現在上演中の舞台『室温~夜の音楽~』において、初日公演を鑑賞した。ケラリーノ・サンドロヴィッチが2001年に作・演出したホラーコメディで、翌年に鶴屋南北戯曲賞を獲得した本作。河原雅彦が演出を手がける今回の上演版では古川雄輝が主演を務め、在日ファンクが音楽・演奏で参加する。キャストには平野綾、坪倉由幸、浜野謙太、長井短、堀部圭亮、伊藤ヨタロウ、ジェントル久保田が名を連ねた。ホラー作家の海老沢十三(堀部)と娘のキオリ(平野)父娘は田舎暮らし。12年前、拉致・監禁の末、集団暴行を受け殺害されたキオリの双子の妹・サオリの命日に、近所を巡回中の警察官・下平(坪倉)、海老沢の熱心なファンを自称する赤井(長井)、体の不調を訴えるタクシー運転手の木村(浜野)が転がり込む。そこへ出所した加害者の一人である間宮(古川)が「焼香をしたい」と訪ねて来たことから、事態は思わぬ方向へ発展して──。妹を「この世から葬った」と激昂するキオリに萎縮したかと思えば、初対面でない赤井には声を荒げるなど、相手によって言動を大きく変える間宮。演じる古川は向き合う相手の一挙手一投足をニュートラルに受けて応戦する巧みさを発揮した。被害者の家族や周囲の人々に対して強く出られないという立場上、感情を剥き出しにするシーンは少ないが、表情や間といった台本上セリフに起こされない“オフ芝居”に注目したい。キオリを演じる平野も、単なる被害者の姉にとどまらない存在感を見せつける。キオリは何かと海老沢家に立ち寄る下平に金銭を求め、「東京へ行く」と嘘をついて母親に会うなどひと筋縄ではいかないキャラクター。間宮を冷たくあしらう声色、媚態の一歩手前で下平を籠絡する視線など出色の表現力で劇世界に貢献していた。なお持ち前の歌声はカーテンコールで耳にすることができるだろう。事前の取材会で河原が言及したように、サオリの死は東京・埼玉で発生した実在の「女子高生コンクリート詰め殺人事件」(1988~89年)がモチーフとなっている。事件の痛ましい描写をはじめ、得体の知れないキャラクターが生み出す薄気味悪さ・違和感が全編に潜む一方で、時折挟まれる在日ファンクの生演奏パフォーマンスが作品にサイケデリックな“陽”の雰囲気を持ち込む。グルーヴ感に満ちた彼らの既存曲や本作に書き下ろしたナンバーが不条理な空気をいかに転化させるか──。バンドと役人物を行き交い、劇中でコミックリリーフ的な役割を果たす浜野の躍動にも注目だ。上演時間は約155分(20分休憩を含む2幕)。公演は7月10日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアターにて。その後、7月22日(金)~24日(日)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールと巡演する。チケット販売中。取材・文=岡山朋代
2022年06月27日2001年に初演されたケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)作の舞台『室温~夜の音楽~』は、12年前に起きた殺人事件を軸に物語が展開され、次第に過去の真相が明らかにされていくホラー・コメディ。初演時、作品のダークでどこか浮遊感漂うムードを牽引していたのが、たまの楽曲と生演奏。今回の上演にあたり、音楽の刷新を決めた演出の河原雅彦さんが白羽の矢を立てたのが在日ファンクだった。「最初はもちろん尻込みしました。でも初演時の台本を読ませていただいたら、物語が歌の世界観と一体になって進行していく構成にものすごくそそられたんです。僕らとたまさんとではスタイルが全然違うというのもあったし。なにより、河原さんが一緒にやりたいと言ってきてくださったことが、ワクワクと同時にすごく嬉しかったんですよね」浜野謙太さんはにこやかに話した後、真面目な表情になり「メンバーのモチベーションを大事にしているから…」と続けた。「バンドが作品の賑やかしのためのコンテンツとして弄ばれる…みたいなことがあんまり好きじゃないんです。でも今回、河原さんは本当に在日ファンクを気に入ってくださっていたし、音楽全体に対する深い愛も感じて、メンバーを説得しました」当初は既存曲を使用したいとの依頼だったが、なんと今作のために新曲を多数書き下ろしている。「マネージャーが促してくれたんです(笑)。メンバーにも振って個々に作り始めたんですが、自然と普段にはない目的意識で違うアプローチになるわけじゃないですか。それがすごく作曲のバリエーションにつながったし、作品の世界観から掻き立てられるものもありました。僕の曲だけじゃなく、いつもアーバンなかっこいい曲を作ってくるギターの仰木(亮彦)の曲も、この作品に当てはめると、不思議と不気味に感じられたのも新感覚でしたね」物語が展開されるのは、12年前に殺害された少女の双子の姉と父である作家が暮らす家。そこに集まってきたバラバラな人々が絡み合い、かつての事件の真相が明らかにされていく。俳優としても出演する浜野さんの役は、タクシー運転手・木村。「じつは学生のときにKERAさんのホンを上演させてもらったことがあって、変なテンポで進んでいく会話とか、そのズレで笑いが起きる感じがすごく好きだったんです。僕は音楽をやっているからか、KERAさんのテンポってたぶんこうだろうなって思って木村を演じちゃうんですが、河原さんは、この場面のズレの面白さはなぜ起こるのか、というところから木村の性格を導き出してリズムに反映する…みたいな本当に細かい部分から“逆”逆算しながら作っていく感じが面白いですね」コメディリリーフ的な役割も担う。「場を乱していく奴なんで、バンドでの僕の立ち位置とあまり変わらない」と笑いを交えて語るが、後々とんでもないことを引き起こす人物だ。「やればやるほど懐がすごく深くて、すごいホンだなと思うことがいっぱいあるんです。ホラーかサスペンスか、コメディか…と油断していると胸を掴まれる部分があったりするので、油断して観に来てほしいですね」『室温~夜の音楽~』12年前、集団暴行を受け殺害されたサオリ。彼女の十三回忌、父であるホラー作家の海老沢(堀部)とサオリの双子の姉・キオリ(平野)の暮らす家に、加害少年のひとり、間宮(古川)が訪ねてくる。6月25日(土)~7月10日(日)三軒茶屋・世田谷パブリックシアター作/ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出/河原雅彦音楽・演奏/在日ファンク出演/古川雄輝、平野綾、坪倉由幸(我が家)、浜野謙太、長井短、堀部圭亮ほかS席9500円A席7500円サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337(平日12:00~15:00)兵庫公演あり。はまの・けんた1981年8月5日生まれ、神奈川県出身。在日ファンクのボーカル兼リーダーで、俳優としても活躍。最近の出演作に映画『劇場版ラジエーションハウス』など。Tシャツ¥19,800パンツ¥44,000(共に71MICHAELcontact@71michael.jp)※『anan』2022年6月29日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・森川雅代(1994)ヘア&メイク・阿部孝介(traffic)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年06月26日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)が2001年に作・演出を手がけた戯曲『室温~夜の音楽~』。新演出版で21年ぶりに復活を果たす同作が6月25日、東京・世田谷パブリックシアターで開幕するにあたり、演出の河原雅彦、主演する古川雄輝、共演者の平野綾、音楽と演奏でも参加する浜野謙太が取材に応じ、意気込みを語った。12年前に起こった凄惨な殺人事件をきっかけに、ひとつの場所に集まってきた人々の奇妙な関係を描き、第五回鶴屋南北戯曲賞を受賞した本作。河原は21年前の初演を観劇していたといい「それ以来、ずっと頭の片隅に残っていた」と強い思い入れ。“湿度”と“見えない部分”をコンセプトにした異色の美術セットについては、「もちろん、すべての打ち合わせに立ち会ってはいるんですが、実際に劇場で見てみると『うわ~』って、ちょっと引きましたね(笑)。すごく個性的なオリジナリティあふれる舞台になるんじゃないかと思っています」と期待を寄せた。殺人事件に関わる人物・間宮を演じる古川にとっては、2019年の『神の子どもたちはみな踊る』以来約3年ぶりの舞台主演。「久しぶりに見る舞台と客席に、ワクワク感と緊張感を覚えます」と心境を語り、「ホラーコメディというジャンルなので、怖さと思わずクスっと笑ってしまう面白さを劇場で楽しんでいただければ」とアピール。「接する相手によって、性格やテイストが変わる役柄なので、セリフはもちろん、周りにいる皆さんへのリアクションや細かな動作を気にしながら演じたい」と語った。平野は久々のストレートプレイ出演で「お稽古中から新鮮な気持ちで取り組むことができた」と手応え。発声にも注意を払っているといい「ミュージカルとは、使う(喉の)ポジションも変わりますし、今回は特に感情のふり幅が大きい役柄。舞台が終わる頃には、声もガラガラですが、やれることを全力でやろうと思っている」と抱負を明かした。浜野は俳優としての出演に加えて、自身が所属する「在日ファンク」として劇中音楽を手がけ、全公演でバンドとともに生パフォーマンスも披露する活躍ぶり。それだけに「こっちにも出て、あっちにも出て(笑)。『また、あいつ出てるよ』って、うざくならないよう塩梅を考えたい。登場シーンからして、うざいので」と苦笑い。在日ファンクの起用は、河原のたっての希望だったそうで「引き受けてもらえなければ、今回の『室温』はできなかった」(河原)。在日ファンクのパフォーマンスについて、古川は「好きな曲が流れると、思わずノリたくなるが、そういうシーンに限って、じっとしていないといけなくて(笑)。たまに、チラ見しています」。平野も「とにかく贅沢ですよね。新しいジャンルが生まれる瞬間に立ち会えて、とてもうれしい」と声を弾ませていた。取材・文・写真=内田涼<公演情報>舞台『室温~夜の音楽~』『室温~夜の音楽~』メインビジュアル作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出:河原雅彦音楽・演奏:在日ファンク出演:古川雄輝 / 平野綾 / 坪倉由幸 / 浜野謙太 / 長井短 / 堀部圭亮・伊藤ヨタロウ / ジェントル久保田【東京公演】2022年6月25日(土) ~2022年7月10日(日)全19回公演会場:世田谷パブリックシアター【兵庫公演】2022年7月22日(金) ~2022年7月24日(日)全4回公演会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール公式HP:
2022年06月24日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が作演出を手がけた『室温~夜の音楽~』を21年ぶりに上演。河原雅彦が演出を担う。そこで河原と共に、音楽と出演を兼ねる在日ファンクの浜野謙太、主演の古川雄輝が出席した取材会に参加。その模様をレポートする。KERA作品を手がける上で、真っ先に浮かんだのがこの『室温』だったと言う河原。「僕はとても音楽が好きで、この『室温』は副題にもあるように音楽と共にある作品。で、前作の“たま”の音楽の土着感から考えてファンクだ…“在日ファンク”だ!って(笑)。実際すごくハマっていますし、いい芝居を作らないと音楽に持ってかれちゃうなってくらい、ハマっていると思います(笑)」だが当のバンドメンバーは、本作への参加に当初懐疑的だったと浜野は言う。「ただ河原さんと本当に一から組み立てさせてもらったので、今ではある意味、共犯みたいな気持ちが強いです。何曲か書き下ろしもあって、ライブだけでは表現出来なかったことが、今引き出されている感じ。バンドとしても新しい一歩を踏み出させてもらって、とても感謝しています」双子の妹を拉致・監禁、集団暴行された上に殺された、キオリとその父。妹の命日、親子の家にはさまざまな人々が訪れて――。浜野演じる木村と古川演じる間宮も“さまざまな人々”のひとりだが、その役どころの説明は難しく、古川自身「稽古が進むにつれ、今まで思っていた人物像とはちょっと違ってきていて…。どういう役かと聞かれても、なかなか難しくて答えられないんです」と顔を曇らせる。そんな不安げな古川に河原から、「でも素敵ですよ」とひと言。さらに「わからないことをわからないという俳優は、とても誠実だと思います」との言葉に、浜野も「わからない時のポカーンって顔が、僕にとってはまさに間宮。だからもう出来てるじゃんって思います」と笑う。すると古川も、「役としっかり向き合えるのは舞台ならでは。そういう意味でいい時間を過ごせているなと思います」と語る顔は、少し明るくなったように見えた。最後に河原は、作品の魅力について改めてこう語る。「僕が好きなのは、いろんな感情を持って帰れる多面的な作品。KERAさんはそういうものを書ける作家さんで、この『室温』もどこまでも真っ黒で、どこまでも真っ白な作品なんですよね。ただそのホンを預かる以上、初演にはない面白さを出せなければ、やっぱり僕らの負け。だから勝てるように頑張ります!」取材・文:野上瑠美子
