こうしろああしろと言うことはあまりない」(篠井)と、3人の俳優全員が、その力をのびのびと発揮する現場だ。
描かれるのは、オンチなソプラノ歌手の少し笑える温かな物語。「これがフィクションだと嘘っぽいんだけど、本当なんだと思うとちょっと面白いですよね」と話す篠井が、主人公の歌手・フローレンスを演じる。女形として「久しぶりにしっかりした女の人の役なので嬉しい」とも語る役柄は、「とにかく音楽が好きで、人前で歌って喜んでいただくことが嬉しくって楽しくってという人。面白がらせようとか笑わせようというのではなくて、音楽を分かち合いたいっていう想いで歌っているので。その純粋さや明るさ、前向きさが大事で、それさえ持っていれば大丈夫なんだろうなと思います」。歌の芝居もチャーミングで、観ていると彼女のファンの気持ちがよくわかる。
伴奏のピアニスト・コズメを演じる水田は「コズメは作品の中で唯一、心境が変わっていく人。
だからこそ繊細につくっていかなければと思っています。ただ、英介さんがいつも言ってくださるのですが、個人プレーじゃないので。ひとつの役がほかのふたりによってより深まるような、そんな関係がしっかりと築ければ、登場人物それぞれがどんどん魅力的になっていくと思う」。