向井理「僕同様、観る方を傷つけたい」舞台『星回帰線』が開幕
外から見れば美しい世界も、内情を知るにつれ表情を変える。2か月後には、三島というイケメン異分子が加わったことで、ハウスの人間関係は崩壊寸前。三島は女には友情以上の好意を抱かれ、男には嫉妬される。中でも父親代わりのような存在で尊敬していた藤原が、トゲを出し放題なのには苦笑するしかない。久子に優しくしただけのつもりが愛情と勘違いされ、三島は紗江との関係を打ち明けて誤解を解こうとするが、紗江に突っぱねられてより孤立を深めてゆく。
ハウスの人々はこの共同体に依存するしか生きる道がない。それは果たして選択なのか、諦めなのか。三島は唯一、俯瞰の目の持ち主だが、彼自身も患者に訴えられて、実社会から逃れてきた身。
三島が心中、父親に語りかける本音に、彼の変化が見てとれる。
嘘、見栄、保身、自分勝手、劣等感などなど、普段は覆い隠しているダークでぐちゃぐちゃな感情のオンパレードに、観る者も自分のブラックボックスを開ける羽目に。同時に、爽快感が残るのが面白いところ。向井は終始出ずっぱりで、繊細かつダイナミックな感情の流れを、説得力たっぷりに演じ切る。「劇中で僕が傷つくように、観る人に傷ついてほしい」という彼の会見の言葉通り、心に刺さる120分だ。