2022年06月10日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の新作は、KERA自身愛してやまない昭和を生きた喜劇人たちの物語。昭和30年代初頭の新宿を舞台に、総勢17名のキャストが入り乱れる群像劇だ。そこで演出も担うKERAと、KERA作品への出演は3作目となる瀬戸康史、初めての千葉雄大に、現段階での本作にかける想いを語ってもらった。笑いがなければ演劇も続けてこられなかった――昭和の喜劇人に対するKERAさんの想いはこれまでも度々お聞きしてきましたが、改めてKERAさんが喜劇人たちに心惹かれる理由とは?KERA自分がコメディを作り続けてきたそもそものきっかけが、そういう人たちへの興味だったと思うんです。やっぱり笑いが好きだし、笑いにたくさん救われてきたし、笑いがなかったらここまで演劇も続けてこられなかったと思うので。あとは父親の関係で、幼少期に喜劇人たちが偶然周りにいたってことも大きいと思いますね。――昭和30年代初頭の喜劇人たちの群像劇とのことですが、現段階での構想は?KERA当初は『ドクター・ホフマンのサナトリウム〜カフカ第4の長編〜』(19年) のような、理屈では説明出来ない、不条理な作品にしようかと考えていたんです。1幕は人間ドラマで、2幕にかけて思いもよらない展開をしていく、みたいな。でもそれはちょっと欲張り過ぎかなと。20人近い登場人物をそれぞれ着地させようと思ったら、5時間半ぐらいはかかってしまう(笑)。だから人間を描くってところだけにとどまっていても、書いていてある意味弾んでしまうところはあるだろうし、自分では普通の人間ドラマを書いているつもりでも、そうではないものになるに違いない(笑)。だったらそれでいいのかな、と思っているんです。笑いってものの表現の幅がすごく広がっている――瀬戸さんがKERAさん作品に参加されるのは、『陥没』(17年) 、『ドクター・ホフマン~』に続いて3作目ですね。瀬戸ほかの現場と比べても、KERAさんとは“一緒に作っている感”が強いんです。KERAそれは嬉しいな。瀬戸あと僕はKERAさんに感謝しかなくて。僕自身知らない扉を開けてくださいましたし、KERAさんのおかげで僕に対する周りの見方が変わったと思っていて。だからまたこうやって一緒に作品を作れるってことが、ただただ嬉しいです。――千葉さんはKERAさん作品への参加は初ですが、上京後に初めて観た舞台が、KERAさん演出の『どん底』(08年) だったそうですね。千葉はい。今回この中に入れていただけるってことが、まずは本当に嬉しかったです。それと物語の舞台が昭和30年代ということで、知らないことを知れる機会をいただけたってこともありがたいなと。あと以前から「KERAさんの頭の中ってどうなっているんだろう?」と気になっていたので、KERAさんの手によって自分がどうなっていくのか。それも今から楽しみです。――お稽古はこれからとのことですが、瀬戸さん、千葉さんはすでに2度、KERAさんのワークショップを受けられたと伺いました。KERA昭和に最も縁遠いであろう瀬戸くんと千葉くん、あと(伊藤)沙莉ちゃんと勝地(涼)くんに、ちょっと昭和30年代を勉強してもらいたいなと思って。岸田國士の『かんしゃく玉』を読んだり、過去の映像を見たりしました。主眼はやっぱり、稽古が始まった時点でその時代の人になってもらうこと。ただ昭和を知っているほかのキャストに比べて、どうしてもスタートが遅くなってしまう分、焦りもあると思うんです。そのために少し心に余裕を持ってもらう、そのためのワークショップですね。瀬戸まずはみんなで集まってなにかをやる、っていう時間がとても楽しかったです。稽古を前に、さらにワクワクした気持ちになったというか。あと改めて、笑いって進化しているんだなと感じました。例えば海外の、ニール・サイモンのジョークとかを聞いても、「これはジョークなのか?」とわからなかったりするんですが、時代は違えども、そこは同じ日本人なのでやっぱりわかる。ただレパートリーが増えているというか、笑いってものの表現の幅がすごく広がっているんだなと。それは非常に面白いなと思いました。千葉拝見した映像の中には、喜劇人の方たちのドキュメンタリーなどもありました。舞台上ではこんなに面白いことをやっているのに、プライベートでは実はこんな壮絶なことがあって……みたいなことも初めて知れて。そのギャップというか、一筋縄ではいかないみたいな部分は、自分が演じる上でも意識していきたいなと思っています。瀬戸と千葉がまったく性格の異なる兄弟役に――おふたりの役どころのイメージは?KERAまだ全然決まっていないです。ほかのパズルを組み立てていく中でのバランスなので。ただ瀬戸くんと千葉くんは、9割方兄弟にしようと思っています。見た目が似ているふたりなので、いっそのこと兄弟っていうのも面白いかなと。しかもまったく性格の違う兄弟。もともとは瀬戸くんが兄貴かなと思っていたんですが、千葉くんが兄貴っていう線も面白いかもしれないですね。瀬戸・千葉(笑)。瀬戸千葉くんとは同い年で、顔も似ていると言われて、10年前ぐらいからお互い知ってはいました。当時はすごくキャピキャピした印象でしたが(笑)、数年前に映画で久しぶりに会った時、すごく芯が太くなった印象に変わっていて。ただガッツリお芝居をするのは、今回が初めて。千葉くんがなにを隠し持っているのか、すごくワクワクした気持ちです。千葉別になにも隠し持ってはいませんが……(笑)。僕も瀬戸さんとガッツリお芝居出来ることがすごく楽しみですし、KERAさんの舞台の先輩でもあるので、いろいろ見て、学ばせてもらいたいなと思っています。取材・文=野上瑠美子撮影=源賀津己スタイリスト=小林洋治郎(Yolken)(瀬戸康史)、寒河江健(千葉雄大)ヘアメイク=RYO(瀬戸康史)、堤 紗也香(千葉雄大)、山本絵里子(KERA)衣裳(瀬戸康史)ジャケット:¥35,200(UNDECORATED/UNDECORATED)パンツ:¥36,300(UNDECORATED/UNDECORATED)シャツ:¥30,800(SEVEN BY SEVEN/Sakas PR)【問合せ先】UNDECORATED〒153-0061東京都目黒区中目黒1-8-1 VORT中目黒1 2FTEL:03-3794-4037Sakas PR東京都渋谷区神宮前3-15-21 ヒルトップ原宿301TEL:03-6447-2762『世界は笑う』チケット情報:★6月19日(日) 10:00よりチケット一般発売開始
2022年06月10日ケラリーノ・サンドロヴィッチによる傑作ホラー・コメディ舞台『室温~夜の音楽~』が2022年6月25日(土)から世田谷パブリックシアターで上演される。田舎で二人暮らしをしているホラー作家の海老沢十三(堀部圭亮)と娘・キオリ(平野綾)。12年前、拉致・監禁の末、集団暴行を受け殺害されたキオリの双子の妹・サオリの命日の日に、さまざまな人々が海老沢家に集まってくる。巡回中の警察官下平(坪倉由幸)、海老沢のファンだという女・赤井(長井短)、タクシー運転手の木村(浜野謙太)、そして加害者の少年の一人である間宮(古川雄輝)......。死者と生者、虚構と現実、善と悪との境が曖昧になっていき、やがて過去の真相が浮かび上がってーー。今回、主演する古川雄輝は、およそ3年ぶりの舞台で「楽しみな気持ちでいっぱい」と気持ちを明かす。「映像作品ではなかなか演技指導を受けるような時間が取れませんが、演劇はしっかりと稽古がある。壁にもぶち当たるんですが、何かひとつでも成長できたら」と貪欲な姿勢を崩さない。KERAらしいホラー・コメディ作品。古川は「まさに映像よりも舞台で観たいホラー・コメディ作品ですよね。初めて舞台を観る人は『笑っていいのかな?』と困るかもしれませんが(笑)、誰かがクスッと笑ってくれたら、周りも笑っていいんだと思ってもらえる気がします。日に日に笑ってもらえるポイントが変わりそう」。ちなみに古川自身は「引き出しが多くないとコメディは難しいし、ホラーもそんなに経験があるわけではないので、どちらも慣れたものではないです」と話していた。2010年に開催された新人発掘オーディション「キャンパスター★H50withメンズノンノ」で審査員特別賞を受賞し、芸能界デビューした古川。帰国子女ということで英語が得意で、中国版ツイッターWeiboでは450万人以上のフォロワーがいる“海外派”でもある。だが、今後やってみたい仕事を尋ねると「やりたいことは叶ってきたので、今は具体的にない」。ちなみに新人の頃から憧れは佐々木蔵之介。「ずっとお名前を出してきたので、なんだか申し訳ないのですが。蔵之介さんは、頭が良くて、テクニックがあって、引き出しが多い。人柄も優しく、憧れです」。舞台を楽しみにしている観客へのメッセージを尋ねると、「ホラーとコメディが融合した作品で、見終わった後にすごく不思議な感覚になると思いますので、まずはそれを楽しみにしていただきたい。個人的には久々の舞台。キャストの皆さん、スタッフの皆さんと一緒に一生懸命稽古をしていきますので、ぜひ劇場に来ていただきたいと思います」取材・文:五月女菜穂
2022年05月11日劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が、5年ぶりにBunkamuraシアターコクーンで新作公演「世界は笑う」を上演することが決定。KERAとの3度目のタッグとなる瀬戸康史、2度目となる松雪泰子、KERA作品初出演となる千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉らが出演する。舞台は、昭和30年代初頭の東京・新宿。敗戦から10年強の月日が流れ、巷に「もはや戦後ではない」というフレーズが飛び交い、“太陽族”と呼ばれる若者の出現など解放感に活気づく人々の一方で、戦争の傷跡から立ち上がれぬ人間がそこかしこに蠢く…。そんな殺伐と喧騒を背景にKERAが描くのは、笑いに取り憑かれた人々の決して喜劇とは言い切れない人間ドラマ。戦前から舞台や映画で人気を博しながらも、時代の流れによる世相の変化と自身の衰え、そして若手の台頭に、内心不安を抱えるベテラン喜劇俳優たち。新しい笑いを求めながらもままならぬ若手コメディアンたちなど、混沌とした時代を生きる喜劇人と、彼らを取り巻く人々が、高度経済成長前夜の新宿という街で織りなす、哀しくて可笑しい群像劇。出演は瀬戸さん、千葉さん、勝地さん、伊藤さん、大倉孝二、緒川たまき、山内圭哉、マギー、伊勢志摩、廣川三憲、神谷圭介、犬山イヌコ、温水洋一、山西惇、ラサール石井、銀粉蝶、松雪さんと、勢いのある若手から存在感が際立つベテランまで多彩な実力派キャストが集結。初参加に向け、伊藤さんは「KERAさんの舞台は過去いくつも観劇させて頂いていてオーディションも受けたことがあります。やっと立てるんだ。と、喜びに溢れる中、それに勝る緊張でソワソワしています」と喜びをコメント、「自分にとって、KERAさんの舞台演出を受けるのが、長年の夢だった」と勝地さんも明かす。千葉さんは「世の中で起きている事と自分の足並みが揃わない感覚は僕も感じることがあり、その時代ならではのものではありますが、令和にも通じる部分はあるのかなと思います」と期待を込めて語っている。2009年より昭和の東京をモチーフに発表してきた「昭和三部作」シリーズをはじめ、日頃から“昭和”という時代への深い愛着を公言するKERAが、“昭和の喜劇人”を作品の題材とするのは今回が初めて。その挑戦に期待が高まる。作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチコメント日本の喜劇人たちを描きたいというのは、十年どころではない、二十年以上前から切望していたことだ。もちろん例外はあろうが、かつて、昭和のあの頃、笑いを生業にしていた人なんてのは、皆どこか常軌を逸していた。などと知ったようなことを言うのは、私がそうした人たちに囲まれて幼少期を過ごしたからだ。ジャズマンだった私の父親には、同じヤクザな稼業だったからだろうか、喜劇俳優の知人友人が沢山いた。テレビの中では愉快な面白いオジちゃんオバちゃんだったその人たちは、例えば私の父と雀卓を囲んでいる時、どこか普通じゃなかった。怖かった。そして、時たま、ホッとさせてくれるかのように可笑しかった。評伝劇ではないし、実在の人物は出てこない予定だが、半分はフィクションになるかと思う。普通じゃなくて、怖くて、可笑しな人たちと、彼らを取り巻く人々を巡る群像悲喜劇。全員がメインキャスト、みたいなキャストが集まってくれました。ご期待あれ。ケラリーノ・サンドロヴィッチCOCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022「世界は笑う」【東京公演】は8月7日(日)~8月28日(日)全26回Bunkamuraシアターコクーンにて、【京都公演】9月3日(土)~9月6日(火)京都劇場にて上演。(text:cinemacafe.net)
2022年04月04日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)作、河原雅彦演出、古川雄輝主演による舞台『室温~夜の音楽~』が、6月25日(土)より7月10日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて、7月22日(金)より24日(日)まで兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて上演される。演劇界の第一線を走り続けるKERAが2001年に作・演出を手がけた舞台『室温~夜の音楽~』は、人間が潜在的に秘めたる善と悪、正気と狂気といった、相反する感情に恐怖と笑いを織り込んだ唯一無二のホラー・コメディとして絶賛され、第五回鶴屋南北戯曲賞を受賞した。2021年に『カメレオンズ・リップ』で初めてKERA作品を手掛け、KERAからの厚い信頼を受ける河原が、この戯曲にほれ込み上演を熱望したことで、記録にも記憶にも残る傑作戯曲が誕生から21年ぶりに復活することになった。主演を務めるのは、映像を中心に数多くの作品に出演し、クールな役から人外(?)なキャラクターまで硬軟問わず幅広い役を演じ分け、2019年の『神の子どもたちはみな踊る』以来約3年ぶりの舞台主演となる古川雄輝。舞台作品にも定期的に出演し、本作ではKERA作品、河原演出と初顔合わせでホラー・コメディという異色なジャンルの作品に挑む。共演は、声優として絶大な人気を誇り、舞台女優としても活躍する平野綾、人気お笑いトリオ我が家の大ボケ担当・坪倉由幸、ミュージシャンの活動と並行して俳優としても数多くの作品に出演、本作には音楽と演奏でも参加する浜野謙太、独特の存在感で個性を放つ長井短、映像・舞台とジャンルを問わず活躍し、現在放映中の『カムカムエヴリバディ』の好演も話題の堀部圭亮と、豪華実力派俳優が結集。12年前に起こった凄惨な殺人事件をきっかけにひとつの場所に集まってきた人々の奇妙な関係を描いた本作。公開されたビジュアルは“湿度”と“見えない部分”をコンセプトに、登場人物の表面ではなく内面に焦点を当て、それぞれのキャラクターの、種類の違った粘着質な感情を表現している。曇りガラス越しに見える人物のクリアな部分とそうでない部分の混在からも作品世界がうかがえる。演出の河原とキャストが一丸となって挑む異色作に期待したい。また、作品のタイトルにもある通り本作のカギとなる音楽は、“新しい時代のディープファンクバンド”在日ファンクが手掛け、全公演に出演。生演奏による物語と音楽のセッションにも注目だ。<ストーリー>田舎でふたり暮らしをしているホラー作家・海老沢十三(堀部圭亮)と娘・キオリ(平野綾)。12年前、拉致・監禁の末、集団暴行を受け殺害されたキオリの双子の妹・サオリの命日の日に、様々な人々が海老沢家に集まってくる。巡回中の近所の警察官・下平(坪倉由幸)、海老沢の熱心なファンだという女・赤井(長井短)。タクシー運転手・木村(浜野謙太)が腹痛を訴えて転がり込み、そこへ加害者の少年のひとり、間宮(古川雄輝)が焼香をしたいと訪ねてくる。偶然か…、必然か…、バラバラに集まってきたそれぞれの奇妙な関係は物語が進むに連れ、死者と生者、虚構と現実、善と悪との境が曖昧になっていき、やがて過去の真相が浮かびあがってくる…。<キャスト&スタッフ コメント>【河原雅彦(演出)コメント】音楽が好きだ。小さな頃からずーっと。でも、自分が就いた職業はミュージシャンでもなければDJでもない。気がつけば舞台演出家になっちまった。なのでね。せめて音楽との繋がりを求めて、がっつりミュージシャンとコラボ出来る作品を、「ええのはねぇがー、ええのはねぇがー」と、ナマハゲさながら血眼で常々探している次第。筋肉少女帯、O.L.H.(ex面影ラッキーホール)、レキシ、昨年は東京事変の伊澤さんや亀田さん、そして今年の『ロッキー・ホラー・ショー』。個人的にいずれも大変充実した作品になった。『室温〜夜の音楽〜』を在日ファンクでやる。初演のバンドはたまだった。たまと在日ファンク・・・ギャップ半端ないでしょ?でも僕の見立ては当たるんです。これはね、きっとはまる。KERAさん特有のヒリヒリぞわぞわした名作を、一癖も二癖もある素敵俳優陣とディープに混ぜ合わせ、2022年僕なりに蘇らせます。演劇好き音楽好きの皆々様、お楽しみに。【在日ファンク[浜野謙太(Vo)、仰木亮彦(Gt)、村上啓太(Ba)、永田真毅(Dr)、橋本剛秀(Sax)、村上基(Tp)、ジェントル久保田(Tb)](音楽・演奏)コメント】在日ファンクで舞台の生演奏をとオファーをいただいたのはチャンスだと思いました。