くらし情報『説得力ある歌声で人間を描く日本版『タイタニック』』

2015年3月17日 11:00

説得力ある歌声で人間を描く日本版『タイタニック』

また、客席通路を俳優たちが行き来するため、まるで劇場全体が巨大な客船の甲板、または船室の一部のようにも思え、自分も乗客のひとりのような気持ちで物語に入りこむことができた。

登場人物は全62役なのだがキャストは総勢22名で、各自が早替わりで何役も演じ分けることになっている。そのキャスト陣には日本ミュージカル界が誇る実力派が勢ぞろい。タイタニックの設計士・アンドリュース役に加藤和樹が扮するほか、鈴木綜馬、藤岡正明、戸井勝海、津田英佑、栗原英雄、シルビア・グラブ、未来優希、安寿ミラ、佐山陽規、光枝明彦、さらには古川雄大、入野自由ら若手有望株も多数参加。トム・サザーランド本人がオーディションで選んだ面々ということもあって、歌の実力は折り紙付きだ。全員で歌うナンバーの重厚さ、表現力には何度も胸を熱くさせられた。

乗客や船員たちの人間関係が丁寧に描かれる第一幕、そして船が氷山に衝突してからの人々の姿を追う第二幕。そのストーリー、彼らの運命はおそらく誰もが知っている展開になるわけだが、俳優たちの説得力ある歌声と演技、シンプルだが人間の本質を徹底して突いた演出力に、ひたすら圧倒されっぱなしの約2時間半だった。

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