互いに手の内を知り尽くした、飾らない深い信頼で結ばれた指揮者とオーケストラならではの息づかいを堪能したい。
ちょっとユニークなプログラムを組んだのがダン・エッティンガー指揮の東京フィルハーモニー交響楽団。「第九」とともに演奏する伊福部昭《SF交響ファンタジー第1番》は、あの「ゴジラ」を含む、特撮映画音楽からの演奏会用オーケストラ曲だ。「第九」と「ゴジラ」を一緒に聴けるのはおそらく日本だけ!
来日オーケストラでは佐渡裕指揮のケルン放送交響楽団に注目。東京・大阪で計10公演を行なうが、独唱者や東京オペラシンガーズと晋友会合唱団による総勢110人の合唱団も含めて全公演を同じメンバーで演奏する。集中力が研ぎ澄まされる本番を重ねる中で、日本の「第九」演奏史上でも稀なハートの通い合ったアンサンブルが生まれるのでは。2015年9月からウィーン(と近郊のザンクト・ペルテン)を本拠とするトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任する佐渡裕にとっても、今後いっそう関係が深まるであろうベートーヴェンとの新しいページをめくる機会になるはずだ。今年もよりどりみどりの「第九」。
身はひとつで全部聴くことができないのが悩ましい。
文:宮本明
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