気品があり、真っすぐで、国のことを第一に考えて行動する様はトップとして組を率いてきた朝夏の姿にも重なる。男役の集大成にぴったりの役柄だ。次期トップが発表された真風涼帆(まかぜ・すずほ)は、青年貴族でドミトリーの旧友フェリックス・ユスポフ役。貴族として高いプライドと理想を持つ人物を、クールに表現している。皇帝一家を操るラスプーチンを演じるのは、愛月(あいづき)ひかる。登場するだけで空気が一変するような不気味さを漂わせながら演じている。暗殺シーンも見どころの一つだ。また、冷たい空気が流れるような描写は、ロシアを舞台にした物語ならでは。
寒々しい雪原の中、ドミトリーと伶美(れいみ)うらら演じるイリナが踊る場面はため息が漏れるほど美しい。
第二幕の『クラシカル・ビジュー』は、宝石をテーマにしたレヴュー。稲葉太地演出によるエネルギッシュなステージだ。宇宙をイメージしたプロローグで、色とりどりの星が浮かぶ。そしてダイヤモンドのように煌めくシルバーの衣裳をまとった朝夏を中心に、総踊りで宙組の圧倒的なパワーを見せつけ、観客をグイグイと惹き込んでいく。朝夏と真風のリフト、朝夏と同時退団する伶美とのデュエット、組子が朝夏を囲むシーン、黒燕尾姿の朝夏がソロで踊るシーンなど、見せ場が満載。