盤石のキャストで魅せる舞台版『ローマの休日』が開幕
シンプルな空間だからこそ、観客の想像力をかき立て、それぞれの演技も際立つ。ジョーの背景には赤狩りでハリウッドを追われた原作者ダルトン・トランボを重ねて描き、物語に深みを与えている。ジョーを演じる吉田は男らしさを感じさせる包容力と渋さ、そして優しさで魅せ、朝海が演じるアン王女は、気品がありながらも無垢で可愛らしい。ビジュアルからオードリーのイメージそのままで、普段は着ることのないパジャマを着て寝ることに興奮する姿、バッサリと切った髪をジョーに褒められて照れる姿、街中でベスパを乗り回したり、真実の口に恐るおそる手を入れたりと、初めて見るもの、触れるもの、自由を手にした彼女の素直な反応すべてが微笑ましい。それだけに、楽しいひとときの終わりを感じさせる演出には切なさが増し、胸がグッとなる。アーヴィングを演じる小倉も、ジョーの同士として、ふたりを見守る存在として、安心感と温かみのある演技で楽しませてくれる。
映画をリスペクトしながら数々の名シーンを再現しつつ、物語としても見せ方としても、舞台ならではの見どころが満載。観劇後にはじんわりと切ない余韻を残すこの舞台版『ローマの休日』。
盤石のキャストが織りなす上質な舞台に浸ってほしい。