「これは私のパーソナルなカディッシュである」と始まるこの新たな台本による上演を、バーンスタイン財団はピサール自身が朗読する場合のみ許可してきたという。しかし昨夏にピサールが逝去し、今回は急遽、彼の遺志を受け継いだ妻ジュディスと娘リアが朗読する、新たな形での上演となる。
3月29日(火)は、ショスタコーヴィチの交響曲第15番。1990年代初めにウィーン交響楽団と録音した交響曲全集が現代のショスタコーヴィチ受容の金字塔であるように、インバルのショスタコーヴィチ解釈には定評がある。都響とも継続的に取り上げており、2012年にリリースされた交響曲第4番のライヴCDが同年のレコード・アカデミー賞を受賞するなど注目度も高い。
第15番はショスタコーヴィチ最後の交響曲。《ウィリアム・テル》序曲などいくつかの他人の作品が引用されているが、その理由が明らかではない、いわば謎の交響曲だ。今年2月に満80歳になった。
9月定期では都響デビュー25周年記念も兼ねた祝賀公演も予定されている。日本流に言えば傘寿を迎えた現代の巨匠に、さらに注目だ。
取材・文:宮本明