ライブの興奮を味わえるミュージカル『JAM TOWN』
たとえば、娘が恋に落ちるシーン。雨の日のコンビニで再会して意識するふたりの気持ちを、ダンサーたちも加わって、傘を使ったキュートな歌と踊りで見せる。まるで一編のショーを観たような楽しさで、ふたりへの共感が生まれてくる。
マスターを演じるのは筧利夫。過去に傷持つ男の哀しさも漂わせながら、筧ならではの“演劇熱”を全身から放出させて、ときにアドリブを発しながら、歌い踊る。さらにはローラースケートまでこなすのだから驚きだ。娘のあゆみ役の松浦雅の歌、その恋人となるJJ役の水田航生のダンスも客席を圧倒した。また、マスターの元妻を演じた東風万智子は妻としての苦悩を見せて物語のスパイスに。
マスターの幼馴染で探偵の長谷川に扮した藤井隆が、軽妙な芝居で舞台の空気を牽引した。特筆すべきは、振付のYOSHIEを筆頭としたダンサーたち。常連客やコンビニ店員などに扮して芝居をしながら、世界で活躍するYOSHIEの独特なダンスを見せつける。音楽の西寺郷太が演奏しながらたまに芝居に加わるという洒落た演出も含め、長らく『PLAYZONE』などのミュージカルに出演し、近年は演出家として数々の舞台を手がけている錦織のアイデアがそこかしこに光る。