ブラスセクションのある大所帯バンドって、きっとたいそうフェスを盛り上げてくれるんだろうくらいのイメージで見られがちなんですが、今回は長編の物語であるわけで色んな場面で演奏しなくてはいけない。物語を彩るわけですが同時に色んな感情やシーンの表現が僕らの音楽にも返ってくる。在日ファンクの楽曲はこんなに多面的に立体的に楽しめるんだというのがお客さんも僕らも発見できると思うんです。在日ファンクのホラーな部分(あるんです、あるつもりなんです)に気づいてもらえると思います。バンドも1演者として頑張ります。きっと濃い濃い作品になると思うので是非見に来てください!(在日ファンク・浜野謙太)【古川雄輝 コメント】久しぶりの舞台に出られるということで大変嬉しく思います。ゾッとするホラー的な要素が詰まった緊張感のある物語なのですが、シリアスなシーンなのに思わずクスっと笑ってしまうようなコメディの要素も混ざっていて、ホラーとコメディが融合した、とてもおもしろい台本だと思いました。僕の役は、ある罪を犯した青年の役です。犯罪者の役を演じた経験は、今までそれほど多くないので、そういう姿もぜひ劇場に観に来ていただければと思います。【平野綾 コメント】ケラさんの生み出す世界観、ケラ・ワールドにいつか携わってみたいと思っていたので、出演が決まって本当に嬉しかったです。私自身、ストレートプレイが久しぶりなので、今から本当に楽しみです。私は、12年前に双子の妹を殺された姉の役で、底知れぬ感じがある女性じゃないかなと思います。一度はまってしまうとかなり中毒性のある、危険で抜け出せないこの作品。時期的に、ちょうど湿度が上がり暑くなってくるタイミングでの上演だと思うので、ちょっとひんやりしつつ、じめっとしつつ、絶妙な空気感の中、いろんなところに散りばめられたケラさんのトリックを楽しんでいただけたらなと思います。【堀部圭亮 コメント】僕自身、ケラさんの作品への参加を切望していましたので、やっと念願が叶い、しかも演出は河原さん。本当に楽しみにしています。僕の役は「何かあるぞ…」っていう作家です。物語の冒頭から「何かある感」満載です。舞台作品は、演じている役者と観客が同じ空間にいることで、音や気配、匂いや空気を一緒に感じてもらえるというのが、すごく魅力だと思います。この作品は「思わず笑っちゃったけど、なーんかヒドい事になってない?…不快だなぁ…後味悪いなぁ…けど不思議と心地好い…あっ!ホラーコメディって、そういうことか!?」そんな感じです。ぜひ劇場に“不快に”なりにきてください。公演概要舞台『室温~夜の音楽~』作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出:河原雅彦音楽・演奏:在日ファンク出演:古川雄輝平野綾坪倉由幸浜野謙太長井短堀部圭亮 ・ 伊藤ヨタロウジェントル久保田【東京公演】2022年6月25日(土)~2022年7月10日(日)全19回公演会場:世田谷パブリックシアター【兵庫公演】2022年7月22日(金)~2022年7月24日(日)全4回公演会場:兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールチケット発売日:2022年4月29日(金・祝)AM10:00~公式HP:
2022年02月28日木村達成が主演を務める舞台『SLAPSTICKS』が上演されている。劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチの名作戯曲を、才気あふれる演出家たちが新たに息吹を吹き込む連続企画KERA CROSSの第4弾。今回は、劇団「ロロ」主宰・三浦直之が演出を担う。舞台は、1939年のアメリカ。ビリー・ハーロックは、伝説のコメディアンであるロスコー・アーバックルの映画をリバイバル上映してもらおうと奔走している。だが、人々にとって、サイレント・コメディーはもはや過去の遺物。ビリーは、配給会社に勤めるデニーを説得すべく、熱い眼差しで1920年代のハリウッドでの思い出を語り出すーー。ケラが30歳の時に書いた戯曲。1993年、ナイロン100℃で初演され、2003年にはオダギリジョー主演で再演されている。今回は、木村のほか、桜井玲香、小西遼生、壮一帆、金田哲(はんにゃ)、元木聖也、黒沢ともよ、マギーに加え、劇団ロロの面々が出演。バラエティ豊かな顔ぶれがそろった。シアター1010での初日公演(12月25日)を観劇した。サイレント映画からトーキーへ転換期を迎えるハリウッドで、サイレント・コメディを愛し続けた人々の群像劇。ケラは「半分捏造の評伝劇とは言え、残り半分は実話である」と語っているが、作中に挟み込まれる実際のサイレント・コメディの映像も相まって(この映像がまたすごい)、舞台上で生きる人々にリアリティを感じた。命懸けで「笑い」を生み出そうとした現場には、確かに「笑い」があったが、それ以上に苦悩も闇も狂気もあって。ただ、それらをピュアに、ロマンチックに、そしてナンセンスに仕上げてしまうのは、やはりケラ戯曲の魅力で、三浦の狙いなのかもしれないと思う。木村は「やっと待ちに待った初日の幕が上がります。楽しみながら千秋楽まで怪我なく無事公演ができるように、最後まで気を緩めずに演じていきたいと思います」とコメント。桜井は「遂に幕が上がるという高揚感で胸がいっぱいです。夢みる人たちが、その夢のため一生懸命生きる姿に奮い立たされる瞬間が沢山詰め込まれています。儚くかけがえのない時間が流れる、素敵な作品に仕上がっています。劇場でお待ちしております」と語った。大阪公演は1月8日(土)〜10日(月・祝)、サンケイホールブリーゼ。福岡公演は1月14日(金)〜16日(日)、博多座。愛知公演は1月28日(金)、日本特殊陶業市民会館ビレッジホール。東京公演は2月3日(木)〜17日(木)、シアタークリエ 。ぜひお見逃しなく!取材・文:五月女菜穂
2021年12月27日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)作、三浦直之演出により、KERA CROSS第四弾として上演される舞台『SLAPSTICKS』のレクチャーレポートが到着した。本作の舞台は、サイレント映画からトーキーへ、転換期を迎えるハリウッド。激動の時代に映画作りに情熱を注ぐ人々を、映画への愛と希望に溢れる一人の青年を通じて描くロマンチック・コメディ。ケラリーノ・サンドロヴィッチにより、1993年にナイロン100℃で初演され、2003年にはオダギリジョー主演で再演された。今回、主人公の若き助監督ビリー・ハーロックを演じるのは、『プロデューサーズ』や『ジャック・ザ・リッパー』など舞台での活躍に加え、大河ドラマ『青天を衝け』に出演するなど活躍の場を広げる木村達成。ビリーの初恋の人であるアリス・ターナー役には、乃木坂46を卒業し、ミュージカル『GHOST』や『ダンス・オブ・ヴァンパイア』などでその存在感を示す桜井玲香。そして、18後のビリーを小西遼生。さらに、壮一帆、金田哲(はんにゃ)、元木聖也、黒沢ともよ、マギーといった個性豊かな実力派が集結した。晩秋のある日、稽古場にKERAが登場。今回の上演にあたり設定考証・協力をしている喜劇映画研究会の新野敏也と共に、20年代前後のサイレント映画の名場面をキャスト・スタッフらで揃って視聴し、ふたりに解説してもらうというスペシャル・レクチャーが決行された。実はKERAと新野は高校時代の先輩・後輩の仲(新野が2年先輩だとのこと)。まずはそんなふたりの関係、そして今作の登場人物でもあるロスコー・アーバックルやマック・セネットのこと、そのセネットが映画という文化にとっては大変に重要な人物であること、「その役を演じるマギーはそのことを肝に銘じていてほしい」といったことなどが、KERAの口から語られた。今回の上演にあたって演出の三浦直之は「『SLAPSTICKS』はサイレント・コメディを偏愛するひとたちの物語です。そして、KERAさんのサイレント・コメディに対する偏愛の物語でもあるとおもっています」とオフィシャルでコメントしているのだが「まさに、その通り」だとKERAは頷き、今作が30歳の時に自らの映画への偏愛が書かせた芝居だということを認めた上で、「だからこそせっかくなら、少しでもみなさんに興味を持っていただき、作品を楽しんでもらいながら演じてほしいと思い、こういう時間を設けてもらった次第です」と挨拶。左:三浦直之、右:新野敏也このレクチャーのためにVTRだけでなく私物のプロジェクターも持参してくれたという新野も「当時はメディアといえば新聞と雑誌しかない時代、映画誕生と共に“娯楽”というものを発明したのが、マック・セネットです。彼の演出により今のアメリカ映画のさまざまな撮影方法が築かれ、さまざまな映画人の人脈の礎ともなった人でもあります。これから流す映像に出てくるのは100年前の人たちで、とにかく映画に対する熱量が今と全然違うんだという点も参考になるかもしれません。おそらく初めて観る映像がほとんどだと思いますが、まずは楽しむ感覚で、肩の力を抜いてご覧いただければ」と語り、いよいよ珠玉のサイレント・コメディの名場面集の上映がスタートした。稽古場に設置された小型スクリーンに映し出されたのは、劇中に登場するロスコー・アーバックルやメーベル・ノーマンドだけでなく、ハロルド・ロイドやチャールズ・チャップリンやバスター・キートンといった有名どころだけでもなく、チャップリンの兄がいたり、キートンの妹や妻がいたり、さらには「この人は美術監督」「これは脚本家」「この役は途中から実はキートンがバイクアクションだけ吹き替えてる」等々、“一コマずつ止めて確認しながら観てきた”新野ならではのツッコミコメントが入り、そのたびに参加者一同は笑い声に加えて「へえ~!」「うわあ、すごい!」「コワッ!!」などと感嘆の声も響かせている。用意されたオムニバス集3本のVTR上映の合間には、キャストからそれぞれ質問も受け付け、中でもマギーは興味津々だったようで、ハロルド・ロイドの映像でビルの高層階で行われたアクションのからくりを聞いたり(新野によれば、ビルの屋上に高さのあるセットを組み、カメラアングルを工夫して撮影しているとのこと)、自分が演じるマック・セネットの人となりについて聞いたり。他にもヴァージニア・ラップを演じる黒沢ともよら、実在の人物を演じるキャストは、この物語には実際に起きた事件や当時の映画人たちの普段のふるまいなどが盛り込まれていることもあって、どこまでが現実にあった出来事でどこからがKERAの創作なのかが気になるようで、それぞれのキャラクターについてや、「自転車を食べる女優は本当にいたんですか?」(KERAからの答えは「創作です!」)、「白塗り男は誰をイメージしたんですか?」(「確かハリー・ラングドンだったと思う」とKERA)、「あの当時の映画界には男女差別や人種差別はあったか」(立場は対等だったように見える、ギャラも男女差というより売れた人がより大切にされていた、男か女かというよりもコメディアンもコメディエンヌも同じように笑いのためには相当に激しいことを要求されていた)、などなど活発な質疑応答が行われていた。また、物語の大きなモチーフのひとつでもあり、いまだに謎が多く残る“アーバックル事件”についても「結局は今も想像するしかないけれど」と前置きしながらも新野が長い時間をかけて解説。「実際のアーバックルはどんな笑いをとるタイプだったんですか」という質問には、KERAが「明るくて完全に“陽”な人。とにかくあの体重であれだけ動ける人はいないし、ちょっとした足さばき、手さばきが流麗。そもそも日本で今みたいに太った人を“デブ”と全国区で表現するようになったのは、アーバックルに覚えやすい通名をつけるにあたって、江戸時代に一時流行った“でぶでぶ”という言葉をあて“デブくん”としたことからなんだよ」というトリビア的な事実を明かしたところで、ラストはそのアーバックル主演の1916年の短編『デブの料理番』をピアノ演奏の音声も入ったフルバージョンで上映。その上映終了後には「個人的な自分の想いを話しておきます」と、KERAから締めのコメントとして「忘れもしない小学4年生の12月に父親と一緒に観たチャップリンの『モダンタイムス』、その翌年にキートンを観て、すっかり魅せられてしまった」という子供時代のこと、小学6年生の卒業アルバムに「将来なりたいのは喜劇映画の監督」と書き、明らかにそれが今の自分の出発点となったこと、8ミリカメラを買ってもらって本人はチャップリンやキートンみたいなことをやっていたつもりだったが、その後高校に入って似たような映像を撮っていた人が同じ映画部にいてそれが新野だったこと……。「今、考えるとある意味狂っていたとしか思えないくらいだけれど、本当に映画が好きだったんです。だけど周囲の人々はそこまで映画好きではないわけで。そういう人たちに向けて、サイレント・コメディのような“忘れ去られたもの”をなんとか自分なりに、昔こういうことがあったんですよということを創作や捏造をも交えて伝えたいと思った、“運動”みたいな作品なんです」と話した上に、さらに『SLAPSTICKS』と複数形の“S”が付いていることについては「幾多のコメディアン、コメディエンヌ、クリエイターに対する敬意を、あえて複数形にすることによって、全員分の『SLAPSTICK』があるという意味で複数形にしています」とタイトルに込めた想いも打ち明けた。「自分も若かったし、当時は理屈でないところで動かされていたところもあった。異常な熱量で生きていただろうサイレント時代の登場人物を演じる時に、まったくクールな状態でクリエイトしてもなかなか伝わらないかもしれないな、と思うんです。なので、ほんの数カ月でいいので、今ならYouTubeでも観られる映像もあってホント恵まれた環境にありますから、それほどゲラゲラ笑えるものではないですがまたいろいろと観てみてほしい。そして実在の人を演じる方も、創作の人物を演じる方も、当時の世界の住人として存在する説得力を持って演じていただければ。今、台本を読み直すと“随分フツーのことを言ってる!”と思うし、若書きでストレートなこともいっぱい書いていて恥ずかしくなるんですけどね。ですので三浦くんの解釈で、どんな風に変えていただいても構いません。実際の出来事をフィクションにしてもらってもいいので、その時代の人たちをぜひみなさんで楽しみながら再現してもらえたらと思います!」と改めて、キャスト・スタッフに向けてエールを送った。キャスト陣もみなすっかりサイレント映画に魅惑されたのか、挨拶のあとも何人も手を挙げて質問コーナーは続き、作品や演じるキャラクターへの想い、その登場人物たちで構築する映画愛たっぷりのこの物語世界への想いはかなり増幅した模様だ。よりリアルに、より深くなるはずのニューバージョン『SLAPSTICKS』に期待は高まるばかり、初日の幕が上がるのが今から楽しみでならない。取材・文田中里津子写真提供:東宝演劇部■公演概要KERA CROSS 第4弾『SLAPSTICKS』2021年12月25日(土)・26日(日)会場:東京・シアター10102022年1月8日(土)~10日(月・祝)会場:大阪・サンケイホールブリーゼ2022年1月14日(金)~16日(日)会場:福岡・博多座2022年1月28日(金)会場:愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール2022年2月3日(木)~17日(木)会場:東京・シアタークリエ作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出:三浦直之出演:木村達成、桜井玲香、小西遼生 / 壮一帆、金田哲(はんにゃ)、元木聖也、黒沢ともよ、マギー / 亀島一徳、篠崎大悟、島田桃子、望月綾乃、森本華
