦秋公演として新編を上演。主演は「この作品に出会えたこと、感謝しかありません。役者冥利に尽きる、この上ない幸せです」とコメントを寄せる波乃が務めるほか、日本舞踊尾上流四代家元・尾上菊之丞、初演以来連続出演となる宝塚歌劇団元宙組トップスター・大和悠河らがキャスティングされている。■脚本・演出:齋藤雅文 コメント生意気にも波乃久里子の代表作として、少しでも多くの方に御覧をいただかなければと思い立った!今、見るべきです、走り続ける波乃久里子を!これは黙阿弥という「化け物」を父に持ったお糸さんと、血の繋がらないその家族、それを取り巻く人々の愛と情熱の群像劇でもあります!今回は養子の河竹繁俊役に尾上菊之丞という「新しい血」が流れ込む!いったいどうなるのだ!尾上菊之丞さんを役者として迎えて、さあ、どうなるのでしょうか。舞踊家とか、家元とか、まぁいいじゃありませんか。菊之丞さんの涼し気というか、飄々とした不思議な存在感と、不可能を可能にする魔力に惚れたのですから。「未知との遭遇」こそ演劇の醍醐味です!大和悠河と、練達のキャスト・スタッフと、下野戸亜弓の琴を得て、より深く、より高いところへ! 『糸桜』決定版をお送りします!三越劇場の初演から7年。演劇は「生き物」ですから、放っておいても同じ舞台にはなりません。さらに今回は「新編」ですので、これまで観た方もまた見逃せません!久里子もみんなも、進化も深化もして、ましてや菊之丞さんが入れば、必ず新しい姿に「脱皮」します!さて蝶になるか、毒蛾になるか、ぜひ御一緒に目撃していただきたい!■主演:波乃久里子 コメントこの『糸桜』という素敵な作品に出会えたこと、感謝しかありません。役者冥利に尽きる、この上ない幸せです。先日(4月13日)、齋藤雅文先生にお声掛けいただき、朗読会をいたしました。その名も『Salon De Marron~波乃久里子を聴く宴~』……畏れ多くて、お恥ずかしい限り。わたくしは舞台の役者ですから、どうしても動きで表現したくなるところをグッとこらえて、台詞のひとつひとつ、お相手の方との“間”を大切にして、細やかに稽古していただきました。当日までドキドキでしたけれど、いざ、開幕のときを迎えると、目の前には満員のお客様!齋藤先生の演出で、とても素敵な空間をつくってくださった上に、今、この瞬間をご一緒する皆様との、ライヴでしか味わえない空間に喜びを感じました。ありがたいことでございます。『糸桜』は本当に大好きな作品です。そして、われらが齋藤雅文先生に「波乃久里子の代表作」と言っていただけるなんて!そのお言葉に恥じぬよう、黙阿弥さんに、糸女さんに、繁俊先生に、登志夫先生に、そして父に……、手を合わせて、力をお貸しいただいて、全身全霊で『糸桜』と向き合います。毎年、新たな花を咲かせる糸桜のように、新鮮な気持ちで素敵な花を咲かせたいです。10月、劇場でお会いできることを楽しみにしております。<公演情報>演劇ユニット「新派の子」錦秋公演 河竹黙阿弥没後百三十年『新編 糸桜』会場:日本橋公会堂10月12日(木) 14:00 / 18:3010月13日(金) 14:00脚本・演出:齋藤雅文出演:波乃久里子 尾上菊之丞 大和悠河只野操/村岡ミヨ、鴫原桂/石橋直也/下野戸亜弓、堅田喜三代社中/喜多村次郎、市村新吾/佐堂克実公式Twitter:
