倉本聰が“遺作”のつもりで取り組む舞台『屋根』とは?
倉本は言う。「われわれの食料の生産地である農村がどんどんないがしろにされ、高齢化とともに疲弊していく一方、それを消費するだけの都会が幅を利かせ、国を動かしている。夫婦は最後にどこに救いを求めたらいいのか。日本はこのままではいけないという思いで書いた作品です」。
短期的な利益に目を奪われ、長期的に見た損失が想像できない。日本人はいつから今のようになってしまったのか。「やはり戦後の転換は大きかったと思います。民主主義は権利と義務の両輪で動くと教わりながら、義務ばかり押し付けられてきた反動で、権利を主張できることに舞い上がって、肝心の義務を忘れてしまった。
そして資本主義によって、それまでは節約が善で浪費が悪だと言われていた倫理観が180度変わってしまったんです」。
「前年比アップ、右肩上がり、という経済の考え方は、自然を相手にする農業にはありえない」と語るが、これは物事を俯瞰する視座を持つからこそ見える真実だろう。そんな倉本がズームを引いて、長い尺度で描かれる『屋根』には、日本人が忘れてしまった大切なものが織り込まれている。富良野GROUP『屋根』は、1月16日(土)に北海道・富良野演劇工場で幕を開け、東京・新国立劇場など全国25か所を巡演する。
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