2021年12月09日ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出の『陥没』ほか、キューブ制作の舞台10作品が動画配信サービス「U-NEXT」で順次配信されることが決定。11月19日より、『陥没』『グッドバイ』(2015年版)を含む5作品が配信開始された。ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)、河原雅彦、倉持裕、G2など演劇界注目の演出家がそれぞれ手掛けた話題の10作品がデジタル初解禁。数々の演劇賞を総なめにし演劇界を牽引する存在のKERAが作・演出を手掛け、井上芳雄、小池栄子、瀬戸康史、松岡茉優ら豪華キャストにより、昭和の東京を舞台に東京オリンピックに翻弄される人々の群像劇を描いた『陥没』。太宰治の未完の遺作をKERAが換骨奪胎し、 第23回読売演劇大賞で最優秀作品賞を受賞した仲村トオル主演の超スピード恋愛狂騒劇『グッドバイ』。中島かずき脚本×河原雅彦演出で“謎の浮世絵師・東洲斎写楽が実は女だった!?”という着想をもとに創られたミュージカル『戯伝写楽2018』。倉持裕が作・演出を務め、竹中直人×生瀬勝久による竹生企画として上演した『火星の二人』『ブロッケンの妖怪』。橋本さとし、新妻聖子、堀内敬子、上山竜治とミュージカル界のトップスターが集結し、男女4人の小さな愛の物語を音楽劇として描いたG2作・演出の『Bitter Days, Sweet Nights』など、芸能事務所「キューブ」が手がける珠玉の演劇作品が多数ラインナップされている。ぜひこの機会に多彩な舞台の数々を楽しんでほしい。【配信作品】●2021年11月19日(金)より配信・陥没・グッドバイ(2015年版)・戯伝写楽 2018・冬の絵空・ゴドーは待たれながら●2021年12月17日(金)より配信・Bitter days,Sweet nights・火星の二人・ブロッケンの妖怪・百年の秘密(2018年版)・MIDSUMMER CAROL~ガマ王子vsザリガニ魔人~(2008年版)視聴ページ:
2021年11月20日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)率いる劇団「ナイロン100℃」が約3年ぶりの新作上演、しかも劇団のホームグラウンドとも言うべき下北沢・本多劇場と聞いて、期待に胸が高まった演劇ファンは多いはず。そこで、作・演出を務めるKERAと主演・大倉孝二のふたりに公演への思いを聞いた。「今回はもう、コメディでなくなってもいいかという覚悟で臨むつもりです」――出演者の最初に大倉さんの名前がありますが、大倉さんが演じられるキャラクターが中心の物語と想像していいでしょうか。ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)今のところ、大倉が完全な主役ですね。主人公が何らかの勝負をして勝ち進んでいく、しいて言えばスポ根的な要素を考えています。まだ決まっていないことばかりだけれど、気が変わらない限り、そうだと思います。――「イモンド」というのは人名ですか?KERAまだ秘密です。――大倉さんは今回の座組を見て、どう思いましたか?大倉知っている人しかいないんでねえ。強者ぞろいで、本気を出したら本当に厄介(笑)。すごく疲れそうですね。――3年ぶりの劇団新作ですが、おふたりにとって劇団とはどのような場所でしょうか。大倉最初は活動のほとんどが劇団公演でしたし、自分の活動そのもの。今は演劇だけでなくテレビや映画に出させてもらっているので、改めて自分の血筋を確かめる場、里帰りのようなものになっていますね。KERA最近は、劇団公演も数年に1回になりましたからね。当たり前ですけど、自分が集めた人たちなので、前提として自分の作劇にとって戦力になってくれる役者ばかりが集まってます。外部での1か月の稽古ではできないことをできる集団であることが、大きな違い。それに何十年も苦楽を共にしてきたので、同志意識みたいなものもありますね。――その長いおつき合いの中で、印象的なエピソードを教えていただけますか。KERA大倉と出会った頃の印象は「でっかいヤツだ」。オーディションでドアに頭をぶつけて帰って行ったっていうのが、彼との原風景です。大倉(劇団は)仲が良くてずっと一緒にやっている、というものでもないですからね。僕はどちらかというと、KERAさんだけじゃなく先輩たちに怒られた思い出が多いですよ。KERAみんな上履きを用意しているのに、裸足で歩いて怒られたりしてた。大倉素足でトイレに入って、KERAさんに怒られましたもんね。今思えば、僕もそんなヤツ嫌だわ(笑)。――客演で赤堀雅秋さん、山内圭哉さん、池谷のぶえさんも出演されますね。KERA赤堀くんは一番未知数です。役者としての引き出しはわかっているつもりだけど、ナンセンスをやっている姿は観たことがない。楽しみですね。圭哉と池谷はナンセンス的なスキルもあるし、何でもできる。充分な戦力になってくれる客演陣ですし、劇団員も触発されるでしょうね。――今回はナンセンスコメディということですが。KERA僕はもともと、ナンセンスな笑いをやりたくて芝居を始めた人間。近年は古田新太くん、大倉、犬山(イヌコ)たちとそういう芝居をやりましたが、劇団では久しくやっていなかった。今回、自分を突き動かすものがあった訳でもないし、原点に返るとか強い意志があった訳でもないけど、定期的にトレーニングしないとナンセンスって書けなくなるんです。だから久し振りにね、やってみようかと。――ナンセンスコメディを創るというのは、すごく難しい作業ではないかと思います。どのように進めていらっしゃるのでしょう。また大倉さんはそれを体現するために、どのように挑んでいらっしゃるのでしょうか。KERAナンセンスって、常識的な世界の中におかしな人がいるのではなく、世界観自体が狂っている。書き手としては、まず、その狂っている世界観を自分の基準値とするところから始まります。しかも、ある沸点以上に達してしまうとナンセンスではあっても笑いにならなくなってしまう。例えば筒井康隆の小説は、初期のナンセンスな短編は笑いにつながるけれど、後期の長編はむしろ前衛性や実験性が際立つ。同じナンセンスでも年齢と共に書きたいものや書けるものは変わりますしね。我々はコメディという制限の中で言うとナンセンスの極北までいったと思います。その後、ブルー&スカイや地蔵中毒といったナンセンスを主体にした舞台を創る奇特な人たちが出てきた。でもやっぱり、彼らと僕では違いますから。僕の場合、物語を構築していく創り方ではなく、「何かが狂った世界の中で、何が面白いか」を探って、それを物語としてでっち上げていくっていう創り方をしています。今回はもう、コメディでなくなってもいいかという覚悟で臨むつもりです。大倉僕は「どうやったら面白くなるか」以外、特に考えることはないですね。脈絡がないので突然訳のわからない境地に達しないといけないから、だいぶしんどい。でも、それが面白いんだと思います。――「だいぶしんどい」というのはなぜ?大倉悪ふざけというのは、興が乗った時にやるものですよね。でも全然興が乗っていない時に、しかも毎日、いい歳をしてやらなきゃいけない。若い頃は、自分を盛り上げたり、周りもワイワイ盛り上がってから出ていく、なんて時もありました。今は病院の待合室みたいにしーんとした楽屋から、みんなのっそり出ていく。それで突然ふざける。それがしんどくもあり、楽しくもあるんでしょうね。取材・文:金井まゆみ撮影:江隈麗志ナイロン100℃『イモンドの勝負』チケット情報
2021年10月16日劇作家・演出家、ケラリーノ・サンドロヴィッチ率いる劇団・ナイロン100℃の約3年ぶりとなる新作公演『イモンドの勝負』のチラシビジュアルが公開された。あわせて、ケラリーノ・サンドロヴィッチからのコメントも到着。本作について、「(前略)大倉(孝二)演じる男が、勝って勝って勝ちまくってると思い込むお話です。たぶん。よろしくお願い。」と綴っている。2018年上演の46th SESSION『睾丸』以降、2020年年末に下北沢 ザ・スズナリで予定されていた劇団公演が新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け中止となり、はからずも長い空白期間を経たナイロン100℃。ファンにとっては待ちに待った約3年ぶりの劇団新作舞台となる。大倉孝二が選手宣誓のポーズを取っている色鮮やかなビジュアルが目を引くチラシビジュアルには、彫刻家・ねがみくみこの作品が随所に散りばめられており、不思議な魅力を放っている。出演はほかに、みのすけ、犬山イヌコ、三宅弘城、峯村リエ、松永玲子といった鉄壁の劇団メンバーに加え、客演として赤堀雅秋、山内圭哉、池谷のぶえが参加。最強メンバーが一堂に会し、どんな作品になるのか期待が高まる。ナイロン100℃久々のナンセンスコメディを、劇団のホームグラウンドとも言える下北沢・本多劇場で上演する本公演。東京公演は11月20日より12月22日まで上演後、兵庫、広島、北九州と各地公演を予定している。現在キューブのメルマガ会員「cubit club plus」では東京・各地のチケット最速先行を10月5日正午まで受付中。東京公演一般発売は10月23日開始予定。以下、主宰・ケラリーノ・サンドロヴィッチのコメント全文(チラシコメントより)久し振りにしっちゃかめっちゃかな舞台を創ってみたくなって、仮チラシには「観なくても損はない、捨て身の出鱈目芝居」なんてコピーを載せてみたものの、いざ台本を書こうと思うと、若い頃のように「捨て身」になんかまったくなれなかった。劇団員たちだって、口ではなんとでも言うだろうが、「捨て身」で稽古からの三ヶ月弱を過ごせるわけがない。客演してくれる三人は尚更だ。呼んでおいて「捨て身」はないだろう。しかもコロナ禍に。ただ、ナンセンス・コメディばかりを連発していた頃の私には成し得なかった舞台にはしたいのだ。毎日どこかしらが痛む身体をなだめつつ、ナンセンスの、或いは、不条理の、と言った方がしっくりくるトーンになるかもしれないが、ともかくソレの極北に行ってみる覚悟。うっちゃることなく、ブラリと皆で出掛けてみる。そこで見るだろう景色は、まだ私にもわからない。大倉演じる男が、勝って勝って勝ちまくってると思い込むお話です。たぶん。よろしくお願い。主宰:ケラリーノ・サンドロヴィッチ公演概要ナイロン 100°C 47th SESSION『イモンドの勝負』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:大倉孝二 /みのすけ 犬山イヌコ 三宅弘城 峯村リエ松永玲子 長田奈麻 廣川三憲 喜安浩平 吉増裕士 猪俣三四郎 /赤堀雅秋 山内圭哉 池谷のぶえ【東京公演】2021年11月20日(土)〜12月12 日(日)下北沢 本多劇場チケット料金:一般:7,600 円 (前売・当日共/全席指定/税込)学生割引券:5,000 円(チケットぴあ前売のみ取扱/税込)チケット一般発売:2021年10月23 日(土)【兵庫公演】12 月 18 日(土)〜19 日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール【広島公演】12 月 21 日(火)JMSアステールプラザ 大ホール【北九州公演】12 月 25 日(土)〜26 日(日)北九州芸術劇場 中劇場
2021年10月01日2020年、劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)と女優・緒川たまきが結成した演劇ユニット「ケムリ研究室」の第二回公演、『砂の女』のオンデマンド配信が決定。本日9月10日、兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールの大千穐楽公演で発表された。8月22日に東京・シアタートラムで開幕後、緊急事態宣言の影響を受け売り止めとなり、カンパニーの、「チケットをご購入いただけなかったお客様、感染拡大下でご来場を断念されたお客様にご覧いただく機会を」という思いから、オンデマンド配信が決定した。舞台『砂の女』は、安部公房の傑作小説『砂の女』を原作とし、KERAが上演台本と演出を担当。砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、村人の誘いで案内された砂に埋もれゆく家に閉じ込められる。その家には寡婦が一人住んでいた……。一見奇想天外な設定でありながら、普遍的でリアルな肌触りを持つ稀代の名作の舞台化は、上演前から注目を集め、その注目は評判へと繋がった。緒川たまき、仲村トオル、オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲、といった実力派キャストの力演により作り上げられる密度の濃い空間、そして音楽・演奏の上野洋子の眩惑的なインプロビゼーション、小野寺修二の物語に溶け入るステージング、美術・加藤ちかの生み出す圧倒的な砂の世界、映像・上田大樹の肌に迫るような映像表現……。全てが緻密に織り上げられた総合芸術は、各新聞評やSNSなどを通じ、瞬く間に大きな話題となり、全国の演劇ファンから配信を望む声も高まっていた。この機会に“研究室”の挑戦的で実験的なコラボレーションを逃さず体感しよう。ケムリ研究室no.2 『砂の女』原作:安部公房上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ音楽・演奏:上野洋子振付:小野寺修二出演:緒川たまき / 仲村トオルオクイシュージ / 武谷公雄 / 吉増裕士 / 廣川三憲【オンデマンド配信】配信期間:9月30日(木) 10 :00 配信開始、10月6日(水)23:59までアーカイブあり配信元:PIA LIVE STREAMチケット料金:3,500円チケット発売期間:9月11日(土)10:00~10月6日(水)21:00チケット販売URL: ※配信される舞台映像は、シアタートラムにて収録された映像を配信用に編集した“配信限定編集版”となります。<ケムリ研究室とは?>劇作家、演出家、音楽家のケラリーノ・サンドロヴィッチと女優・緒川たまきが2020年に始動させた演劇ユニット。企画、キャスティング他、多くのパートを二人三脚で担う。旗揚げ公演は同年9月『ベイジルタウンの女神』(世田谷パブリックシアター他)。本作『砂の女』は第二回公演にあたる詳細:キューブオフィシャルサイト:
