独特のペーソスを漂わせながら、ナンセンスかつユーモアたっぷりに繰り広げる。
「可哀想な男なんですよ、これが。でも、傍から違う角度で見ると、可笑しくて笑ってしまう。そういう人間のものの見方、哀しいのに笑ってしまうようなところは、実は人間のすごく豊かな部分じゃないかなと思いますね」
もう1本の『夏の夜の夢』は、ご存じ、シェイクスピアの喜劇。東京乾電池では創立25周年を機に初上演して以来、再演を重ね、いまや劇団の代表作となっている。
「僕は当時、劇団の芝居をやってなくて、若い劇団員はそれぞれユニットを組んで芝居をやってました。それで、25周年はとにかくみんなが出る芝居を作りたいなと思って選んだのが、何人でも妖精を出せる『夏夢』。衣装は、人と相談しないことと、金をかけないことを条件に、各自で用意させたんですよ。
そしたら本当に人それぞれで、そこがうちの劇団らしくて、面白くて。だから今回も、衣装を新しく用意するようなことはしないつもりです。そんなことをしたら、うちが明治座さんに呼んでもらった意味がなくなるような気がしますしね」
自由劇場出身の柄本、ベンガル、綾田俊樹で、1976年に結成。個性豊かな人気俳優を多数輩出しつつ、昨年、創立40周年を迎えた劇団東京乾電池だが、今もその根底には“アマチュア精神”が流れている。