2023年06月01日松竹大谷図書館の第95回所蔵資料展示『黙阿弥尽くし!―河竹黙阿弥没後130年―』が、本日1月11日(水) から3月1日(水) まで開催される。江戸末期から明治期における近代への激動のなか、江戸歌舞伎を集大成した狂言作者・河竹黙阿弥。白浪物から活歴物、松羽目物まで、その生涯で約360もの作品を遺し「江戸演劇の大問屋」と評された黙阿弥の作品は、没後130年を迎えた現代に至るまで繰り返し上演され人気を博している。2023年最初の展示となる今回は、松竹大谷図書館所蔵資料の中から、歌舞伎上演台本やプログラム、舞台写真はもちろんのこと、演劇・映画化された黙阿弥作品、関連資料など、「黙阿弥尽くし」でその魅力を紹介。なお1月の歌舞伎座公演『壽 初春大歌舞伎』では黙阿弥の演目が上演されている。雑誌『歌舞伎新報』黙阿弥新作連載黙阿弥作品上演台本<開催情報>第95回所蔵資料展示『黙阿弥尽くし!―河竹黙阿弥没後130年―』展示期間:1月11日(水)~3月1日(水) 平日10:00~17:00※休館日:土日祝日、毎月最終木曜展示場所:松竹大谷図書館閲覧室※入館無料※現在、資料のご利用は前日までの予約制となっておりますが、展示は予約なしでご覧頂けます。※展示資料は、変更する場合がございます。公式HP::
2023年01月11日それぞれ全く画風の異なる、4作品。実はこれらは、どれも同じ人物が描いたものなんです!作者は、幕末明治に活躍し、「画鬼」と称された絵師・河鍋暁斎(かわなべきょうさい)。今、『画鬼・暁斎‐KYOSAI幕末明治のスター絵師と弟子コンドル』が東京・丸の内の三菱一号館美術館で開催中です。暁斎は、6歳で浮世絵師・歌川国芳(うたがわくによし)に入門し、9歳で狩野派に転じるなど正統派のキャリアを重ねながら、他の流派や画法も貪欲にとり入れて、ユーモラスで型破りな絵を描きました。そして展覧会名に名を連ねているジョサイア・コンドルとは、そんな暁斎の弟子である英国人建築家。元々日本美術愛好家だった彼は、明治10年にお雇い外国人として来日すると、暁斎に心酔。日常生活ではもちろん、旅先にまで付いて回り、また暁斎のいまわの際にもその手を握っていたなど、その師匠愛はただならぬもの。絵を学ぶとともに、師の作品を海外に広めることにも深く貢献しました。本展では、暁斎の作品約120点や、コンドルによる写生中の暁斎を描いたスケッチなどを、コンドルが復元を手がけた三菱一号館美術館で展示。暁斎のぶっとんだ作品はもちろん、師弟の共演にも注目あれ!◇コンドルの画技の上達を喜び、暁斎が1年ほどかけて制作し、進呈。弟子にこそ伝統的絵画を贈ろうという、師匠の心境が垣間見える。≪大和美人図屏風≫明治17-18(1884-85)年京都国立博物館寄託8月2日まで展示。◇書画会とは、今で言う展覧会。美術愛好家が料亭などで作品を見せあった。作品を見る人々をさらに見下ろすようなテーマも秀逸!≪書画展覧余興之図≫明治14(1881)年頃河鍋暁斎記念美術館蔵。◇新富座で上演された歌舞伎『漂流奇譚西洋劇』の前宣伝として掲げられた行灯絵(あんどんえ)。男女が洋服をまとう西洋画風の一枚。≪河竹黙阿弥『漂流奇譚西洋劇』パリス劇場表掛りの場≫明治12(1879)年GAS MUSEUM がす資料館蔵。◇猫又、狸、イタチ、モグラが集まり、何を祝ってか1本足で踊り狂う。言わずと知れた鳥獣戯画も、暁斎の手にかかればこの通り!≪鳥獣戯画猫又と狸≫画稿 明治期河鍋暁斎記念美術館蔵。◇information東京都千代田区丸の内2-6-2開催中~9月6日(日)10:00~18:00(金曜、8月31日~9月4日は~20:00、入館は閉館の30分前まで)月曜休(7月20日、8月31日は開館)TEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)一般¥1,500一部展示替えあり。※『anan』2015年7月8日号より。文・山田貴美子