2021年09月10日劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)と、女優・緒川たまきが結成した演劇ユニット「ケムリ研究室」の第二回公演となる『砂の女』が、8月22日に開幕、9月5日まで東京・三軒茶屋のシアタートラムにて上演中だ。1962年安部公房により書き下ろされた傑作小説を原作とし、KERAが上演台本と演出を担当、キャストは緒川たまき、仲村トオル、オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲。『砂の女』は、「ケムリ研究室」主宰のKERAと緒川たまきが、長年、舞台化を模索してきた作品で、満を持してようやく実現した。昆虫採集に来た男が、たどり着いた砂丘の果ての村。男が宿を借りた砂丘の底の家には、女が一人住んでいた。外界との唯一の往来手段であった縄ばしごを外され、今にも砂に埋もれそうな家に女と二人、男は閉じ込められる。緒川たまきと仲村トオルの、刻一刻と変わってゆく、ヒリヒリするような関係性。廣川三憲、オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士が、村人や、砂の象徴“砂子”など様々な役を演じ、作品世界を豊かに広げる。上野洋子のインプロビゼーションの演奏が、砂の流動性と、女と男の心の揺れを体感させる。不条理な閉塞状況の中で、スリリングで焦燥感に溢れた、そしてエロティックな男女の関係。それを覗き見しているような濃密な世界観が広がる。芝居、ステージング、音楽、映像、照明、全てが綿密に編み上げられた劇空間が、目の前に力強く立ち上がった。開幕に際し「ケムリ研究室」主宰のケラリーノ・サンドロヴィッチと緒川たまきがコメントを寄せた。【ケラリーノ・サンドロヴィッチコメント】初日が開けてとりあえずホッとしてます。開幕できるか、稽古中はずっと不安でした。観客がいる劇場の有り難さ。ご覧になったお客様がどんな風に感じたか知りたいですね。同じコロナ禍での上演でも、昨年の『ベイジルタウンの女神』は多幸感溢れるエンタメ作品でしたけれども、今年は安部公房ですからね。180度違う。今回は辛辣な芝居です。照明もずっと暗めだし、明るいことはあまり起こらない。娯楽要素はありつつも、いわゆるエンタメとは異なる舞台を目指しました。けれども、砂の谷底の小屋で繰り広げられる男女のドラマは、きっと様々なことを感じさせてくれるでしょう。安部公房は明らかに理数系の作家ですが、今回僕は、それを無理矢理文系の作品にねじ曲げたのかもしれません。自分のモードでやるしかないし。岸田國士さんの時は一作やって大ファンになったけれど、安部公房さんはまだまだ近づくには怖い所がある。やっぱり理数系だからかな。これから時間をかけて徐々に仲良くなれるといいなと思っています。劇場入りしてからはバタバタで、ともかく幕を開けることで精一杯でした。明日からは少し客観的になれるのではないかと。スタッフ、キャストが皆同じ方向を向いている素晴らしい座組なので、なんとかこのまま完走できるよう、祈るばかりであります。【緒川たまきコメント】このようなご時世ですから、本当に幕を開けることが叶うのかどうか、カンパニー全体、かなりドキドキしながら、覚悟をして稽古をしておりましたが、おかげさまで無事初日を開けることが出来ました。カーテンコールでお客様の姿が照らされたとき、これはつい数時間前まで行っていた舞台稽古の続きではなく、お客様に見て頂けたのだと改めて信じられないような思いでした。同時に、何か重い責任を負っているような気持ちで、その場に立っていました。このような状況の中、演劇を、ケムリ研究室の『砂の女』を、観ようと思って下さり、実際に劇場に足を運んで下さった事に、まずは深い感謝を申し上げると共に、ご期待に添えたかどうかは分かりませんが、皆様の思いを無駄にしないよう、明日以降もブラッシュアップして、少しでも良いものをお届けしたいと、祈るような誓うような気持ちでおります。公演は9月5日までシアタートラムにて上演。その後9月9日から兵庫公演を予定している。
2021年08月24日ケムリ研究室vol.2『砂の女』が8月22日(日)、シアタートラムにて開幕する。ケムリ研究室はケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)と緒川たまきが立ち上げたユニット。その一作目、昨年9月に上演された『ベイジルタウンの女神」は緒川演じるお金持ちの女社長がふとしたきっかけから貧民街で暮らすことになり、そこで新たな出会いを経験し、やがて街のために立ち上がるという極上のコメディだった。ユニット立ち上げの際、KERAが「作風は公演ごとにバラバラになると思う」と語っていたとおり、彼らが2作目に選んだのは安部公房『砂の女』。昆虫採集のために砂丘へ出かけた男が、砂に埋もれた一軒家に住まう女と出会う。男はそこからの脱出を試みるが、村の人々の邪魔もありなかなか抜け出せない、という物語。女を岸田今日子が演じた1964年の映画が印象深い。「安部公房氏の長編小説『砂の女』が、読者のその後の空想の中で自由に育ち続けているように、ケムリ研究室による舞台『砂の女』もまた、妄想と実験精神たくましく育てあげる所存です」とコメントを出していたケムリ研究室のふたり。公演に先立ち、6月には緒川による原作小説のリーディング、主宰ふたりによるトークのイベントも開催。そんなふうにして制作過程も開示しつつ、地道に丁寧に練り上げてきた作品をようやく目にすることができる。女は緒川たまき、そして男には『ベイジルタウンの女神』をはじめ、KERA作品に多数出演している仲村トオルが扮する。その他、オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲が共演に名を連ねる。この骨太なキャストたちがあの砂にまみれた世界をどのように表現していくのか、どんな演出と美術であの空気が再現されるのか。閉塞感にからめとられそうな2021年の夏、うだるような暑い陽射しの中を劇場に向かった記憶ごと、忘れられない作品になりそうだ。文:釣木文恵ケムリ研究室no.2『砂の女』原作:安部公房上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ音楽・演奏:上野洋子振付:小野寺修二出演:緒川たまき / 仲村トオルオクイシュージ / 武谷公雄 / 吉増裕士 / 廣川三憲
2021年08月20日2020年9月、ケラリーノ・サンドロヴィッチと緒川たまきが立ち上げたユニット「ケムリ研究室」旗揚げ公演『ベイジルタウンの女神』が待望のDVD化。本日7月21日(水)より発売される。本作は俗世知らずのお嬢様と“乞食の王様”が繰り広げる、大人のロマンティック・コメディ。緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子など、実力派オールスターキャストが集結した。DVDはキャスト座談会各種や、副音声コメンタリー各種など、特典超満載の豪華決定版。何度観てもハッピーな気持ちになれる演劇ファンのマストアイテムとなっているので、ぜひ手に入れてほしい。【商品情報】【DVD】ケムリ研究室 no.1『ベイジルタウンの女神』販売:キューブ通販サイト「cubit club plus」にて販売販売ページ(要会員登録): 価格:8,000円+税 (送料別)商品番号:Qbix-SD70発売日:2021年7月21日(水)発売<スタッフ&キャスト>作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ / 振付:小野寺修二映像:上田大樹 / 音楽:鈴木光介出演:緒川たまき仲村トオル水野美紀山内圭哉吉岡里帆松下洸平望月綾乃大場みなみ斉藤悠渡邊絵理荒悠平髙橋美帆尾方宣久菅原永二植本純米温水洋一犬山イヌコ高田聖子収録日:2020年9月24日収録 @世田谷パブリックシアター<特典映像>★キャスト鼎談・緒川たまき×仲村トオル×水野美紀・温水洋一×犬山イヌコ×高田聖子・山内圭哉×吉岡里帆×松下洸平★ケラリーノ・サンドロヴィッチインタビュー★10月10日(土) 北九州芸術劇場 中劇場 大千穐楽カーテンコール映像<特典>★副音声コメンタリー2バージョン収録!・緒川たまき×水野美紀×吉岡里帆・仲村トオル×山内圭哉×松下洸平★ブックレットに豊崎由美氏 劇評掲載<仕様>本編195分 特典映像60分 / Qbix-SD70 / MPEG-2 / COLOR / 本編:片面・2層特典:片面・1層 / 本編 ステレオ 特典映像 モノラル【公演詳細】・2020年9月13日〜9月27日 東京・世田谷パブリックシアター・2020年10月1日〜10月4日 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール・2020年10月9日〜10月10日福岡・北九州芸術劇場 中劇場
2021年07月21日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)と緒川たまきが昨年旗揚げした演劇ユニット「ケムリ研究室」が、早くも第2弾を発表。安部公房の不朽の名作『砂の女』の舞台化に挑む。そこで緒川と、前作『ベイジルタウンの女神』に引き続きの参加となる仲村トオルに話を聞いた。『ベイジル~』以外にもKERA作品におけるふたりの共演は多く、仲村について、「KERAさんにとっても私にとっても、トオルさんは最も期待を抱かせる俳優さんであり、何か新しいことを始める時に側にいてくださると本当に心強い方なんです」と緒川。また仲村も、「KERAさん作品に参加することで、自分でも見たことのない自分を見られたというか。だからおふたりは、開けたことのない引き出しを開けてくれて、そこに新しいものを詰め込んでくれる方々って感じですね」と、互いの信頼の厚さを伺わせる。砂穴に埋もれる一軒家で暮らす女と、そこに囚われる羽目になった男。この奇妙で生々しい『砂の女』という作品は、永年緒川とKERAを魅了し、舞台化を夢見ながらもなかなか踏み切れずにいたという。「簡単に出来るものだとは考えていません。ただ『砂の女』の持っている実験性というのでしょうか、その点に目を向けて、描写の細かさに気を取られずに、本当に印象に残る好きなシーンだけを舞台上に立ち上げていく。それ以外は捨てて行くぐらいの大胆な気持ちでいれば、ケムリ研究室ならではの『砂の女』が作れるのではないか、と思ったんです」と緒川は語る。そこに欠かせなかったのが、男を演じる仲村の存在。仲村も出演を快諾したものの、「最近原作を読み終えたんですが、これは安請け合いしてしまったな」と苦笑いを浮かべる。男という役どころに関しては、「虫を追いかけてあんなところにまで行くなんて僕には理解出来ませんが、何かから逃れる理由、大義名分として虫を追いかけていたとしたら…。僕も名もなき人になってみたいという願望を一瞬くらいは抱いたことがありますし、男の気持ちも少しわかる気がします」と、難役への手がかりを明かす。一方の女について、緒川はこう読み解く。「今の状況に甘んじている、どこかイライラさせる女というものの奥にある、非常にたくましく魅力的なもの。そこをどうやったら匂わせられるのか、ずっと考えているところです。そして女の、“男を陥れた張本人”という立ち位置とはまた違う、“当事者意識のない不思議なもの”という部分も大事にしていけたらと思います」取材・文:野上瑠美子
2021年06月25日ケムリ研究室no.2 『砂の女』のビジュアルと公演詳細が発表された。2020年、劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)と、女優・緒川たまきが結成した演劇ユニット「ケムリ研究室」。2020年大好評を博した旗揚げ公演『ベイジルタウンの女神』に続き、8月22日()日よりシアタートラムほかにて、第二回公演『砂の女』が上演される。舞台『砂の女』は、1962年安部公房により書き下ろされた小説「砂の女」を原作とし、KERAが上演台本と演出を担当、緒川たまきはじめ、仲村トオル、オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲、といった実力派俳優が顔を揃えてこの作品に挑むとあって、演劇ファンの大きな期待をあつめている。砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、ある女と関わることによって、とめどない砂に埋もれゆく家に閉じ込められるという、一見奇想天外な設定でありながら、普遍的でリアルな肌触りが迫りくる、この稀代の名作が、ケムリ研究室の“実験”によって、いかなる変化を遂げるのか。チケットは東京・シアタートラム、兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールともに、7月17日(土)に一般発売を予定している。なお、6月10日より、主催のキューブのメルマガ会員「cubit club plus」での最速先行申し込みがスタートする。詳しくはcubit club plusオフィシャルサイト( )にて。その後、各プレイガイドでの先行販売も予定されている。また、明日6月11日(金)には公演に先駆けて、LOFT9 shibuyaにて、「ケムリ研究室『砂の女』を研究する〜リーディング&トーク〜」も開催される。緒川による小説『砂の女』の一部抜粋リーディング、KERAと緒川とで『砂の女』について語り合うトークとを織り交ぜながらお届けする研究会となる。配信チケットはアーカイブ視聴ありで販売中。■公演概要ケムリ研究室no.2『砂の女』原作:安部公房上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ音楽・演奏:上野洋子振付:小野寺修二出演:緒川たまき仲村トオルオクイシュージ武谷公雄吉増裕士廣川三憲【東京公演】2021年8月22日(日)〜9月5日(日)シアタートラム<料金>チケット料金:8,800円(前売当日共/全席指定・税込)学生割引券★:5,500円(チケットぴあ前売のみ取扱・税込)チケット一般発売=7月17日(土)企画協力:ラウダ協力:KITTOヘリンボーンダックスープ公演の最新情報はこちら: お問い合わせ:キューブ03-5485-2252(平日12:00〜17:00)企画・製作:キューブ【兵庫公演】2021年9月9日(木)〜9月10日(金) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールチケット料金:A席8,500円 B席5,500円(全席指定・税込)チケット一般発売日:7月17日(土)お問合せ:芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255 (10:00-17:00月曜休み※祝日の場合翌日休み)主催:キューブ/兵庫県/兵庫県立芸術文化センター協力:リコモーション東京・兵庫公演cubit club plus 最速先行受付プレオーダー受付期間:6月10日(木)12:00~6月21日(月)12:00詳細: ■6月11日イベント概要ケムリ研究室『砂の女』を研究する〜リーディング&トーク〜6月11日(金) OPEN 17:00 / START 17:30 (END 19:30〜20:00予定)LOFT9 Shibuya出演:緒川たまき、ケラリーノ・サンドロヴィッチ会場チケット:前売3,000円 / 当日3,500円(+ドリンク代)70席限定配信チケット:2,000円*6月20日(日)23:59までアーカイブ配信あり詳細はこちら: お問い合わせ:LOFT9 Shibuya03-5784-1239企画・製作=ケムリ研究室
