ひとつの挑戦から生まれた強さ『アラタ』岡村俊一×吉田美佳子
でも外国人はそこまで日本史を認識していないので、この物語もタイムスリップと捉えず、現代の日本人が戦い始めるように感じたりするようなんです。だからこそ、あらすじとはまた別の、潜在的なストーリーを構成したことが外国の方の心に届いているなと感じます。先日、ニューヨークの方が『これを今ブロードウェイでやらない意味がわからない!』と言ってくれたりしました」(岡村)。
初演から2か月半、ひとりで千代姫を演じ続けている吉田。長く演じるうちに慣れてしまったりあらぬ方向に進んだりしそうなものだが、「ストーリーや自分の役割をより意識するようになって、緻密に気持ちづくりができようになってきたんじゃないかなと感じています」と話す通り、千代姫はより雅さを増し「姫らしさが増した」という感想も届くほど。長い公演で芯をブレさせずに成長を続けられるのは、この作品がこれまでにない挑戦として生まれたことにも理由がある。「歴史に残る、例えば歌舞伎やシェイクスピア作品って、最初に世に出した人が非常に魅力的に演じたんだと思うんですよ。それを観て、人は『あれがいいんだよな』と言うわけで。
残っていけるのはそういうものだと思います。だからゼロから始めるときに、“ああいうなにかをやりなさい”という考え方では被り物と同じになってしまう。