2015年07月06日故井上ひさしが初めて大劇場での商業演劇に挑み、1983年に初演された『もとの黙阿弥浅草七軒町界隈』が、8月から東京・新橋演舞場で上演される。主演は、歌舞伎のみならず現代劇や映像でも大活躍の片岡愛之助。共演の貫地谷しほり、真飛聖、そして早乙女太一とともにコメントを寄せた。舞台『もとの黙阿弥』チケット情報舞台は、文明開化の明治20年の浅草。芝居小屋「大和座」に、男爵家の跡取りの隆次(愛之助)が書生の久松(早乙女)とともに西洋舞踊を習いにやって来る。豪商の令嬢・長崎屋お琴(貫地谷)も同じ目的で、女中のお繁(真飛)を伴って大和座へ。実は隆次とお琴との間には見合い話が進んでいるが、相手を知らぬまま、ふたりとも気が進まずにいた。そこでお琴はお繁と入れ替わることを企むが、なんと隆次も久松と入れ替わって見合いに臨んでいた。互いの正体を知らないままの出会いが、思いもよらない騒動に発展し……。「本当に本当に面白いホン(=戯曲)」と、井上戯曲初挑戦の愛之助。「河竹黙阿弥のパロディがいろいろ入っているので、黙阿弥作品をよくご覧になられている歌舞伎ファンには『あんな要素が入っている』という風に楽しんでもいただけますし、ご存知なくても、頭を使わず充分に楽しめる喜劇になっていて、そういうところの完成度の高さがすごい」。それを受けて「家でホンを読んでいるとき、面白くて声を出して笑ってしまった」という貫地谷は、この中では唯一の井上戯曲の経験者。「『泣き虫なまいき石川啄木』という作品の最終日で、『あ、こういうことだったのか』という発見があって。『もっとやりたかったなぁ』とすごく感じたのを覚えています」と、面白さの中に潜む奥深さを語った。一方、真飛は、「ただ、読んだだけで面白いホンのときって、だからこその不安というか(苦笑)。このメンバーだから大丈夫だろうという思いの方が大きいですけど、自分自身が和物や女性役であることに初心者すぎて、どうしようという気持ちはありますね」と期待と不安を語る。そしてセリフ量の多さにとまどいを見せる早乙女だが、「もし自分が出ていなかったら、客席で観たい舞台。それぞれジャンルの違うところでやってきた人たちがひとつの舞台に立って、いい意味での戦いやチャレンジをしているところが見どころだと思います」と、秘めた情熱をのぞかせた。初演、再演の木村光一に代わり、演出は栗山民也。初演で演出助手を務めていたという縁もある。『デスノートThe Musical』『アドルフに告ぐ」と意欲作続きの栗山による新装版が楽しみだ。公演は8月1日(土)から25日(火)まで。公演チケットの一般発売は6月25日(木)午前10時より。一般発売に先がけて現在インターネット先行を実施中、24日(水)午後11時59分まで受付。取材・文武田吏都
2015年06月23日市川海老蔵が紡ぐ和の世界「JAPAN THEATER」が10月11日、日本橋三井ホールにて開幕した。近年、自主公演「ABKAI」や企画公演「古典への誘い」など、様々な形で歌舞伎の普及に努める海老蔵が、歌舞伎だけでなく、能、落語など、より幅広く日本の伝統芸能の世界を紹介する新たな試みだ。その12日昼の公演を観た。冒頭、成田屋一門の市川新十郎が現れ、企画主旨と演目の解説をしたあと、角幸二郎(シテ)、谷本健吾(地謡)による仕舞『屋島』が上演された。仕舞とは、能の曲の一部を、能面や能装束を着けず袴姿で演じるもの。平家物語に描かれた屋島の合戦の様子を、源義経の霊が語るという、世阿弥の“修羅能”の名作だ。能ならではの、時空を超えて響くような声と緊張感あふれる動きが、私達を800年前に誘う。続いて、紋付袴姿の海老蔵が登場。『勧進帳』『実盛物語』『熊谷陣屋』『義経千本桜』など、『平家物語』をもとにする歌舞伎の演目が多いことを述べた上で、『嗣信最期』と『那須与一』の現代語訳を朗読。『那須与一』は、狂言をもとに作られた、新歌舞伎十八番『素襖落』においても、太郎冠者が語る。容姿が注目されがちな海老蔵だが、見台上の本を前に座って行った朗読では、真に迫る声の力でもって、源平の男達が身命を賭して戦に臨むその真情や美学をドラマティックに浮かび上がらせた。ここまでは、武士の物語が続いたが、次の古今亭文菊は落語『江戸噺』と称して、江戸の庶民の様子を生き生きと現出させる。演目は毎回違ったようだが、この回は『時そば』。文菊のとぼけた表情やそばのすすり方に笑いが起きた。