2021年06月10日1979年、17歳で劇作家・寺山修司氏に見い出されて女優デビュー。その翌年、ドラマ初出演した『ふぞろいの林檎たち』に黒髪ボブカットのミステリアスな美少女役で登場し、その存在を私たちに鮮烈に印象づけた、女優・高橋ひとみさん。女優生活42年目を迎え、常に第一線で活躍する一方、飾らないおおらかな人柄が愛されて、近年はバラエティー番組でも大活躍。50歳から激変したという人生に迫るロングインタビュー【後編】では、バラエティーで開花した世界、還暦を前にキラキラ輝く生き方について、恩師・寺山修司さんのこと……など、じっくりと語っていただきました。*前編『高橋ひとみが語る“50代同士でお互い初婚、ツッコミどころ満載の夫婦生活”』はこちら◇高橋ひとみさん(撮影/近藤陽介)「女優人生の一番の転機は、間違いなく50代に入ったときですね。ちょうど50歳になる頃にホリプロに入れていただいて。そのときに、こういうお仕事は嫌だとか、できないとか言うのはやめて、とにかく全部やってみる、NOと言わないことにしようと思ったんです。それまで、番宣以外のバラエティーは、しゃべれないし面白いこと言えないからと、お断りしていたんですけど、これからはお話がきたらやってみようと思って。もう新人じゃないし、イメージが崩れるからとか、そういうことを心配する必要もないし。もし崩れても、また女優として頑張れば取り返せる」そんな思いでバラエティーの世界に飛び込んだ高橋さんに、想像以上の変化が起きる。■この人たちよりは大丈夫って思えるように「見てくださる方が増えて、“高橋さんって、面白いのね”って言われたりするようになりました」「酔っぱらうとやらかす……」というプライベートのチャーミングな武勇伝トークが人気になり、あっという間に、バラエティー番組から引っ張りだこの存在に。「ただ、『アウト×デラックス』に最初に出させていただいたときは、本物のアウトな、衝撃的な方たちがいっぱいいらして。ちょっとここは私のいるところじゃないって思ったんですね。何かにあてられたというか、少し具合が悪くなって(笑)。でもそのうちに、自分よりすごい人がたくさんいるので、私はこの人たちよりは大丈夫って思えるようになって。逆に居心地がよくなってきたんですね(笑)。今ではすごく心安らかにいられる場所になっています」「40代までの自分とはまったく違う世界が広がった」と語る。「見てくださる方の私を見る目が違ってきたんですね。親しげに見てくださるようになりました。それまでは、わりとキツイ役とか冷たい役が多かったこともあって、怖い人なんじゃないかって思われていて、笑うと“あら、笑うのね”とか言われることもありましたけど(笑)。今は、もうまったくそんなふうに思われることはなくなって、地方ロケとかでも親しみを込めて“高橋さ~ん”と声をかけてもらうことが増えましたね。それはうれしいです」■年を取ってきたという感覚がない撮影中、高橋さんの姿勢のよさが印象に残った。若い頃と変わらぬスタイルと美貌を保つ美容法と健康法を伺うと「犬の散歩しかしていない」と明かす。愛犬、ゴールデン・レトリーバーのモモエちゃんとの散歩はけっこう体力を使う作業。「以前は朝夕に1~2時間歩いていたんですけど、モモエも13歳になってしまったので、今はもうそんなに散歩できないんです。だから、1日1回、車に乗せて近くの公園に行ったりして1時間歩くくらい。でもやっぱり歩くのはいいみたいで、毎年の検査で骨密度が上がっているんですよね。ほんとそれだけです。ジムにも行ったことないですし。通うのがおっくうで(笑)。エステも20代の頃は行っていましたけど、今は行ってないですしね。もう、恥ずかしいくらい何もしてないです。お化粧したまま寝ちゃったりすることもあります(笑)。毎朝、白湯を飲むといいって教えてもらって、それなら簡単ですねって言いながら、1回もやっていないですし(笑)。結婚して2人ともちょっと太ってしまったので、夕食は炭水化物を減らすくらい。主人は毎日体重計に乗っていますけど、私は怖いんです、体重を計るのが(笑)。だから、お腹を触って、“あれ?ちょっと太ったかな?とか、あとはお風呂に入ったときに全身を鏡で見るくらい」何もしていないとは、にわかには信じがたいけれど、このおおらかさが若さの秘訣なのかもしれない。8月に還暦を迎える高橋さんだが「50歳から人生のパート2がスタートした感じがしている」という。「私の母の時代の50代とは違うから、気持ちはまだ40代みたいな(笑)。60代も、これからいっぱい楽しいことが待っているというか、やれることがまだたくさんあるなって思っています。北大路欣也さん、草笛光子さん……すごく素敵に年を重ねている元気な方々がいらっしゃるので、まだまだ未来があるっていう感じがしていて、まだ自分が年を取ってきたっていう感覚がないんですよね(笑)」6月4日からは2年ぶりに舞台『水谷千恵子 50周年記念公演』に出演する。「“緊張しい”なので、毎回、“1万円も払って見ていただいているのに、台詞を噛んじゃったらどうしよう~”とか、心配しちゃって。そういうドキドキはすごくあるんですけど。でも舞台はひとつの作品を1か月かけて作り上げていくっていう、映像とはまた違う作り方で、ひとつの役をすごく掘り下げていくのが楽しいんですよね。演出家のケラさん(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)の舞台とかは、最終日が終わってからもダメ出しがあって(笑)。それで“千秋楽なのに、なんでダメ出しするんですか?”って聞いたら、“もしかしたら再演があるかもしれないから”っておっしゃって。でも毎日、演技を直されるっていうのは、うれしんですよ。かまってもらっているみたいで。演出してもらえる喜びが舞台にはありますね」■寺山修司さんが生きていらしたら高橋さんの座右の銘は「漂えど沈まず」。パリ市の紋章に描かれたラテン語の標語で、「どんなに揺さぶられ、ふらふら漂っているだけの状態でも、船を沈ませさえしなければまだ復活できる」という意味だ。「沈みそうでも沈まないで、ずっと足をバタつかせながら、急上昇にはならないけど、急降下にもならない、消えないっていう。そういう精神(笑)。ずっと前に、その当時ヘアメイクをしてくださっていた方が、その言葉を教えてくださって。“あ!いいな”と思って、漂えど沈まずの精神でやってきました」今までの女優人生で悔いはないか尋ねると──。「47歳で亡くなられた寺山修司さんが、もっと長く生きていらしたら、女優としてどうなっていたのかなというのは、すごく思います。アンダーグランドの舞台の世界のほうに行っていたのかなとか。私がまだ何でもないときに、亡くなってしまったので。ただ、“あなたはテレビのほうに行きなさい”ってことは、言われていたんですけど。“この素晴らしいドラマ(『ふぞろいの林檎たち』)に出て、その後やっていけないなら、女優は辞めなさい”って。ドラマが大ヒットして、今に至るんですけどね。寺山さんが開いてくださった女優の道なので、常に“生きていたら、どんなふうに思うかな?”とは思います」「寺山さんとの出会いがなかったら、女優にはなっていないかったですし。天井桟敷の舞台のオーディションで合格したのは、たぶん私がセーラー服だったからだと思うんです(笑)。でもそういうのもね、なんか、すごいご縁だったかなって思います。人生すべてご縁ですよね」(取材・文/井ノ口裕子)●プロフィール高橋ひとみ(たかはし・ひとみ)/1961年8月23日、東京都出身。1979年に寺山修司演出の舞台『バルトークの青ひげ公の城』でデビュー。1983年に出演したドラマ『ふぞろいの林檎たち』で注目を集める。現在まで、多くのドラマ・映画・舞台で活躍するほか、バラエティや情報番組に出演するなど幅広く活動。現在、『アウト×デラックス』(フジテレビ系・木曜23時~)レギュラー出演中。『スイッチ!』(東海テレビ)コメンテーターとして隔週金曜に出演。【ホリプロオフィシャルサイト】【Instagram】@hitomi_momoe●出演情報水谷千恵子 50周年記念公演【第1部】お芝居ステージ『ドタバタ笑歌劇 神社にラブソングを』出演:水谷千恵子高橋ひとみ、生駒里奈、バッファロー吾郎Aずん/ハリセンボン/どぶろっく/阿佐ヶ谷姉妹※日替わり出演(クワトロキャスト)YOU/はいだしょうこ※日替わり出演(ダブルキャスト)野村将希武田真治【第2部】歌のステージ『千恵子オンステージ』出演:水谷千恵子八公太郎、倉たけし、六条たかや※日替わり出演浜ローズ※日替わり出演◎東京公演(明治座):2021年6月4日(金)~13日(日)〈明治座HP〉◎福岡公演(博多座):2021年6月25日(金)~7月4日(日)〈博多座HP〉
2021年06月02日緊急事態宣言によって公演中止になったケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)作の舞台「KERA CROSS」の配信が決定。KERA CROSS 第三弾『カメレオンズ・リップ』急遽、オンデマンド配信決定!5月15日(土)に大千穐楽を迎えた舞台、KERA CROSS第三弾『カメレオンズ・リップ』のオンデマンド配信が、急遽、5月20日(木)〜23日(日)に決定しました。劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の過去の戯曲を、才気溢れる演出家たちの手で新たに創り上げる、シアタークリエ連続上演シリーズ「KERA CROSS」。その第三弾である『カメレオンズ・リップ』は、河原雅彦を演出に迎え、今最も注目される俳優のひとりである松下洸平、乃木坂46出身で確かな演技力で舞台作品に多数出演する生駒里奈、演技・音楽・バラエティ番組出演と八面六臂で活躍中のファーストサマーウイカ、そして、第71回芸術選奨文部科学大臣賞受賞の岡本健一、といった話題と実力を兼ね備える力強いキャスト陣で、2021年4月から東京(北千住、日比谷)、福島、愛知、新潟で上演されました。しかし、4月23日発令の緊急事態宣言により、5月2日(日)〜4日(火)に予定されていた大阪公演は中止となり、悔しさを噛みしめたファンも多かったのです。そういった状況を踏まえ、「来場が叶わなかった方々にいち早く公演を観て頂く機会を」というカンパニーの想いから、配信が急遽決定しました。各地にてスタンディングオベーションで迎えられた舞台の、まだ冷めやらぬ熱気を受け取ってください。今回の配信のために編集された“配信限定編集版”での配信となります。informationKERA CROSS第三弾『カメレオンズ・リップ』オンデマンド配信配信期間:5/20(木)10:00配信開始(5/23(日)23:59までアーカイブ有り)配信元: PIA LIVE STREAMチケット料金:4,000円※配信される舞台映像は、シアタークリエにて収録された映像を配信用に編集した“配信限定編集版”となります。KERA CROSS第三弾『カメレオンズ・リップ』作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出:河原雅彦音楽:伊澤一葉(東京事変、the HIATUS)出演:松下洸平生駒里奈ファーストサマーウイカ坪倉由幸(我が家)野口かおる森 準人シルビア・グラブ岡本健一企画・製作:東宝キューブ舞台写真・桜井隆幸
2021年05月18日KERA CROSS第三弾『カメレオンズ・リップ』に出演する、生駒里奈さんにお話を伺いました。ズレたまま進んでねじれていく会話、トボけたキャラクターに、リアルと非リアルの間をたゆたうような世界観。ナンセンスコメディの旗手、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが2004年に書き下ろした戯曲『カメレオンズ・リップ』。かつて堤真一さんや深津絵里さんにより上演された人気作が、今回、新たな演出家の手により17年ぶりに蘇る。「これまでやってきた舞台とはまったく違うテイストだし、役も、台本に書かれた通りにストレートに演じるということが通用しない。本格的にお芝居をやり始めたのが乃木坂46を卒業してからの私にとって、ほぼ初めてのような感覚の作品です」20世紀初頭のヨーロッパらしき場所の古びた邸宅を舞台に繰り広げられる、互いが互いを騙し騙され、混乱が混乱を呼んでゆくコメディ。「セリフのやり取りのなかにクスッとくる面白さがあるんですけど、なかには、普段笑っちゃいけないと言われるようなブラックな笑いも織り交ぜられていて、絶妙なバランスの作品だなと思います。演出の河原(雅彦)さんは、『普通にやってるだけじゃ面白さは伝わらないから、このキャラが何を思って行動したかをはっきり見せていこう』とおっしゃっていて、『セリフが流れないよう、きちんと言葉を立てて伝えないと』と。稽古していくなかで気づいたのは、私の場合は笑わせにいったらダメなんだってこと。役を普通にやることで、観た人が笑ってくれる。そこを目指せばいいんだな、と一昨日くらいに気づいたところです(笑)」演じるのは、松下洸平さん演じるルーファスの死んだ姉・ドナと、彼女にそっくりな使用人のエレンデイラの二役。人を煙に巻く発言ばかりで一向に真意が読めないキャラクターゆえの難しさも。「私は構築とか計算とかが苦手で、“役を作る”というより稽古場に立ってみて、その時の感情や直感で動くタイプなんです。でも今回の役は、日本に住んでるのにいきなりここはアメリカですと言われているくらい、求められているものが違う。難しいですけれど、お芝居にもいろんな種類があってやり方があるわけで、いろんなことをできるようになっていかなくちゃと思っています」生駒さんには目指すものがある。それは「いろんなワクワクが詰まったエンターテインメント」だ。「一番の理想型が堂本光一さんの『Endless SHOCK』です。カッコいい歌もダンスもあって、衣装も演出も華やかで、宙を飛んだりもして。去年初めて観て、『なんだこれは!?』ってずっと口を開けっぱなし(笑)。観て励まされたし、自分もこんなキラキラしたものになりたいと思ったんですよね。芝居はもちろんダンスも歌も磨かなきゃいけないし、立っているだけでサマになる華も身につけなきゃいけない。そのためにも、いま目の前のものを必死でやっていくだけです」『カメレオンズ・リップ』ルーファス(松下)は、死んだ姉に瓜二つの使用人・エレンデイラ(生駒)と郊外の谷間にある古い邸宅に暮らしている。その邸宅をさまざまな人が訪ねてくるが、どの人も虚実入り交じり…。はたして真実はどこにあるのか。4月2日(金)~4日(日)北千住・シアター1010全席指定1万円4月14日(水)~26日(月)日比谷・シアタークリエ全席指定1万500円作/ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出/河原雅彦出演/松下洸平、生駒里奈、ファーストサマーウイカ、坪倉由幸(我が家)、野口かおる、森準人、シルビア・グラブ、岡本健一キューブ TEL:03・5485・2252(平日12:00~17:00)福島、大阪、愛知、新潟公演あり。いこま・りな1995年12月29日生まれ、秋田県出身。乃木坂46を2018年に卒業。8月には主演舞台『‐4D‐imetor』も控える。出演映画『光を追いかけて』は今年公開予定。ポンチョ¥40,700 カットソー¥24,200パンツ¥41,800(以上Ground Y/ヨウジヤマモト プレスルーム TEL:03・5463・1500)シューズ¥63,800(Y’s/ワイズ プレスルーム TEL:03・5463・1540)ピアス各¥13,200リング¥38,500(以上CHERRY BROWN TEL:03・3409・9227)※『anan』2021年4月7日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・津野真吾(impiger)ヘア&メイク・スズキユウジ(MAXSTAR)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年04月06日ケラリーノ・サンドロヴィッチの名作戯曲に演出家たちが挑むシリーズ、KERA CROSS。第三弾となる今回は、堤真一、深津絵里らによって2004年に初演されたクライムコメディ、『カメレオンズ・リップ』を河原雅彦が新たに作り出す。今回ドナとエレンデイラというふたりの女性を演じることになるのは生駒里奈。