青木演じる佐平次は、時間が経つにつれてどんどん軽やかに、伸びやかになる。適当なことを言って相手を丸め込んでは、どんなトラブルもなんとか解決してしまう佐平次を青木はじつに魅力的に演じている。連続テレビ小説「ちりとてちん」で落語家を演じてブレイクした、もともと落語にゆかりの深い彼だからこそこの軽さが出せるのだろう。また、女郎おそめを田畑智子が、もうひとりの女郎こはるをMEGUMIが演じるが、ともに佐平次にぞっこんになり、いがみあう二人のバランスが絶妙で、観ていて気持ちいい。ほかにも小林且弥や矢田悠裕ら若手実力派もそれぞれ活躍している。今作はやはり全員がざわざわと動き回るその空気が大きな魅力のひとつであり、そこをいくつもの役柄で盛り上げた加藤啓の存在がとりわけ印象に残る。
時代が大きく変化するなか、飄々と駆け抜ける佐平次の行く末は、そしてこのにぎやかさの行きつく先は……。映画ならではの魅力に満ち溢れた原作をステージに乗せた結果現れたのは、舞台でしか表せない楽しさが詰まった作品だ。
公演は9月13日(日)まで東京・本多劇場にて。チケット発売中。
取材・文/釣木文恵
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