さらに、市川男寅と市川福太郎が舞踊『藤娘』を披露。町娘に扮した藤の精を、若いふたりがフレッシュに踊った。そして、最後は河竹黙阿弥の『曽我綉侠御所染』をもとにした新作舞踊『男伊達花廓』。桜咲く仲ノ町の美しい情景の前で、海老蔵扮する主人公・御所五郎蔵が、恋人であり今は傾城となっている皐月からの手紙を受け取り、刀や傘を振り回して邪魔だてする者達に、尺八で応戦しながら、廓へ会いに行くまでを踊りで表現する。コンパクトなホールの中での、床机や傘を用いた立ち廻りは、迫力満点。広げた傘4本を組み合わせて成田屋の定紋である“三升”も形作られ、場を盛り上げた。この「JAPAN THEATER」で改めて感じるのは、日本文化の多様さ。ひと口に伝統芸能と言っても、影響関係はある一方、様式や雰囲気がまるで違う。観客は多彩な“和”に目を向け、その豊かな魅力を味わうことができる。公演は10月26日(日)まで。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2014年10月15日信州・まつもと大歌舞伎『天日坊(てんにちぼう)』が上演中の長野・松本市で、7月15日、中村勘九郎、中村七之助、中村獅童ら歌舞伎俳優と、演出の串田和美が市内から松本城まで人力車で練り歩く登城行列を行った。中村勘九郎チケット情報登城行列は「松本城市民ふれあい座」と題し、まつもと歌舞伎を盛り上げようと市民らが名乗りをあげ行われたイベント。この日、沿道には38,000人(主催発表)が集まり、市内の松本郵便局前から出発した俳優に、盛んに声援や拍手を送っていた。勘九郎らも市民からの熱烈な歓迎ぶりに満面の笑みを見せ、握手やサインにも気軽に応じていた。松本城本丸庭園内に設置された特設舞台前には5,000人の市民が詰めかけ、「おめでとう 六代目勘九郎襲名」のアドバルーンが上がると、壇上から勘九郎も「すごい」とびっくり。司会進行役の串田が「(六代目襲名後の)勘九郎さんではまつもと歌舞伎は初めてです」と紹介すると「串田さんに言われるまで気づきませんでした」と勘九郎はすっかり松本に馴染んだ様子で語った。七之助は「みなさまの温かさを身にしみて感じています。松本はみなさんが(自分達と)一緒に芝居をやっているという感じです、心からそう思っています」と挨拶。獅童は「歌ってもいいっすかー?」と会場を盛り上げるも「今日は止めときます」とトーンダウン。すかさず串田が「きっと千秋楽の舞台で歌うんだと思いますね」とフォローし笑いを誘っていた。信州・まつもと大歌舞伎は、2008年、2010年に続き今年で3回目。『天日坊』は、河竹黙阿弥が初期に書いたと言われる『五十三次天日坊』をもとに、人気脚本家の宮藤官九郎が渋谷・コクーン歌舞伎第十三弾に書き下ろした脚本での上演となる。ぴあの取材に応じたまつもと市民芸術館・芸術監督も務める串田は「観客や観客のいる街が一緒になって作る演劇がはっきり見えるのがすごい」と話す。また出演俳優が若いことや、宮藤の脚本目当てで「若い人たちがものすごく増えた」そうだ。串田は「歌舞伎の力って、古典だとかそういうのを超えて血の中にある芸能とかお祭りのようなもの。見た事がない人でも、知らない人でも騒ぎたくなっちゃう、知識と関係なく、ある敷居をとった時に突然自分たちのものになる。庶民が江戸時代に作った文化なんだなとここに来るとはっきりします」と力を込めて語った。公演は長野・まつもと市民芸術館主ホールにて7月18日(水)まで開催。