乃木坂46を卒業後、立て続けに舞台で活躍する彼女に今作について話を聞いた。言い訳のできない環境に身をおいたので、乗り越えていかなければ──最初に『カメレオンズ・リップ』出演のお話を聞いた時の心境は?アイドルを卒業して、これから個人としてお仕事に挑戦しなくてはならないと思っていた中でお声がけいただいて。この作品に携わることで何かひとつでもできることが増やせればと思いました。──生駒さんは乃木坂46時代にKERAさんの戯曲『すべての犬は天国ヘ行く』の舞台に出演されていますね。その作品を観たKERAさんから「もう少し稽古の時間があればよかったね」と声をかけられたとのことですが。そうなんです。その言葉は当時はショックでしたが、実際に稽古の時間は短かったし、当時はそれをどうすることもできなかった。でも今は毎日、みっちり稽古ができています。自ら言い訳のできない環境に身をおいたので、この戯曲をどうにか乗り越えていかなくてはと思っています。──初演はご覧になりましたか?はい。どうしても意識してしまいますね。これまで再演の経験はありますが、その時は未熟な自分をそのまま出すことで乗り越えられる役だった。今回は違いますから。初演はあて書きだそうなので、一度大正解が出てしまっているものに挑むというハードルがあります。でも比べられるのは当たり前だし、まったく違うものとして作ろうとしているから、かえって気は楽かもしれません。──河原雅彦さんはどんな演出家ですか?演出の言葉をどう解釈して自分に落とし込めばいいのかがわからなくて、そこに慣れるところから私の稽古はスタートしています。ちょっとずつ、河原さんの言葉が冗談なのか本気なのかがわかるようになってきました(笑)。──今作は登場人物が嘘をつきあって騙し合うクライム・コメディですが、稽古場での河原さんの言葉も本気かどうかわからないときがあるんですね?そうなんです。「もしかしてこれは冗談かな?」って(笑)。稽古中に「(役について)この子はどういう子なんだろう?」と投げかけられて、「河原さんが教えてください!」と思ってしまったこともあります。自分からしてみたら、河原さんやまわりのキャストの皆さんの方がKERAさん作品のことを理解しているのにと思ってしまい……。でもそうやって投げかけてもらったことを考え続けて、必死に食らいついているところです。共演者の皆さんはすごく経験豊富なので、自分は何歩も後ろから稽古に挑んでいる感じ。そのみなさんが「すごく難しいことをしているんだよ」と声をかけてくださるだけですごく救われます。“嘘だけど本当になること”をする演技という仕事が好き──この作品は難しいですか。いま、絶賛迷い中です。やればやるほど、キャラクターの気持ちがつながっていかないんです。前のシーンでこう思っていたのに、次では全然違うことを言う。彼女に一本の筋を通すには、どういう思考回路になればいいんだろうって。今回はお互いが嘘をつきあう作品で、私の演じる役も言っていることが本当か嘘かわからないことばかり。これまでは生き様が必要だったけれど、今回は自分を全く入れず、本当にお芝居をするしかないんだろうなと思っています。──役に対して、今までとは違うアプローチをしなくてはならないわけですね。そうなんです。演技をするときって、どんなに違うタイプでもなにかしら自分にひっかかるところがある。でも今回は……。そもそも、私は嘘をつくのが好きじゃないんです。嘘をつくって、トラブルを招くことが多いじゃないですか。『カメレオンズ・リップ』メインビジュアル。生駒さんはエレンデイラ/ドナ姉妹を演じる──そんな「嘘が苦手」な生駒さんが、今作で嘘で塗り固められた役をやるのが楽しみです。私の今までの演技を観たうえでこの役をくださった方は、どんな意図があるんだろう? とは思いますね。親身な人しか挑戦はくれないと思うので、なんでだろうって。でも今こうしてしゃべっていて、自分でもこんなに嘘が苦手なんだと改めて思いました。そりゃあこの役、難しいはずですね(笑)。でもだからこそ、役の仮面をかぶって“嘘だけど本当になること”をする演技という仕事が好きなんだと思います。──そこまで自分と対峙するたいへんな仕事に取り組むのはなぜですか?40歳になったとき、ふつうに暮らしていたいんです。お金に困らず外食したり、好きなものを買ったりする生活がしたい。そのために一生懸命頑張っています。──その目標のために選ぶ道のりとしてはかなりハードなように思います。以前、芸能界を辞めるかどうか迷っていたとき、アイドル業と両立するのではなく、舞台だけをやってみたらどこまでやれるのか試したことがありました。その時お世話になった少年社中の毛利(亘宏)さんに「あなたは素晴らしいよ」と言ってもらって、初めて自分個人に声をかけてもらったと思ったんです。舞台という場所で希望をもらったから、これからも舞台で頑張りたい。それがお世話になった人たちへの恩返しにもなるんじゃないかと思っています。取材・文:釣木文恵撮影:源賀津己衣装協力/Y’s、Y’s × Dr.Martens、BRAND SELECTスタイリング/津野真吾(impiger)公演情報KERA CROSS第三弾『カメレオンズ・リップ』作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出:河原雅彦音楽:伊澤一葉出演:松下洸平 / 生駒里奈 / ファーストサマーウイカ / 坪倉由幸 / 野口かおる / 森準人 / シルビア・グラブ / 岡本健一【東京公演】2021年4月2日(金)~2021年4月4日(日)会場:THEATRE10102021年4月14日(水)~2021年4月26日(月)会場:シアタークリエ【福島公演】2021年4月11日(日)会場:南相馬市民文化会館 大ホール【大阪公演】2021年5月2日(日)〜5月4日(火・祝)会場:サンケイホールブリーゼ【愛知公演】2021年5月6日(木)会場:日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール【新潟公演】2021年 5月15日(土)会場:長岡市立劇場チケット情報
2021年04月02日ケムリ研究室の第二回公演「砂の女」が2021年8月〜9月に東京・兵庫で上演されることが決定した。2020年劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)と、女優・緒川たまきが結成した演劇ユニット「ケムリ研究室」。2020年9月、旗揚げ公演として『ベイジルタウンの女神』を上演し、KERAが描いたロマンティック・コメディがコロナ禍にあった観客の張り詰めた気持ちを弾ませ和ませ大きな反響を呼んだ。今作では作風が一転。全く異なる趣の、ケムリ研究室の新たな実験が始まる。安部公房の小説「砂の女」を原作とし、KERAが上演台本と演出を担当。「砂の女」は1962年に書き下ろされ、近代日本文学の傑作と評されるとともに世界20数カ国で翻訳され、“安部公房”の名を世界に知らしめた作品である。出演には、KERAとともにケムリ研究室の主宰である緒川をはじめ、数々のKERA作品に出演してきた仲村トオル、そしてオクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲、とKERAの信頼が厚い俳優陣が顔を揃えた。主人公は、ある砂丘へ昆虫採集に出かけた男。彼は砂穴の底に埋もれる一軒家を訪れることになる。そこには一人の寡婦が住んでいた。家の中にはひっきりなしに砂が流れ込み、女はひたすら砂を掻き出し続けている。男は脱出を試みるが、女や村人たちに逃げ道を阻まれ、閉じ込められてしまうのだった。複雑怪奇な作品かと思いきや、リアルな心理描写や肌ざわりが、読むものを惹きつけて離さず、その顛末がどうなるのか気になって仕方がない中毒性を持つ「砂の女」。公演についての最新情報は、キューブHPにて順次公開される。また、公演に先んじて、6月にはケムリ研究室主催のリーディング&トークイベントの開催も決定した。詳細は続報を待とう。■『砂の女』上演にあたってケムリ研究室にとって『砂の女』はある種の憧れに満ちた題材です。絡めとられた男、絡めとった女、欲望剥き出しの村人たち、そして砂-。強烈なイメージの数々。安部公房氏の長編小説『砂の女』が、読者のその後の空想の中で自由に育ち続けているように、ケムリ研究室による舞台『砂の女』もまた、妄想と実験精神たくましく育てあげる所存です。刺激的な時間をご来場の皆様とご一緒に過ごせることを楽しみにしています。ケムリ研究室ケラリーノ・サンドロヴィッチ緒川たまき【公演情報】■ケムリ研究室no.2『砂の女』原作:安部公房上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演: 緒川たまき、仲村トオルオクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲公演日程:8月22日(日)〜9月5日(日)会場:シアタートラム※9月兵庫公演あり東京公演チケット一般発売:2021年7月予定公演の最新情報はこちら: お問い合わせ:キューブ(03-5485-2252)企画・製作:キューブ■ケムリ研究室『砂の女』を研究する 〜リーディング&トーク〜開催日程:6月11日(金)会場:LOFT9 Shibuya出演:緒川たまき、ケラリーノ・サンドロヴィッチお問い合わせ:LOFT9 Shibuya(03-5784-1239)
2021年03月19日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の過去の戯曲を、新たなる演出家が異なる味わいに創り上げる人気企画「KERA CROSS」。その第3弾『カメレオンズ・リップ』を、河原雅彦が手がける。そこで河原と主演の松下洸平のふたりに話を聞いた。17年前、気鋭の劇作家として注目を集めていたKERAが、Bunkamuraシアターコクーン初進出作として上演したのが、この『カメレオンズ・リップ』。河原は本作を選んだ理由について、「まだ若かったKERAさんの、しかもコクーン初進出だっていう筆の勢いのある作品ですよね。たぶんKERAさん自身、整合性や分かりやすさをあえて気にせず書いていた部分もあるんじゃないかなと。その煙に巻くような、わけわからなさに僕は惹かれたんだと思います」と説明する。松下はDVDで初演を見た印象を、「作品全体からはもちろん、俳優の皆さん一人ひとりのエネルギーがバシバシ伝わってきて!すごくカッコいいなと思いました」と目を輝かせ、さらに「その『カメレオンズ・リップ』を今度僕がやる時、どれだけのエネルギーを作品に対して注ぎ込むことが出来るのか。自分自身すごく楽しみですし、それが作品の面白さに繋がればいいなと思います」と意気込む。まるで呼吸するかのように嘘をつき続ける姉のドナと、そんな姉を心から慕う弟のルーファス。前回堤真一が演じたこのルーファス役を任された松下は、「僕が見た『カメレオンズ・リップ』は、ものすごく完成度の高い素晴らしい舞台でした。だからこそ僕は、いかにそこに縛られず、今回集まったキャストの人たちと、芝居を通して感じたことをそのまま素直に出せるのか。とにかくそれに尽きると思います」と、役へのシンプルな想いを吐露する。ドナと、ドナにうりふたつのエレンデイラを演じる生駒里奈について、「ずっとお仕事したいと思っていて」と河原。続けて、「洸平くんがすごく弟感のある人である一方、すごくお姉さんで、しっかりしていて面白いのが生駒ちゃん。だから年齢的には逆ですけど、もうこのふたりでやっちゃえと思ったんです(笑)」と、姉弟役のキャスティング意図を明かした。また河原は、「初演を初めてみた時、いろんな意味であまりに贅沢過ぎて、あっこのままじゃ出来ないなと思ったんです」と驚きの告白。「でも美術プランから何から、一から考えられるという意味で、逆によかったなと。今回集まってくれたメンバーは皆さんデタラメに魅力的だし、音楽を担当してくれる伊澤一葉さん(東京事変・the HIATUS)もとても作品にマッチしている才能なので、なにかと刺激の嵐ですよ」と笑うその顔には、本作にかける河原の強い決意と自信が滲み出ていた。取材・文:野上瑠美子スタイリスト:渡邊圭祐ヘアメイク:五十嵐将寿衣装:中綿シャツ¥36,000、パンツ¥33,000/ともにエドウィナホール
2021年02月12日2019年6月に世田谷バブリックシアターにて、オリジナルキャストで再演された「世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#009『キネマと恋人』」がDVD化されることが分かった。1936年(昭和11年)の秋、東京から遠く離れた、ちいさな「梟島」の、ちいさな港町の唯一の映画館で繰り広げられる物語。映画だけを唯一の楽しみとしているハルコは、「間坂寅蔵」を演じる高木高助という俳優がお気に入りだったが、ある日突然、銀幕の向こうにいたはずの「間坂寅蔵」が目の前に現れる……。ファンタジックでペーソス溢れるロマンティックコメディであり、キャスト陣のチームワークによる巧みなステージングと舞台美術、映像技術の融合により、ビジュアル性の高い演出で観客を驚かせた。この度のDVD化は、台本・演出のケラリーノサンドロヴィッチの完全監修の下、作品の魅力を余すことなく収めるべく映像作品としたもの。副音声には、妻夫木聡、緒川たまき、ともさかりえ、KERAによる豪華コメンタリーも収録。当時の、バックステージや舞台上での思い出など、臨場感溢れる楽しいトークが収録されている。さらに特典映像にはキャスト、スタッフのインタビューなども収録され、盛り沢山の内容となっている“決定版”。販売は、2020年12月23日(水)正午〜2021年1月31日(日)キューブメルマガ会員「cubit club plus」サイトにて、期間限定先行予約販売(ポストカード付き)後、同サイトにて一般発売開始予定。ケラリーノサンドロヴィッチのコメントは、以下の通り。「今も私の家には『キネマと恋人』再演版のポスターが貼ってあります。眺めるだけで豊かな気持ちになり、元気をもらえるからです。“舞台は生でなくては”の持論は変わらないものの、残せないよりは残せた方がいい。再演時はDVD化がスルーされることが多い中、『キネマと恋人』は2016年の初演版に引き続き、2019年の再演版もDVD化できるのは無常の悦びです。この度は、初演版に較べカメラ台数が増えたことで、毎度編集を監修させて頂いている身としては、グッと観せ方に幅を出すことができました。コメンタリー等の特典も充実しております。しかしなんと言っても、初演との一番の違いは、作品の完成度であります。俳優陣の芝居もステージングもスタッフワークも格段の進歩を遂げてます。初演DVDをお持ちの方は、ぜひとも観較べてみてください」■商品概要世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#009『キネマと恋人』DVD台本・演出:ケラリーノ・サンドヴィッチ出演:妻夫木聡、緒川たまきともさかりえ三上市朗、佐藤誓、橋本淳尾方宣久、廣川三憲、村岡希美崎山莉奈、王下貴司、仁科幸、北川結、片山敦郎映像出演:野村萬斎、奥村佳恵2019年6月収録 世田谷パブリックシアター価格:¥7,500(税別)【特典映像】★キャスト・スタッフインタビュー(妻夫木聡、緒川たまき、ともさかりえ、三上市朗、佐藤誓、橋本淳、尾方宣久、廣川三憲、村岡希美、上田大樹、小野寺修二、ケラリーノ・サンドロヴィッチ)★副音声コメンタリー(妻夫木聡×緒川たまき×ともさかりえ×ケラリーノ・サンドヴィッチ)※B6判ポスター封入志磨遼平(ドレスコーズ)劇評掲載本編193分 特典映像49分 / Qbix-SD69 / MPEG-2 / COLOR / 本編:片面・2層特典:片面・1層 / 本編 ステレオ 特典映像 モノラル※2020年12月23日(水)正午〜2021年1月31日(日)キューブメルマガ会員「cubit club plus」にて、期間限定先行予約販売後、一般発売予定。詳細は cubit club plus サイトにて確認
