仲村と小池はその世界に違和感なく溶け込んでいた。
KERAが『グッド・バイ』の舞台化を思いついたのは、「小説で描かれているのは、これから愛人一人ひとりと別れていくという冒頭の部分のみ。これはまさに秀逸なシチュエーション・コメディの設定だと思った」からだという。実際この小説には、退廃的な匂いのするそれまでの作品とは異なり、ユーモラスな描写も多い。「『人間失格』のあとでこんな軽やかな作品を書き、途中でやめて死んだという不可解さも、書いていくうちに深く追求したくなるかもしれませんけど、とにかく今回は、このお膳立ての上で、スピード感ある軽いコメディをやりたいと思っているんです」。
そのコメディの真ん中に立つ仲村は、女たちに振り回されることになる。「KERAさんが僕のなかに、愚かで、振り回されるという部分を見ているんだと思いますが(笑)。今回も、僕という素材の新しい使い方を発見してもらえたらいいなと思っています」。
そして、振り回す女を演じる小池。「キヌ子っていう名前がまずいいし(笑)、本音をズバッと言える面白い女なんです。きっとみんな舞台上でのたうち回ることになると思うので、面白おかしく見ていただければ」。