2012年07月17日歌舞伎俳優の・中村勘九郎、中村七之助、中村獅童が出演する「渋谷・コクーン歌舞伎第十三弾『天日坊(てんにちぼう)』」の公開稽古が6月14日、東京・渋谷Bunkamuraシアターコクーンで行われた。コクーン歌舞伎『天日坊』チケット情報本作は、河竹黙阿弥が1854年に書いた『天日坊』をもとに、人気脚本家の宮藤官九郎が新たに脚本を執筆。それを串田和美の演出・美術により、実に150年ぶりに現在の歌舞伎として上演するもの。物語はふとした野心から将軍・源頼朝の落胤になりすました法策=後の天日坊(勘九郎)を軸に展開。悪事を重ねながら鎌倉を目指す法策は、旅の途中で出会った盗賊・地雷太郎(獅童)とその妻・お六(七之助)から思いもよらぬ自分の運命を知ることになる。宮藤の書いたセリフには「マジかよ」などの現代語と黙阿弥の七五調が混在し、その状態をさらにセリフでつっこんだりと、飽きさせない工夫が随所にある。また黙阿弥お得意の因果話に加え、化け猫退治や東海道への旅など盛りだくさんの要素をわかりやすくまとめている。串田の美術は整ったものではなく、手作り感を生かしたようなセット。衣裳やかつらは今までの歌舞伎で見慣れたものとはひと味違うデザインで面白い。音楽は歌舞伎で使う下座音楽は使わず、全編トランペットとエレキギター、ベースを使用。トランペットの音色と法策の心情がシンクロするような場面もあり、従来の歌舞伎では見られない新しい演出効果になっていた。この日の稽古前には会見も行われ、勘九郎、七之助、獅童と串田が登壇。勘九郎は「父(勘三郎)が18年前にコクーン歌舞伎を始めた時は“勘九郎”でしたから、その名でここに立てることはプレッシャーもあり、誇りに思っています」と挨拶。弟の七之助も「うちの父が『面白い!出来てるじゃん』って言ってました」と父・勘三郎も驚いたことを明かした。これを受け串田も「稽古場でやけに笑う人がいるな~、誰だよ」と勘三郎が様子を見に来たときのエピソードを披露。また、獅童は「僕は盛り上げ役ですから」と謙遜しながらも「七之助さんと毎日一緒にご飯を食べて、恋愛や芝居の悩みを相談してます。人生ってのは楽しいですよ」と話し、場を和ませていた。東京公演は同所にて6月15日(金)から7月7日(土)まで上演される。その後、「信州・まつもと大歌舞伎『天日坊(てんにちぼう)』として長野・まつもと市民芸術館主ホールにて7月12日(木)から18日(水)まで開催。チケットはいずれも発売中。
2012年06月15日臨場感のある演出や新しい趣向を取り入れ、毎回話題となっている「コクーン歌舞伎」。これまでも本火、本水、泥沼を使う演出や、椎名林檎の音楽、いとうせいこうのラップといった、従来の歌舞伎にはなかった要素が演劇的興奮を高め、多くの観客に支持されてきた。第13弾となる今年、河竹黙阿弥原作の『天日坊』を、人気脚本家・演出家の宮藤官九郎の脚本で上演する。『天日坊』は黙阿弥の初期の作品で、ふとした野心から将軍・源頼朝の落胤になりすました天日坊が、東海道を下る途中、出会った盗賊夫婦によって思いもよらぬ自分の素性を知ることになるという話。化け猫退治や盗賊たちの活躍も描かれ、当時の世相ともマッチし大当たりをとった舞台。幕末に初演されてから実に約150年ぶりの上演となる。4月27日、制作発表会見が行われ、出演の中村勘九郎、中村獅童、中村七之助と、演出・美術の串田和美、宮藤が登壇した。天日坊を演じる勘九郎は「初演からコクーン歌舞伎を支え、闘ってくれている串田監督、そして宮藤さんとご一緒出来るのは凄く嬉しいです。本当に賛否両論、大嵐の作品になると思いますが、それを楽しんでやりたいと思います」と挨拶。もうひとりの“カンクロウ”である宮藤は「今日は“カンクロウさん”と言われても、あっ俺じゃないなと思い、不思議な感じです」と場を和ませ、続けて「今回は150年位演じられていない歌舞伎が原作なので、これはいいなと。駄目だったら(原作の)黙阿弥のせいにできるなと(笑)。良いところは『そこ、僕変えたんです!』と言えるし」と相変わらずの宮藤節で笑いを誘った。コクーン歌舞伎に9年ぶりの参加となる獅童は「(今までは)現場で叱ってくれた勘三郎さんがいらっしゃいませんが、僕らの世代で引っ張って行かなくてはいけない。