2020年12月23日ハリウッドでコメディの巨匠といわれる映画監督、メル・ブルックス。彼が手がけた『プロデューサーズ』は、ブロードウェイの落ち目のプロデューサー・マックスが、金目的で失敗確実な最低ミュージカル制作に奔走するコメディ。なんとそのミュージカルに、このたび井上芳雄さんが初挑戦。ミュージカル界のプリンスといわれたその人が、下世話なミュージカルで詐欺まがいの金儲けを企むプロデューサー役とは驚きだ。馬鹿馬鹿しい笑いに本気で取り組む、僕らのエネルギーを感じてほしい。「役って巡り合わせだと思うんです。確かにこれまでやってこなかったタイプの役で、勝算はとくにない。でも、チャンスがあるならどんな役でもやってみたいし、この役を自分にと思ってくれた人がいるならば挑戦したい。そもそも自分に合うと言われた役でも楽ではなかったですし」演出は、今や日本を代表するコメディ監督・福田雄一さん。ふたりは、3年前からミュージカルを題材にしたコメディ番組『グリーン&ブラックス』(以下、グリブラ)でタッグを組んできている間柄だ。「グリブラは、最初の台本の読み合わせの段階から、キャストが思いついた面白いことをどんどん足していく現場なんです。面白いことを思い切りやったものからつまんで一本のコントに仕上げる。福田さんは、その面白いことが出てくる空気を作るのがうまい演出家なんです。大胆さと繊細さを持ち合わせている感じ」翻訳もののコメディの難しさは、日本とは国民性や文化はもとより、笑いの質自体が違うこと。福田さんが手がけてきた海外コメディは、単なる翻訳ではなく、笑いの部分を日本向けのものへ転換したものが多い。「福田さんのやり方も、海外コメディを上演する上での可能性のひとつだと思います。でも、以前にケラリーノ・サンドロヴィッチさんの舞台に出たとき、セリフのテンポや抑揚でこんなに面白くできるんだってことを知って。かなり馬鹿馬鹿しい話ですし、作品自体の面白さと福田さんの笑いとのバランスを、いい感じに探れればと思っています」じつは井上さん、20代の頃から「笑いがどうやって生み出されるのかをずっと考えてきた」という。「いろんな場でしゃべる機会をいただいてきて、トークで笑いを起こす法則みたいなものは、なんとなくわかってきた気がするんですよ。でも、役を演じるなかで、小手先じゃ到底到達できない笑いが生まれることがあって、それは確実にホンの力なんですよね。もちろん役者の技術も空気感も大事ですから、今回そこに到達できたらなと思っているんです」今回、マックスの相棒・気弱な会計士のレオを、吉沢亮さんと大野拓朗さんがWキャストで演じることに。「吉沢さんはこれがミュージカル初挑戦だそうですが、素敵な声をしてますし、歌にもダンスにもストイックで熱意を感じます。大野くんは、演技を学びにNYに行ったり、広い視野で物事を見ている。持ち味が全然違う、いいWキャストですよね」今年、コロナ禍で出演を予定していた公演が次々と中止になった。これまでは数年前から決まっている仕事で予定が埋まっていたが、目の前の予定が空白に。そこで「初めて自分に何ができるかを考えた」そう。「これまでは受け身のなかでどう頑張るかだったのが、いろんな可能性が生まれてきて、思いもよらないことに挑戦できました。ただそれを見てくださる方々がいるのも、この世界で20年やってきたこのタイミングだからこそ。そういう意味で僕はラッキーなのかもしれません」大声で笑うことが憚られるこの時期に上演される爆笑コメディだ。「刺激の強い笑いですが、だからこそ触発される感情もあるはず。馬鹿馬鹿しい笑いに出演者全員が本気で取り組んでいる、そのエネルギーを感じていただければと思います」ミュージカル『プロデューサーズ』破産寸前のブロードウェイのプロデューサー・マックス(井上)は、会計士・レオ(吉沢・大野)から、成功した公演より失敗した公演のほうが利益を生んでいると聞き、故意に失敗作を作ろうと画策する。11月9日(月)~12月6日(日)渋谷・東急シアターオーブ脚本/メル・ブルックス、トーマス・ミーハン音楽・歌詞/メル・ブルックスオリジナル振付/スーザン・ストローマン演出/福田雄一出演/井上芳雄、吉沢亮・大野拓朗(Wキャスト)、木下晴香、吉野圭吾、木村達成、春風ひとみ、佐藤二朗ほかS席1万3500円、A席9000円、B席4500円(すべて税込み)東宝テレザーブ TEL:03・3201・7777いのうえ・よしお1979年7月6日生まれ。福岡県出身。福田雄一監督とのミュージカルコメディ番組『グリーン&ブラックス』は、現在WOWOWにて放送中。来年3・4月には舞台『日本人のへそ』への出演も控える。ジャケット¥48,000パンツ¥23,000(共にLANVIN en Bleu/ジョイックスコーポレーション TEL:03・5213・2532)その他はスタイリスト私物※『anan』2020年11月11日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・吉田ナオキヘア&メイク・川端富生インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2020年11月10日劇作家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)と、妻で俳優の緒川たまきが、「ケムリ研究室」なるプロデュース・ユニットを旗揚げ。その第一回公演となる『ベイジルタウンの女神』が、9月13日(日)に開幕する。コロナ禍に揉まれた春、開幕寸前に公演中止となった『桜の園』の無念も記憶に新しいKERA。だからといって、歩みをゆるめる彼ではまるでない。KERA作品常連俳優陣によるコントムービーの製作や、あらゆる工夫をこらしたリーディングアクトの配信公演の敢行など、実に彼らしい創作のいくつかを観客に届けた。そんな彼の次なる一歩は、パートナーである緒川たまきとの連名で立ち上げる新ユニット「ケムリ研究室」の始動である。「ケムリ研究室」ロゴKERAの作品作りにはもはや欠かせない存在である緒川。出演者としてのみならず、作り手同士としての意見交換も大いに行われてきたという。そんな彼女が満を持して、共作者として操縦桿を握る本作。KERAのSNSを見ていると、その稽古が上演の実現に向けて、祈るように重ねられていることがわかる。稽古しながら上演が叶わないことの悔しさを、知っている人による言葉たちだ。その旗揚げ作は、KERAの書き下ろし新作『ベイジルタウンの女神』。仲村トオルや水野美紀、犬山イヌコら常連組と、吉岡里帆や松下洸平、高田聖子ら初参加組が入り乱れる布陣だ。山内圭哉や菅原永二、温水洋一ら、小劇場で磨き抜かれた個性派の参戦にもにんまりさせられる。もちろん、小野寺修二のステージングや、上田大樹による映像とのコラボレーションはここでも万全。始まりの予感と熟練の仕事が入り交じる舞台だ。9月22(火祝)18時の回は「PIA LIVE STREAM」での生配信が決定。本編休憩時間と終了後には、キャストによる座談会も予定されている。公演は9月27日(日)まで世田谷パブリックシアター。兵庫、北九州公演あり。文:小川志津子
2020年09月12日何気ない会話に思わずクスッとしたりニヤリとしたり。ナンセンスでシュールな笑いを紡ぎ出す劇作家で演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さん。そのKERAさんが女優・緒川たまきさんと共に、新ユニット「ケムリ研究室」を立ち上げた。旗揚げ公演の『ベイジルタウンの女神』に出演するのは、いまやすっかりKERA作品の常連女優となった水野美紀さん。「針の穴に糸を通す難しさ。だけどすごく楽しいです」「10数年前に初めてKERAさんの舞台を観た時、頭では何がどう面白いのかわからないのにすごく面白いという体験をしたんです。この面白さをちゃんと理解したくて、KERAさんが影響を受けたという別役実さんとか、その別役さんが影響を受けたベケットにまで興味が広がって、その周辺の本をいっぱい読みました。シュールな笑いの歴史と奥深さを知って、さらにハマりました(笑)」しかし、その水野さんをして、会話の微妙な間のズレや空気感で笑いを起こす作品は、まるで「針の穴に糸を通すような感覚」とか。「とにかく細かく計算してセリフが書かれているから、脚本を読むだけでも十分面白い。でも本当のすごさは、文字以外の透明なところにあるんですよね。たとえば、子供っぽいキャラクターのセリフに『相手にバレてないと思っているんだけれど、無意識に心が大きく動いて、それが表に出てしまう感じで』と演出をつけられる。すっごい繊細なところまで大事にされて作り込んでいる。ちょっとした声の音量やトーンでニュアンスがガラッと変わって、面白さが蘇ってこなくなることもあるので、毎回がすごいプレッシャーです」それでも「やっててすっごい楽しいですよ」と笑顔を見せる。いまやすっかり“演劇人”だ。「たぶん、自分の本来の資質には舞台が合うんだと思います。でも2か月近くコツコツ稽古して本番をやると、今度は映像の作品も楽しくなる。映像は瞬発力が必要な現場ですが、意識しなくても体に染み込んだものが感覚的に出せるようになっていて、舞台で鍛えられてるんだなと」近頃はドラマ『浦安鉄筋家族』などでの振り切った演技も話題だ。「監督の意向にもよりますが、毎回台本をいただいてから、これをベースにどれくらい遊べるかを考えるようにしています。頭の中で練って、リハーサルでいろんなパターンを出してみる。それも舞台で培ってきたもの。ただ最近、“面白くしてくれるんでしょ”っていう現場の無言の期待を感じて、それが辛い。まあ自分で蒔いた種なんですけれど(笑)」ケムリ研究室 no.1『ベイジルタウンの女神』上流階級の家庭に生まれ育ち、現在は大企業の女社長を務めるマーガレット(緒川)。貧民街の再開発計画を進めていた彼女は、ひょんなことからそこで暮らす羽目になってしまい…。9月13日(日)~27日(日)三軒茶屋・世田谷パブリックシアター作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演/緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平、尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子ほかS席1万2000円A席8800円ほか(すべて税込み)キューブ TEL03・5485・2252(月~金曜12:00~18:00)兵庫、北九州公演あり。みずの・みき1974年6月28日生まれ、三重県出身。ドラマ『踊る大捜査線』シリーズで注目され、数々のドラマや映画で活躍。2002年に劇団新感線『アテルイ』で初舞台を踏む。現在放送中のドラマ『真夏の少年~19452020』に出演。※『anan』2020年9月9日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2020年09月05日演劇界を牽引する劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と女優・緒川たまきが立ち上げたユニット「ケムリ研究室」の旗揚げ公演、新作『ベイジルタウンの女神』が、9月13日(日)より、世田谷パブリックシアターで初日を迎える。この度、本舞台の9月22日(火・祝)18時開演回(追加公演)が生中継配信されることが決定した。出演は、緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平、尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子など。新作ごとに異なる魅力を放つKERAの待望の新作とあって、チケットは争奪戦必至だ。この度の生中継配信は、コロナ禍の影響で今年既に2本の舞台の中止を経たKERAの「来場できない状況の方にもご観劇頂ける機会を」という思いが発端となった。配信は、「PIA LIVE STREAM」と「WOWOWオンデマンド」で視聴可能。「PIA LIVE STREAM」は、チケットぴあの購入ページより視聴チケットを購入し視聴。「PIA LIVE STREAM」配信では、公演生配信に加え、キャスト座談会映像を併せて収録配信予定だ。「WOWOWオンデマンド」は本編配信のみ、WOWOWの加入者対象の配信となる。「PIA LIVE STREAM」配信のチケットは、9月5日(土)より、チケットぴあ にて発売開始。なお、この日は、『ベイジルタウンの女神』東京公演の後半日程の一般チケット発売日であり、9月22日(火)の追加公演の劇場の観劇チケットもこの日に同時発売される。物語は、ふとした事から貧民街で暮らすことになった、俗世知らずの女社長を巡るロマンティック・コメディ。実力派のキャスト陣がどんな群像劇を繰り広げるのか。幅広い層の観客が楽しく笑えるコメディ作品になるとのことだが、「ケムリ研究室」が届ける笑顔の時間を、劇場で、それぞれの場所で、ひととき共有できればと思う。『ベイジルタウンの女神』9月22日(火・祝)18時開演公演中継生配信「PIA LIVE STREAM」※本編休憩時間&終了後にキャスト座談会付き(予定)予定キャスト・緒川たまき×仲村トオル×水野美紀・温水洋一×犬山イヌコ×高田聖子・山内圭哉×吉岡里帆×松下洸平視聴チケット料金:¥4,000(税込)※生配信のみ。アーカイブ視聴無し視聴チケット販売期:2020年9月5日(土)10:00〜9月22日(火・祝)19:30まで(要チケットぴあ会員登録)※公演の途中からご視聴頂く場合でも、巻き戻し再生はできませんので予めご了承ください。チケット販売ページ ※ご視聴方法、推奨環境、等詳細、お問い合わせにつきましては、 PIA LIVE STREAM( ) のページにてご確認ください。「WOWOWメンバーズオンデマンド」※本編生配信のみ。アーカイブ視聴無し詳細 ■『ベイジルタウンの女神』公演詳細情報ケムリ研究室 no.1『ベイジルタウンの女神』公演概要●スタッフ作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ振付:小野寺修二映像:上田大樹音楽:鈴木光介●キャスト緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平、望月綾乃、大場みなみ、斉藤悠、渡邊絵理、荒悠平、高橋美帆、尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子(※高橋美帆の「高」は、はしご高)公演日程【東京公演】9月13日(日)〜27日(日) 世田谷パブリックシアター※未就学児の入場はご遠慮ください。※車椅子でのご来場は事前にキューブまでご連絡ください。●チケット料金S席12,000円A席 8,800円学生割引席6000円●チケット一般発売日9/13(日)〜20(日)の公演→8/22(土)発売9/21(月)〜27(日)の公演→9/5(土) 発売●お問合せ(東京公演)株式会社キューブ03-5485-2252(平日12:00〜18:00)
2020年09月04日