なんとしても面白くしたいと思います」と意気込みを語った。宮藤が初監督した映画『真夜中の弥次さん喜多さん』に出演経験のある七之助は「16歳で初めてコクーン歌舞伎に出させていただいた時に、手取り足取り教えてくださった串田さんと、映画でずっと一緒だった宮藤さん、ふたりの育ての親に囲まれてとても楽しみです」と話していた。「渋谷・コクーン歌舞伎第十三弾『天日坊(てんにちぼう)』」は6月15日(金)から7月7日(土)東京・シアターコクーンにて開催。チケットは発売中。また、「信州・まつもと大歌舞伎『天日坊(てんにちぼう)』は7月12日(木)から18日(水)まで長野・まつもと市民芸術館主ホールにて上演される。チケットは5月5日(土・祝)より一般発売開始。
2012年05月01日東京・渋谷の劇場、シアターコクーンで1994年からほぼ毎年開催されている『コクーン歌舞伎』。第13弾となる今年は、幕末に初演されて以来、実に145年ぶりとなる河竹黙阿弥原作の『天日坊』を上演する。脚本は人気脚本家の宮藤官九郎が担当。襲名後、初の『コクーン歌舞伎』に出演する中村勘九郎が、4月某日、都内でインタビューに応えた。渋谷・コクーン歌舞伎第十三弾「天日坊(てんにちぼう)」チケット情報物語はふとした野心から将軍頼朝の落胤になりすました法策(後に天日坊)を軸に展開する。悪事を重ねながら鎌倉を目指す旅の途中で、盗賊地雷太郎とその妻お六と出会い、思いもよらぬ自分の運命を知った法策。天下を狙い、若者たちが壮大な野望と純粋な希いを胸に疾駆する様を描いたもの。黙阿弥の処女作と言われている作品。勘九郎はタイトルロールの天日坊を演じる。宮藤の書いた脚本を読んだ勘九郎は「凄いですよ」と一言。「原作も面白いですけど、長いんでね。そこを宮藤さんが上手くまとめて、さらに宮藤さんの息吹満載になっています」。宮藤の脚本といえば、絶妙なセンスのセリフ回しも持ち味。「黙阿弥の精神や言葉のチョイス、勢いがプラスアルファされていて、かっこいいですよ、むちゃくちゃだけど(笑)。セリフも『マジかよ』とか出てきます。黙阿弥の魂を宮藤さんが『こういうことなんじゃねぇの?』って見せてくれた感じです」。勘九郎は勘太郎時代に宮藤が初めて歌舞伎の脚本を手がけた『大江戸りびんぐでっど』(2009年12月・歌舞伎座)にも出演しているが、『天日坊』は「もっとぶっ飛んでいる」そうだ。台本を読んだ父・勘三郎の「大変そうだね。大丈夫なの?」という感想を聞いて「うちの父が不安がるほどなのでこれは面白いぞ」と確信したそう。「賛否両論の嵐になると思います。でも僕は、これが歌舞伎かって問われても歌舞伎だって言いますよ。黙阿弥が生きていた時代はこれを“現代劇”として親しんでいた。七五調だって、日本人のリズムに合ったセリフをどうやったらかっこよくしゃべれるかを、黙阿弥も考えてこうなったんだと思います」。黙阿弥と宮藤は、生きている時代が違うだけで作家としての精神は同じ。だから固定観念に「囚われちゃいけない」と話す。とはいえ、演じる側にとってのハードルも高そうだ。「この台本をどう表現するか、感覚を研ぎ澄まして稽古をしないと」。『天日坊』のキャストは、勘九郎のほか、中村獅童、中村七之助ら次代の核となる若手歌舞伎俳優と、演出家で俳優の白井晃や大人計画の近藤公園といったジャンルを超えた個性豊かな俳優たちが揃う。観客の反応も気になるところだが、勘九郎は「喜んでいる顔や困惑している顔が見たい」と話す。「最近は何も考えずに観る人も多いと思います。考えなくてもいい芝居も多い。でも、悩んで観たほうが絶対面白いと思いますよ。よく判らなかったけど、何で涙が出るんだろうとか」。ふたりの“カンクロウ”がタッグを組み“みたことない歌舞伎”に挑戦する『コクーン歌舞伎』に期待したい。公演は6月15日(金)から7月7日(土)シアターコクーンで開催。チケットは4月22日(日)より発売開始。
2012年04月20日